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ハイスピード・アナリシス ~異世界で解析しまくる男。  作者: 愛野万之介
第三部 猫に小判
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第45話 ハルカと仲間達。その1



我々は、訓練所で聞き込んだ情報を集約しべく、食堂に向う。



食堂に入ると、訓練生の姿が多く、騒がしい。

熱気に溢れていて、過去の自分の訓練生時代との違いに戸惑いを覚える。



昨日、訓練生は終了式を終え、今日から中央都市に移動を開始しているはずだ。

人数も激減していると思うのだが……。



「副団長、今日が彼らにとって最後の夕食。別れを惜しみ、盛り上がっておるのですよ」



振り返ると、特別チームの副リーダーに任命したサン・クネルが、尖った目を私に向けていた。


私の疑問と、食堂の騒がしさの理由を瞬時に見抜いたようだ。

相変わらずの、その観察眼に舌を巻く。


サンは、我が第6騎士団で一番の知恵者だ。

右も左も分からない入団時から、私を支えてくれた信頼できる仲間の一人。


蛇の様な目は洞察力に優れ、頭もよく回る。

参謀役として、副リーダーとして、頼りになる男だ。



賑やかな食堂内を歩きながら、私は訓練生達を見回す。


恐らく訓練中は我慢していただろう酒やワイン。

それを酌み交わす訓練生達のどんちゃん騒ぎ。

今日ばかりは、仕方がないわけだ。



これでは空いているテーブルがあっても、打ち合わせが出来る空間とは言えない。


我々は、奥の個室をしばらく貸してもらい、そこで作戦会議を開く事にする。



食堂を通り抜けかかった時だった。



「「「リョウスケ隊長にカンパーイ!」」」

「「「「「おおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」」」



突然の怒号のごとき歓声に、驚く。

リョウスケ隊長!?


とっさにサンを見る。


即座に答えるサン。



「きっと彼らは、リョウスケ殿が率いていた3班の訓練生達ですな」



五十人程が奇妙な敬礼をしあい、肩を抱きリョウスケ殿を称えている。



「彼らはリョウスケ殿と共に、魔石教徒を森に封じ込めていたと聞いております。リョウスケ殿のカリスマ性ですな。……さ、行きましょう」



カリスマ性……。


私の胸が震える。



立ち止まっていると、サンに食堂奥の小部屋へと促される。



やはり、違和感。


英雄の器と言ったハーマン様。

カリスマ性と言うサン。


……私は、何故か納得出来ない。



部屋の中にはテーブルが一つ。

職員用の休憩室らしい。



全員が私を中心に据えるように身体を向けて座る。



第6騎士団の精鋭五名で構成される、銀の鎧に身を包む特別チーム。


副リーダーのサンは、いつもより表情が硬い。

この先の任務について思案中というところか。


逆に三つ子のリンクス兄弟は、顔をいつもより高揚させている。



各自が、訓練生達から聞いてきた話を、兜を外しながら報告していく。



だが、ハーマン様の話より、詳細な報告はなく、ただ、リョウスケ・パインフィールドの凄さ、それにつきる情報ばかり。



「ウキッ! 講師も兵士も、彼をベタ褒めでした! 3班の連中に関しては、完全にリョウスケ殿に心酔しております! 全く呆れるほどに凄いって事です! 漆黒!

