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ハイスピード・アナリシス ~異世界で解析しまくる男。  作者: 愛野万之介
第四部 名医漆黒と水の国の女王
60/162

第60話 3つの俺。




(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)





目覚めると闇の中、俺は椅子に座っていた。



え?

ここはどこだ!?


俺は、生きているのか!?



「──残念ながら」



うおぁ!

シャドウかよ!?



不気味なシャドウの泣き笑いの仮面。

前回同様、向かい合う椅子。



……という事は、ここは、オンリーワンワールド(1人きりのボッチ世界)か?



周囲には思考の輝きが渦巻き、俺はそれを確認して安堵する。

俺は、生きてるようだ。

アリスの悪気のない攻撃に、なんとか耐えたらしい。


しかし、気絶ではなく、思考世界?

今までの経験からして、考え事が加速してもいないのに、思考世界オンリーワンワールド(一人きりのボッチ世界)が発動したことに疑問を覚える。


だが待て。

死にかけた、という事は、人は死ぬ間際に……。



ん?

執事服のシャドウが手を組んで、俺をじっと見ている。



な、なんだ?

何か怒っているのか?



鼻を鳴らすシャドウ。

組んだ足がイライラと揺れている。



「マスター。先ほど口酸っぱく忠告したはずだが、女神に発情……していたな?」



は、発情!?

な、なんて事を!?

していない!!!

止めてくれ!?



「……ウンザリだ。オーマイゴッドだ。ファックユーだ。地獄に落ちろ。死んで償え。このはーげ。唐変木。カス。ゴミ。ゴキブリ。アメーバ以下」



……酷い罵詈雑言だな。

俺の知識を流用して乱発してるんだろうが、逆になんとも響かないな……。



「……契約書にもっと追記しておくべきだった……ブツブツ……まさか、こんな変態な……」



いい加減にしろよ?

俺はそんな嫌らしい男ではない!



それになぁ、シャドウ。

あの女神サマなら大丈夫だ。



シャドウがゆっくり顔を上げ、感情の読めない目を向ける。



「……なぜ?」



それはな、……乙女だからだ。

フツーの『人付き合い』を知らないから、何をやってもオッケーだ!



「……神を、乙女……」



シャドウが立ち上がり、わなわなと震えながら俺を見下ろす。



ちょっ!?

シャドウ、気にしすぎだっ!



ふと、目の前の男が、実は女……というのを思い出す。


そう考えると、この粘着質で説教が多いところも、アドバイスや世話好きなところも、女性らしいのかもしれない。

歳上だし、まるで、母親みたいだ、と思ってもおかしくないのか……。


俺は母親の記憶はない。

俺が赤ちゃんの時に死んでしまったから。

ただ、目の前の不気味な仮面の男が、実は1000年前に死んだ女の霊……。


……ダメだっ!

……俺のイマジネイションでも、これ以上想像できない!




気がつくと、仮面は目の前にあった。



「……マスター。余計な事は想像も考えもやめてもらおうか。契約違反スレスレだ」



ななな!!!?

俺は心臓を守るように身を固める。



シャドウは目を光らせ俺を威嚇しながら、踵を返して椅子へ戻る。



「マスターの母親か。──出来の悪い息子を持つ親はこんな気持ちなのかもしれんな」



思わずゾッとする俺。


こんなのが母親なんて、やはり考えられない。

不気味すぎるぞっ!



「ふん。Missアリスにもう一度トドメを……」



分かったから!

もう考えてないからっ!



しかしアリスには困ったものだ。


手を破壊され、今度は殺人未遂……。

次は俺、死ぬな……。



「はぁ。まぁいい。それより、ここでの会話時間は限られている。マスターが死ななくて良かったが、私に聞きたい事が山ほどあるのでは?」



そう言われてハッとする俺。


お、おい、シャドウ。


聞きたいんだが、なぜ無意識モード俺は暴れたんだ?

危なくないか?


俺が無意識になる度に、理由もなく暴れられたら困る。

今だって暴れてるかもしれないのだ。

であれば、魔力は渡しちゃいけないだろう!?



