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ハイスピード・アナリシス ~異世界で解析しまくる男。  作者: 愛野万之介
第二部 ヴァニッシング・ピーチ
42/162

第42話 ヴァニッシング・ピーチ ~1日前



( ― 一日前 ― )



訓練所の食堂で、俺はアリス昼食をとっている。

テーブルに並ぶのは、大量の料理。


様々な大きさや形の木皿に盛られているのは、肉中心の料理。

何の肉なのかは不明。

魔物であることは分かっている。

それでいい。


俺が味に無頓着とか、料理に興味がないわけではない。

むしろ逆。

大好きだ。

あらゆる調理法、素材の生かし方、手間のかけ方は知識から実戦を経て、技術として昇華させた。

手をかければかけるほど味が良くなるのだから、この俺がこだわらない訳がない。


だからこそ、食事中は考えないように、見ないようにしている。


料理は奥が深い。

魔物の名前も種類も知らないのに、それを知ろうとしたら、俺の思考が暴走してしまう。

食事中は、ぼんやりしやすいという俺の経験則だ。

ぼんやり食べていたら、オンリーワンワールド(一人きりのボッチ世界)が発動して、次の日になっていた事が昔は良くあった……。



美味しくいただける魔物もいるのだと、感心して終わりにしておくのが、今はいい。

食事は、美味しく食べるに限る。



「まだかな、ニキビー。お料理覚めちゃうよね」



アリスがため息混じりにぼやく。



昨日の作戦に特に関わった者は、訓練所で待機せよの指示が出ている。

それって、俺、アリス、ニキビー、の三人だ。



だから、食堂には俺達だけ。

他の訓練生は、今日もバリアポイントで訓練中。



この料理の量は、俺もかなり食べるが、ニキビーの分が大半だ。


暇な俺達は、四日間飲まず食わずだったニキビーの為に、豪華な昼食会を、というわけだ。



その主賓たるニキビーは、まだ来ない。


ちょっと俺の用事を言いつけたからなのだが、それにしても遅い。

アリスの言うとおり、料理が冷めてしまう。



俺はのんびりと、アリスの話を聞きながら、昨日の事を思い返す。



昨日の作戦は失敗に終わった。


原料調達部の大失態で、だ。



魔石教徒を逃がさない為の、眠りの(スリーピングフォレスト)による結界。

その解除をすべく、中心部まで進行する……までは良かった。


だが、せっかくの苦労も無駄に終わった。



魔石教徒の攻撃を受けて、マンイーター含む原料調達部隊は醜態をさらし、まんまと逃げられたのだ。



その後、眠って戻れなくなっていた兵士達は無事に救出されたものの、マンイーターの責任は重い。



俺達は、今日は休息せよとの事だが、原料調達部と第一騎士団は、今も逃げられた魔石教徒を追い、南へと探索を続けている。



つまり……俺の作戦は大成功だ!


まさか、こんな大事になるなんて、と反省すべき点も多いのだが。



しかし、俺の心はまだ晴れない。


また別の厄介事を抱えてしまった気分と言えばいいのだろうか。



あのソフィアと名乗る女神……。


それに、アリス……。



まだ、何も終わっていない。

むしろこれから……だ。



「リョウスケ、聞いてる? その裸の人なんだけど、私が何言っても服を着ないのよ。白い髪で、すごく胸が大きいの!」



口につけていた水を吹き出しそうになる俺。



「裸の人だと? 胸が大きいだと?」



それって……。

まさか?



「ずっと横になって寝てるのよ! 風邪引いちゃうでしょ? 」



ソフィアだ!

間違いない!


アリスは、会ったのか!?

いや、それ、不可能だろう!?



「夢なのに、夢じゃないみたいだったな……」



がくっ!


な、なんだ、夢の話か。

ビックリさせないでくれ!



