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六節ノヨン

後半は視点が三人称目線に変わります。


「……ただいま」


私を見下ろす多くの目、

男たちの目、


多くは心配そうに見つめてくる中、

一つの眼差しは、私に怒りの眼を向けて来て居た……


私はあえてそれに気がつかない振りをした、

私には怒られる資格なんか微塵も無い。


「ふぅ……おかえり、ねぇちゃん」


草月……


私は草月の瞳から目を逸らした、

それに傷ついた様な顔をする草月。


ゴメン、ゴメンね……

でも、いまは貴方の顔を見るコトが、耐えられない。


「ま、優香は無事に帰って来たんだ……みんなで祝おうじゃないか!」


五十嵐が英雄どもに大声で叫んだ、

いまはそのバカさ加減がありがたく、

同時にみんなと一緒にいる姿がとても羨ましかった。


そうおもって居ると、

突然背中をそっと押された。


驚いて私はその背押した人物を見上げた。


そこには、

優しさをたたえた銀縁のメガネの奥の眼が合った。


「神父……さま」


神父様はゆっくりと口元に弧を描いた、

その精錬された微笑みは、ヒトを導き続けた神父様独特のモノだった。


神父様は心が読めるから、

私が神父様を疑っているコトも知っているはずなのに……


「行きましょう、みんな待って居ますよ」


私は、今この世で唯一、最も信頼出来る神父様を疑う恐怖と、

今まで私を支えて来てくれた神父様に疑惑を向ける罪悪感のまま、

頷くコトしかできなかった。


☆☆☆


一人の男が人里離れた山中を歩いて居た、

しかし、男のいでたちはとても山に登る者の姿とは思えないモノであった。


そう、それはタキシード……

だが、山の中腹であるここに来て尚、そのタキシードにはなんの傷も無かった。


「ここか……」


男は目当てのモノを見つけたのか、

広角を上げ、その白い歯を外気に当てた。


男が見つめる先には扉が有った、

よりいうならばそこには小屋が在る。


そう、

山の中に、その小屋の周りには何者かによって食為れた物の動物達を弔う墓などもある様だった。


「まったく……うまく隠した物だな、だが、見つかっては仕方ないだろう」


男は扉に語りかける、

いや、自分自身に声を掛ける。


これから起こる面白い事を思い再び男はゆっくりと笑みの形を貼り付ける。


その時既に手は小屋の扉のとってにかけられて居た。


暫くの間、この小屋の主以外の手の油が触れたコトもない様なノブを回し。


男は扉の向こう、小屋の中へと足を踏み入れた、

もちろん、中に居るであろう主の

許可などとっていない。


男は無言のまま、ゆっくりとした所作で優雅とも取れる様小屋の中へと侵入した。


小屋の中に居た、もう一人の男に微笑みかけながら……


「久しぶりだな……『愚弟』」


男は、尚微笑みを浮かべながらも敵意ある憎悪の言葉をもう一人の男に向けた。


その言葉を向けられた、

小屋の主たる男も、その男をにらめつけながら言った。


「……今更、何をしに来た……」


小屋の主たる男は、自らの事を『愚弟』と罵った男に対し凄みを効かせながら問うた。


しかし、それを言った男は、

そんな凄みを効かせた言葉を意に介した様子は無かった。


「ふ……思慮の浅い所は昔から何一つとして変わって居無いな、進歩が無い」


「そっちこそ、嫌味たらしくて皮肉屋な所だってこれっぽっちも変わってねえじゃねえか」


男は男をにらめつける、

黒の双眸はお互いにぶつかり合う。


しかし、何時の間にか笑みを消して居た来訪者である男がそのにらめ付け合いに終止符を打った。


「くだらないコトに時間を割いたな、まぁ良い、どちらにしても用が在ったのはお前の方じゃない……」


そう言い残し、

そのまま小屋を立ち去ろうとする男。


「待て!」


それを止めようとした男、

しかし、部屋の主であるその男は気がついたら宙に放り出されて居た。


「グッ……」


男は、

疑問のまま、去り、

意識を手放した。

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