「なぜ暴れたか? 決まっている。マスターの身に危険が及んだからだろう。マスターの思考も護衛の為にそういう配分をとったのではないか?」



危険が?

何か起きたって事か?

牢屋で暇で死にそうになったから、脱出を試みたって短気な可能性は?



「くっくっ。ないだろうな」



あるいは牢のトイレが臭すぎて?



「ない」



……危険、か。

……一体何が起きたんだ。この国、怖いな。



「無意識のマスターは、それでも周囲の被害は抑えていただろう? 石壁を土魔法ペーパーで砂に変えて牢から脱出し、魔弾花火で危険を追い払った、と推測できる。規模は馬鹿げていたようだが、死者は出ていない。無意識とはいえ、流石はマスター。自分の事をもう少し信じてもいいのでは?」



自分が一番信じられないが?


その俺の思考の配分って、見直せないのか?

マジで納得できないんだが?



「マスターの思考に叶うはずがない。私が確認したところ、文字読解能力に格闘術に関わる知識や技能も、無意識モードのマスターへ配分されている。少しでもマスターに渡せないか、マスターの思考へ話してみよう」



ああ、頼む。


……って、ちょっと待て!!!

文字読解能力に格闘術!???

何の事だ!???



「マスターが字が読めない理由だ。そして、元の世界で学んだ格闘技術や知識が引き出せない理由である。まさか、マスターは気が付いてなかったのか?」



俺は呆然。


魔力だけじゃなかったのか?

字が読めない……のは……そういう事か?



「マスターの解析(アナリシス)能力があれば、どんな言語も一瞬で解読可能だろう? おかしいとは思わなかったのか?」



おかしいとは思っていた。

ただ、どうやっても読めないから諦めてただけだ。



それに格闘術?


俺が父のせいで、幼少期どれだけの道場に通わされていたか知ってるか!?

虐待だぞ!?

空手も合気道も弓術も居合いやらテコンドーもボクシングも、他にも様々、何個も流派を渡り歩き……。


それが、全部使えないのか!?



“使えないはずだ。技術も知識も“



……魔力がゼロだから、この世界じゃ役に立たないと諦めていた。

……だが、もし魔力が手には入れば、肉体は強化され、元の世界の武術で少しは戦えると考えていたのに。




しかし、分からない。

字を読める能力も、格闘技も、なぜ?



「私には分からないが、マスターの思考による配分に無意味はないのでは?」



全て無意識中の俺の身体を守る為にって事だろうか。



字を読める能力か……。

まぁ、この世界の言葉をいきなり理解して会話している時点で謎すぎだったのだが……。


!?

まてよ!?

俺の思考って、もしかして、異世界の言語を瞬時に脳内変換し、俺の言葉まで変換していたの、か?


あ、あり得ない。

いや、あり得る?



文字については会話の解析(アナリシス)が間に合わないから、無意識モード俺に配分した、のか?


まさか?


し、信じられない……。

この世界に来た途端に、それを瞬時に?

もしそうなら、俺の思考ってスゴすぎる!???



俺は目眩を覚えながら、椅子にもたれて腕を組む。



分からない。

読解と格闘技の知識や技術は諦めるにしても、おかし過ぎる。


……俺は三分割で構成されている???



第1の俺。

俺の思考……神。もう神だよ、こいつ。

で、シャドウのみアクセス可能。


第2の俺。

無意識モード俺……魔力レベルナイン。

読解能力を持ち、元の世界の複数格闘術を有する。今のところアクセス不可。


第3の俺。

俺……特になし。



うぉぉぉ!???

今更だけど、俺はなにもない!?



「そんな事はない。スケベで変態の女好きという個性を持っている」



シャラップ!


俺の思考はともかく、無意識モード俺って、あっちの世界の格闘技を身に付けたレベルナイン!?

魔法は唱えられなくても、その魔力で肉体が活性化されているのだ。



さ、最強……なんじゃないか!?


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