あの女神、アリスの身体で眠るとか言ってたけど、やはり夢に出てくるくらいはしちゃうわけか。



ちなみに、アリスには、ソフィアの件は一切伝えていない。

ややこしい上に、説明しきれない上に、うそくさい話だからだ。

おまけに俺に魔力ないというのが、大前提の女神様だ。

だから、話すのはやめにした。




「アリス……。もし、また夢で会っても、そっとしておいた方がいい。寝かしたままにしとけよ」



「え? なんで?」



「アリスも気持ちよく寝てる時に起こされたくないだろ? 寝起きの悪い奴って多いからな」



アリスはそう言われて、ふむふむと頷く。


よしよし。


起きて時間を止められても迷惑だし、よけいな話はしてほしくない。



しかし、夢に出てくるとはな。

いかにも女神らしい演出だが、実際は何者なのだ?

これから先が思いやられる。



ふと俺は、ソフィアの姿を思い出す。


白く長い髪、陶磁器のような白い肌、大きな胸がぷるるんしていて……。


また、次会うときも、きっとすっぽぽぽ、ゴホンゴホン!



「リョウスケ! なんか、変なこと考えてるでしょ! ニヤニヤして気持ち悪い!」



俺はハッとして顔を両手で覆う。

へ、変な事なんて、考えてない!



しかし、ソフィアの時を止めるという能力……。



実は、……ガッカリ能力である。

某漫画では、最強ラスボス的な能力であるが、現実は甘くない。



説明は難しいが、結局は役に立たないすっぽんぽん女。


時間が止まった世界っていうとチートなんだが、魔力を固めてるわけだから、それって、微妙なんだよな……。



という事で、目の保養……じゃなくて、話し相手になってあげて満足したら、お帰りになってもらわないといけない。



当面、アリスには内緒で様子見していくしかないな。



「リョウスケ、クロちゃんは? 今日は何処にいるの? 抱っこしてあげたいんだ。きっと寂しいと思うんだよ」



クロとは、猫の事だ。



「寂しい? あのネ、あ、クロが?」



思わず失笑。

猫は、今日も自給自足で、現在は食事中だ。



“美味しいにゃん! にゃ、にゃ、むぐくちゃむぐくちゃ”



救出後、猫は少しだけそばにいたが、魔力がなくなりそうにゃん、あっちでいい臭いがするにゃんと、森の奥へと消えていったのだ。



感動の再会より、食欲。

ある意味、尊敬するよ、猫!

しかし、食べてる音までテレパシーは、下品なんだが。

魔力が減っているのは理解できるので我慢してやっているが。



俺は話題を変える。



「それより、アリス、明日で終了式だな」



俺の言葉に、アリスの大きな青い目が凍りつく。



「俺達は、どこに配属されるかな……」



明日はとうとう終了式。


一カ月……俺は半月だったが、色々あった訓練期間。

終了式が終われば、皆へ辞令が下る。



各自の訓練期間中の成績を元に、適正な職場が決められ、終了式が終われば、皆バラバラになるのだ。



訓練チーフと呼ばれるレベルファイブ以上の能力者は、大体、課長クラスの役職が最初から与えれるらしい……。



だが、……アリスは、そんなの関係ない、よな?



「一緒の部署だといいな? アリスといると、楽しいしさ? アリスも、そう思うだろ?」



……俺は意地悪だ。

こんな、質問は……卑怯だ。


でもな、アリス。


俺は、ムカついているのだ!



「アリス? 答えてくれよ。俺達は、終了式が終わったら、どこにいくと思う?」



アリスの青い目が潤む。

俺はそれを黙って見つめる。


アリスの小さな唇が震えて、やがて微かな声を絞り出す。



「リョウスケは……レベルナインだから、何処でも、きっと……大丈夫だよ、とっても偉い人に……なっちゃうんじゃない?」



俺は苦笑して続ける。



「そうかな? で、アリスはどの部署が希望なんだ?」



アリスは唇を噛む。

青い目は、とっくに俺から視線を外して俯いている。



アリス……。



実は、訓練所の所長から話は聞いている。


アリスは、説得され、訓練期間中は残ることにした。

だが、訓練終了後、改めて中央都市ナインズワームで、総務管理部という部署で退職について話を進めるらしい。


アリスはカンパニーを去り、母親のもとに帰ろうとしているのだ。


だから、アリスは何も言わない。

素直でいい子だから……俺の質問に、答えられない。



ん?