キッキ! 」



リンクス三兄弟長男のチョーナー・リンクスが、声を張り上げて言葉を飛ばす。



今回は特殊任務だから、いつもの声量は困ると何度も注意したが、無駄らしい。


これでは部屋の外に声が筒抜けではないか。

まあ、外も外でうるさいんだが。



「うるさいキキッ! もう少し静かに話すキキッ!」



そう言って更に大声で、チョーナンの頭を叩く次男のジージー・リンクス。



「キキッキキッ!!!」



その横で大笑いする三男のダンダン・リンクス。



私は、イラッとしてこめかみを押さえる。



リンクス三兄弟をチームに入れたのは失敗だったろうか。



私が彼等を選んだのには理由がある。


見た目もそっくりな三人は、揃ってレベル4と魔力も高く、モンキー人種独特の機動力や戦闘術は、評価に値する。


モンキー特有の長い腕から繰り出される三位一体の短剣を使った格闘技は、私一人では手に余るほどだ。


野生で育った彼等の嗅覚やサバイバル術も、道中役に立つだろう。


そして、彼等にはある固有魔法がある。

半径五キロの距離ならば、彼ら兄弟は、各自の位置、状況を把握し、簡単な意志疎通まで出来るのだ。


この能力は任務中の偵察や密偵で、必ず役に立つはずだ。



それ故の選択であったが、とにかくうるさい。

元気過ぎて、特別任務中であるという自覚を持っているのか疑いたくなる。


私より遥かにベテランな彼らだから、問題ないとは思っているが……。



「漆黒って、もはや新人とか呼べないッキ!」


「ウッキー! ホント! リョウスケ様って俺達も呼んじゃうッキ!」


「無限魔法って初めて聞いたぞ! キッキ!」



徐々にリンクス兄弟の言葉が、軽くなっていく。


漆黒のレベルナインの噂話が大好きなのだ。


私は軽く咳払いする。



「そんな事より、魔石教徒の情報は他にないのか!? これでは追跡するにも、手がかりひとつないぞ!?」



私は、内心焦っていた。



昨日指令を受けた時には、もう彼はターミナルゲートからの出国しているのを目撃されているのだ。


その速さは異常。

馬車での移動ではない事は調べがついている。

公道での目撃者もなし。

果たしてどんな魔法を使ったのか。


そしてそれは、魔石教徒が、国外へ逃亡しているという事実を示している。

追っている者がカンパニーから逃げてしまったからこそ、彼はターミナルゲートを抜けて外に出たのだ。



だが問題は、何処に行ったのか分からない事だ。



もっと、情報が欲しいとやって来た訓練所では、彼の凄まじい話を聞くばかり。

肝心の、彼や魔石教徒が、何処に向かったのかに繋がる情報は一つもない。



サンの情報では、他にも特別指令を受けて、既に彼らを追うようにカンパニーを出国した部隊もあるらしい。


だが、訓練所に立ち寄ったのは我がチームのみ。



訓練所に立ち寄るべきだと進言してくれたのも、サンだが、これでは無意味になってしまう。



「しかし、おかしいですな……」



サンが口を開く。



長い槍を背中に抱えたまま、尖った目を私に向けて、サンは言う。



「おかしいではありませんか? 魔石教徒の姿を見た者がいないのですよ?

目撃者は、リョウスケ殿と、ニビー殿だけ……。第1騎士団の知り合いからの情報でも、魔石教徒の足跡ひとつ出てこないという」



ふむ。

なるほど……。



「つまり、何が言いたい?」



「どうやって、リョウスケ殿が魔石教徒を発見し、追いかけているのか、その辺りがさっぱり分からないのですよ」



それについては、ハーマン様から極秘に情報を入手している。


彼は、魔力を感じる特殊な能力を持っているというのだ。



「サンの疑問については、ハーマン様から確認済みだ。だか、その能力は特殊故にここで皆に説明はできない」



サンの顔に軽い驚きが浮かぶ。


特殊能力と聞いて驚かない者はいない。


リンクス三兄弟が、目をキラキラさせている。



「どんな能力だ! キッキ!」


「だから、説明できないって副団長が言ってるッキ!」


「ウッキー! 気になるッキッキ!」



うるさい。

私は、大きくため息を吐き出す。


だが、魔力を圧で感じる能力?

今回は魔石教徒を見つけるのに役に立っているらしいが、他に何か役に立つのだろうか。

ハーマン様は凄いというが、私にはピンとこない。



「なるほど。では、魔石教徒を追うというよりは、リョウスケ殿を追えば、魔石教徒もそこにいる、というわけですな!」



私は、頷く。

サンの理解の早さは頼もしい。



「ならば、やはり、これを試しますか」



サンが懐から折り畳まれた紙を出す。



「それはなんだ?」



サンは肩をすくめてそれをペラペラさせて答える。



「彼を追う切り札です」



普段あまり笑わないサンの口元が、僅かに吊り上がった。



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