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<42> ダイエット・フォーエバー

 巨悪を倒してめでたしめでたし。


 ……では終わらないのが現実だった。

 どんな戦いにも、後始末は存在する。


「賢者殿。

 王城内にて、クリスマスツリー化した征魔騎士団長が発見されました」

「分かりました……

 もうクリスマスの影響は無いと思いますが、念のため、可能な限りの正月飾りを付けておいてください」

「はっ!」


 おぞましく邪悪なゲロを浴びて壊滅した王城は、もはや王城として使えぬであろう有様。

 騎士たちの生き残りをフワレが指揮し、現場検証しているところだった。カルト戦闘員とか、クリスマスの分身とか、何か潜んでいる可能性もあるので調べ終わるまで安心できないのだ。


「これから、この国は大変だろうねえ」

「そんな他人事みたいに」

「私は他人事ですもの」


 セラは悠々と茶をしばきながら、せわしなく働く騎士たちを見物していた。


 まあ、セラの言うとおりではある。

 あんな王様でも王様だったことは確かで、この国を動かす運転手だったのだ。ところがそれが、多くの廷臣とともにまとめて死んでしまい、王都そのものも機能不全にされた。


 この国の行く先は大混乱だろう。だが、どうにか立て直さなければならないし、立て直そうとする人々はいるはずだ。

 そして……


「逃げるなら今のうちだと思いますけどね」

「逃げませんよ」


 ヒミカは、本当に溜息交じりだったがそう言って、抹茶を飲んだ。


「そりゃー私は、政治もお作法も分かんないですけど。

 そんで本来ならこの国のために働く義理も無いわけですけど。

 ……人を元気にするのって、好きだからさ。こういうのも悪くないかもって思っちゃったんですよ」

「あなた、国に残ったら、下手すりゃ数年後には女王様ですよ?」

「うっ……ま、まあその辺は追々考えるってことで……」


 ヒミカは問題を後回しにした。

 だが不思議と、何もかもが何とかなるような気がした。

 戦いの中、深く考える余裕も無く、魂から吐き出してミロス王に言ったこと……あれはきっとヒミカの真実だ。

 ダイエットを成功させた自信は、くじけぬ意思の源泉。それを忘れなければ、きっと、どこで何をするとしても、ヒミカは戦い抜けるだろう。


「とりあえず今は……」

「今は?」

「概算だけれど私、6,7kg太るくらいは食べちゃったから」


 ヒミカは、伝説の鎧のせいで丸出しのお腹を摘まむ。


 ミロス・クリスマスに先回りしてご馳走をかっさらい、その力によって打ち倒した。

 だが暴食のツケは、発揮したチートパワーと一切関係なく、しっかり身についてしまうのは先刻立証済みだった。


「……食べまくった分、ダイエットしなきゃ!」


 ヒミカは期間限定のダイエットを否定しないが、本来ダイエットとは目標体重に達してからも、長期的な体重の維持を見据えて一生続けるものだと考えている。

 そして食べ過ぎたときには直ちにバランスを取る。それが健康の元だ。


 王侯貴族であろうと、勇者であろうと、生きている限り己の健康からは逃げられない。

 ダイエットとは、よく生きること。

 ヒミカはここに、生きている。

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