俺は熱い魔力を感じて、そちらへ顔を向ける。


ガシャガシャと、緑色の鎧を喧しく響かせてニキビーが近づいてくる。

アリスも気がつき、慌てて目元の涙を拭う。


アリス……。助かったと思ったら、大間違いだ!



「ニキビー、遅いよ!」



ニキビーは、椅子に座ると、紙とペンを俺に渡してくる。


俺が頼んで持ってきてもらった物だ。

だが、俺は首を降る。


「(俺は字が書けないから)ニキビー、俺の言うとおりに書いてくれ」



ニキビーが俺を見つめて頷く。


ニキビーには、事前に今後の話はしてある。

そして、ニキビーは、俺と共に行動することを選んだ。


だから、後は、アリスだけ……だ。



「まぁニキビー、せっかくの料理だ。先ずはさあ、食べよう」



「そ、そうよ! リョウスケも、食べよう!」



ぎこちない笑顔を作るアリス。


俺達は、ニキビーが話せないから、という訳ではないが、無言で食事をとる。



……美味しい。


手の込んだ料理は、訓練所の食堂にはない。


それでも、鶏肉を煮込んでソースをかけたような料理も、荒く切った豚肉を甘酸っぱい味で炒めたような料理も、骨に厚い肉がついたスペアリブみたいな料理も、美味しい。



もぐもぐ。もぐもぐ。



ちらりと目をやれば、アリスの顔から緊張がほぐれてきていた。


ふん。

俺の胸がざわつく。

俺は串刺しの巨大焼き鳥みたいなのを食べながら、アリスに問う。



「なあ、アリス。俺は言ったよな。アリスの為に、何でもするって」



アリスの手が止まる。



「は、はは。で、でもリョウスケ、ふざけ半分だったんだよね? この前聞いたとき、忘れてたよね?」



ぐっ!

その通り!

アリスにそんな大人の対応されてしまうと、ぐうの音も出ない。


言葉を続けられずに、とりあえず食べることに専念する。

アリスも何も言わずにまた食事を続ける。


口を動かしながら、けれど味に集中なんて出来るわけはない。


もう、いい。

こんな茶番。

いたぶるような真似を続けても何もならない。

とっとと切り出して、終わりにしよう。


俺は肉のなくなった串を皿へと戻し、アリスに向き直る。




「アリスは、俺に黙って、カンパニーを辞めようとしている」



突然、俺は切り出す。


アリスが、動きを止める。


そして、アリスは、叫ぶ。

顔をひきつらせて、バンザイポーズで驚きまで露にし。



「きゃぁ!!! な、なんでよ!? 知ってたの!???」



芸人みたいなリアクションするな……。



「なんでは、コッチの台詞だよな?」



アリスの目が大きくなり、その青い目が泳ぐ。


俺は本当に、意地悪だ。

大きく深呼吸し、腹から沸き上がる感情を抑える。



「母親のところに、帰りたい。そうだろ? アリス?」



アリスは、大きく頬をひきつらせる。



俺は、もう一度、繰り返す。



「アリスは、カンパニーを辞めて、母親のところに帰ろうとしている。そうだよね?」



俺の声は優しい。

でも、サイテーだ。

分かっているさ。



アリスの唇が半開きのまま、震える。

青い瞳から、一筋の涙。



「内緒にしておきたかったんだろうけど、残念だったな」



俺は追及を止められない。

なぜなら、許せないからだ。


そう!

許せないからだ!



俺を騙して、去るなんて!

俺に、何処にもいくなと言っておいて、何も言わないで、消えようだなんて!



「訓練期間が終わって、俺と別々の部署になって、そして気が付けばアリスはカンパニーを辞めていましたって感じか? 私なんかいなくても大丈夫だ、とか思ってる?」



アリスが、顔をあげて何か言おうとするが、俺は更に続ける。



「アリスは俺をバカにしているのか? 何も気がつかないと思っていたのか? 私なんかいなくても平気って?」



俺の辛辣な攻め言葉に耐えられないように、叫ぶアリス。



「だって! だって! 私!」



アリスの可愛い顔は、悲痛に歪み、涙に溢れ、食事で口は汚れて見れたものじゃない。



俺のせいだ。

俺は、何やってるんだ?

