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三節ノイチ

三人称目線てます!

主にイズルくんが優香をどう思って居るかですね。


「そうですか、彼女は五十嵐の元に…」


「あぁ、そうらしい…やっぱ、彼女には五十嵐は特別な人間だったんだろうな…」


岩の壁に男女の声が反響する、

二人の少年と少女は憂鬱とした空気をまとって居た。


それは、組織で発生した裏切りのためである、

ーー組織の中から裏切り者が出るだなんて事…

考えても居なかった。ーー


それが二人の正直な気持ちだった、

お互いの気持ちはこんな時に、確かに一致して居た。


その事を知らぬ少年は、

自分よりも少し背の低い少女の方へ目を向ける、

少女はその目線に気づいて居る様子は無く、

俯きながら、その顔には憂いが落ちて居た。


少年(イズル)はそんな少女(ユウカ)を見、何故かしらとまどった様な表情を浮かべた。


…どうしたら、どうすれば良いのかわからない…


イズルは自分の直接地肌に羽織るローブの下で自分の心臓の鼓動を感じて居た、


ユウカと一緒に居ると…

僕はおかしくなる…


いつもよりも早く鳴る自分の鼓動を思う少年、

感じた事の無い感情、

その正体については既に、思うところ、気がついて居る。


しかし、少年はその感情から目をそらし、

囁く心から耳を閉ざして居た、


この感情を覚えたのはいつ頃だったろうか…

少年は、少女のうなじをみながら思考に溺れて行った。



この日は特別組織内での怪我人が多かった、

そしてイズルは一々その怪我を癒して行った、

自らの肉体に傷を取り込む、と言う形で。


それは、彼のこの能力に名をつけた優香ですら知らぬ事だった。

そう、かれの能力の一つ、『アンチ・キリスト』は、

他人の傷を、己に移す事によって治す、という自己犠牲の精神により発現した能力だった。


傷は対象者からイズルの肉体に移るその時に小さくはなる、

だがそれだけであって消滅は

しない。


そう、イズルは部下の傷を癒すその瞬間に、体を傷つけられる苦痛を味わうのだ。


その事は側近の『ダヴィデ』のみ知り得る事だった、

だが、その日、予期せぬ形で優香に知られる事と成った。


「ッ…」


彼はいつも以上に能力を酷使したその日、

無論彼の肉体も酷く傷ついて居た。

その為、彼が普段来て居るローブを脱ぐ事でさえ苦痛が伴った。

彼が何故ローブを来て居るか、

それは彼の能力の力をより万能に見せるための『ダヴィデ』による演出だった。


だが、その演出もはるかに脆いものだった。


ふと、扉代わりの板の前にヒトの気配がする、

まさか⁈


「イズル…よろしいです…!その傷は…一体?」


案の定、そこに立って居たのは少女、優香だった。

その目は驚きに見開かれており、

視線は半裸と成ったイズルの肉体を見つめて居た。


その体は地下に居ながらにして小麦色に焼けており、

細身ながら引き締まって居た…が。


何よりも、

傷が些か多すぎた。


「ち、違う!これは!」


少年は全てを話した、

己の能力の事を、

『ダヴィデ』の演出の事を、


そして、自分の第二、第三の能力の事を、

誰よりも信頼する少女へ…


全てを話した後、

少女は少年を暫く見つめた後、

少年の傷に一つ一つ、唇を押し当てて行った。


他人からの好意に慣れて居ない少年はただ押し当てられる唇に体を硬くするしか無かった。


ゆっくりと首筋から鎖骨、肩口、胸、腹、又登り左右の腕を。


と、言った具合に。

少女は涙を流して居た。



「まさか、あの女のヒトが草月の側に移るだなんて…」


「あぁ…多分、向こうはこっちの居場所を突き止めて来るだろうね…」


少年は思考の海から息継ぎをし、

少女に答える、

それは、自分の将来を知るまでの道しるべなのだと。


「おそらく、近いうちに此処が責められるかな…」


彼は、努めてなんでも無いかの様に言った、

それが唯一不安がる少女を安心させる術だと知って居るから、

それが、自分にはそれだけしかできない事を、知って居るから。


「『ダヴィデ』は…あの人は一体どこに行ったんですか?こんな大事な時に…」


「あいつは、時々こういう風に居なくなるんだ、それも突然にさ、昔っからなんだ」


少年にとっては当然の事だった、

だがそれに優香が憤る事があまりにも、楽しかった。


少年は知っている、

そんな楽しさはいつまでも続かない、

むしろ今にも消えてしまいそうな事を、

薄いガラスの上に立つ様な、

小さな氷を握る様な、

そんな不安定さの元に立つ、


それでも尚愛おしい、

少女との時間だった。









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