こんな可愛い子に。


人は皆、自分勝手なのは知ってたじゃないか。


アリスは、ただ俺の目の前から去ろうとしているだけ。


俺に何の不利益が?

俺が怒る理由って何だ?



それでも、俺は、アリスを更に追い詰める。



「最低だな。嘘つきだな。その様子じゃ完全な確信犯だな。自分の事だけ考えて、自分の都合で考えて、全部綺麗な言葉で誤魔化して……」



言葉が止まらない。



「無駄だ。アリスは無駄な事を、しようとしている。アリスがカンパニーを辞めても、お母さんは治らない。おまけにカンパニーにも、もう帰れない。アリスがやろうとしている事は、無意味で無駄で、無価値で、無謀で、無策で、無理で、無神経で、無責任で、デメリットしかない選択なんだよ」



「リョウスケの! ばかぁぁぁ!!!」



俺の顔に、冷たい液体が浴びせられる。


アリスが、カップの水を、かけたのだ。



ニキビーが驚いて立ち上がろうとするのを、俺は、目だけで制す。

今は、邪魔だ! ニキビー!



アリスが肩で息をして、俺を睨んでいた。

こんな顔で見られるのは、初めてだ。



……いや、あったか。

あ、あった、あった!



込み上げてくる思い出し笑い。


これ、あの時と同じだよ、アリス。

ただし、全く逆だけど!



俺は、アリスの大事なジュースを、彼女に口からぶっかけた事がある。

あの時も、すごく怒ってたな……。



俺が、濡れた髪をそのままにして、クスクス笑っているのを見て、アリスは首を傾げる。



やがて俺は、顔を寝間着の裾で吹きながら、言う。



「なあ、アリス。俺は、ちゃんと言って欲しかったんだよ」



何を? という目。



「分かっていないな。アリスの為に、俺は出来ることなら、何でもするって約束したんだぞ」



アリスは青い目を、パチクリさせる。

綺麗な顔立ちの人形みたいだ。

こんな綺麗なのに、誰よりも純粋で。


……あれ?

俺は何を怒っていたんだ?



「だから、ちゃんと言って欲しかった。私を、助けてってな」



俺は、自分でもアホだと思う。

何故、アリスの為に、ここまでするのか?



分からない。

解析(アナリシス)不可能。



他人の為に、人は、頑張れない。

だから、これは、俺の為にするんだろう。



結局、嫌なのだ。

……アリスの選択した未来を、俺は受け入れられないのだ。



アリスにも、母親にも、カンパニーにも、俺にとっても、良い事なんて、ない。



そして、内緒で行こうとしている事が、一番許せない。


それは俺を騙すってことだ。

俺に後手をとらせるなんて、アリスには1000年早いんだよ!



俺は、アリスを見て、ゆっくりと言う。



「お母さんの命を助ければいいんだろう?」



俺の言葉に、アリスは、何を言われたのか分からないという顔。



俺は、懐から、大きな飴玉のような物を出し、テーブルに置く。



途端に溢れる桃の香り。




「これは、ピーチ・シードと呼ばれる、伝説の実だ」



猫の情報では、あの後、森の中でピーチ・シードを探し回る原料調達部の様子は恐ろしいものがあったという。



ピーチ・シードがぁー!!!

なぁーいーぞー!!!

魔石教徒の仕業かぁー!!!



そうマンイーターは吠え続けたらしい。



ごめんなさい。

俺が盗んでしまいました。


これ、ピーチ・シードって言うのか。



……仕方なかったのだ。


なにしろあの時、あの状況で、時が止まったんだぞ!?


あの神様とやらに、ちょっと時間をもらって、ロープをほどいて、桃の実を取って戻ってきて、またロープに自分を縛れば、完全犯罪が出来てしまうなんて!



誰も気が付けない。

目撃者ゼロ。

完璧な無の時間を利用した完全犯罪。


さっきまでなかった物が、次の瞬間、懐にあるという摩訶不思議な現象!



常にデメリットやリスク管理して行動する俺にとって、こんなノーリスクハイリターンは、やるしかなかったのだ!



「1000年に一度しかならない桃神樹の実だ。これを食べると、どんな病気も欠損部位も回復するらしい」



それを聞いて、アリスの顔から、みるみる血の気が失せる。

震える唇がぱくぱくと動くが、声は出ない。



まさに、言葉も出てこないってやつか。


俺だって、正直、まだ自分に驚いているからな。



「ニキビー、俺の言うとおりに手紙をかけ」



ニキビーが、テーブルの皿をずらして紙を取り出す。



「お爺ちゃんへ」



ニキビーが、慌てて文字を書き始める。


でっかいグローブみたいな指でも、意外に線は綺麗だ。

筆談で慣れているのかもしれないが。



俺は字が綺麗な奴は好きだ。

今の俺に字は読めないが、バランスの取れた文字がすらすらと並んでいくのだけは分かる。


俺は満足げに頷き、言葉を続ける。



「突然ですが、我々は、魔石教徒が逃げてしまった事が、残念で悔しくてなりません。その責任は、俺達訓練チーフにもあるはずです」



「な、なんでお手紙かいてるの?」



ようやく、アリスが反応する。

ピーチ・シードと、ニキビーを交互に見ながら、瞬きを繰り返すアリス。



「手紙と言うか、書き置き?」



俺の返事に、アリスの形の良い眉が跳ね上がる。



「書き置き? ど、どういう事?」



俺は微笑んで、ニキビーに言葉を続ける。



「よって我々は、真に勝手ながら、魔石教徒を独自に追わせていただきます」



アリスが仰け反って驚く。



ニキビーは、もう分かっている。

俺から、全部聞いているからだ。

当然、俺に都合のいいようにちょびっとストーリーは修正してだが。



「必ず魔石教徒を捕まえて、戻ってきます。万が一、カンパニー国境を超えてしまった場合も、我々の判断で、追跡を続けるかもしれません」



アリスが小さく声を上げる。



「リョウスケ! ど、どういう事!?」



どういう事って、そういう事だよ。



「勝手な行動をとる事を、お許しください。戻り次第、いかなる処罰も受ける所存です……。最後は、俺達の名前だ。リョウスケ・パインフィールド。ニキビー……じゃなくてニビー・リュウオウ。そして、アリス・フターチ!」



書きき終わった手紙を、俺は受けとる。



「ニキビー、ありがとな!」



ニキビーは、ただ無表情に頷く。


俺はピーチ・シードを、手紙と共に懐に戻す。



手にした瞬間に、腕の付け根にまでビリビリと巨大なエネルギーが走る。



確かに、これは伝説と言われるだけある強いエネルギーを秘めた実だ。

密集した密度の高い高魔力と、桃神樹独特の奇妙な何かが混在した塊。



本当に、これで、アリスの母親を救えるのかは、分からない。



それに、本当は病気じゃないんだろ?

侵略を受けて、逃げてきたんだろ?


怪我を治すだけじゃダメなのかもしれない。

村ごと、俺は侵略から救わないといけないのかもしれない。


だが、アリス。

俺は、俺に出来る事を、するまでだ。



「リョウスケ……。ど、どういう事なの?」



……アリスは、まだ何がなんだか、分かってないらしい。

全く、ふう! だな!



「決行は、明朝だ。暗闇に紛れて訓練所から脱走するからよろしく」



「ちょっと! リョウスケ!?」



そして俺は、皿の巨大焼き鳥に手を伸ばす。



「さあ、腹ごしらえだ! ニキビー、長い旅になるかもしれない。全部食べろよ!」



「ちょと? リョウスケってば!?」



俺は、もぐもぐさせながら、目を細めてアリスを見る。



言いたい事は全部言った!

ああ、すっきり!



「アリス、食べながら、ゆっくり話そうか?」




──決行は明日。


──俺達は、三人揃って訓練終了式をボイコットし、魔石教徒を追う……と見せかけて脱走する。


──それなのに、俺の心は妙に晴れていた。


──これで良い。俺は覚悟を決めたのだ。


──必ず、アリスの母親を助けるのだ。



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