圓城寺本社の食堂にて
栄次君がバイトを始めて一月後くらい。
明&梨絵カップルの痴話喧嘩に巻き込まれる司皇さんと、それを目撃した高一コンビ。
会話のみ。
「あー君は年下萌えをこじらせすぎてるとおもう」
「……なんです藪から棒に」
「……私見た、あー君がニヨニヨと見ていた端末の画面を」
「…………ああ、オトコレですね」
「……あー君、変態さん、っぽいからちょっとつつしもう?」
「や、ですよ」
「……ううぅ」
「や、ですよ」
「何喧嘩してんだ。公共の場で」
「お兄ちゃん! お兄ちゃんもあー君を止めて!」
「…………うん、話しが見えねぇ」
「あー君がちょっとつかれたときに見てる画像集が変態さんっぽいの」
「……あー、うん、話しがまだ見えねぇ」
「というか、あー君みたいな美形でもアウトだとおもうの」
「……よし、明、説明」
「どうやら梨絵様は私が癒されることに文句がおありのようで」
「……癒される。って何でだ?」
「普通の家族写真です」
「幼児写真なの」
「…………あー、よし、とりあえず見せろ」
「………………あー、うん、変態扱いされるから、人前では見んな」
「ハ? 家族写真を見るのが変態? 何ですそれ?」
「……まず一つ、普通の成人男子は家族写真を何十枚と携帯に入れねぇ。そしてもう一つ、一人を除いて血縁関係がねぇから他人の幼児写真を大量に隠し持ってる変態にしか見えねぇ」
「………………史は表情筋が死んでるからどれもあんまり大差無いんですよね……つまらない」
「……実弟への愛が少なくね? 史、可愛いじゃん」
「……そう言うの、ご当主様とお父さんと今璃だけですから」
「えぇー?」
「話しズレてるよ、お兄ちゃん」
「…………あ……いや、そもそも幼児写真を見るのがマジィんだよ」
「………………なるほど、では現在の写真を……」
「違った意味でヤベェからヤメロ」
「……では私は何で癒されれば」
「……私の写真?」
「癒されませんよ」
「なんで!?」
「あんたを見ても沈静はしないから」
「………………ハ、つまりムラムラするから!」
「恥じらいを持てよ!」
「………………よし、バカップル黙れ」
「つーか、お前そんなにストレス溜まってるのか?」
「……まあ、大学にご当主様の護衛、次期家令の修行、に加えこの人の世話係、ですよ? …………並べるとオバーワーク過ぎる」
「……あー、うん、悪ぃ」
「……特に修行が……たまにジィ様を闇討ちしたくなりますし……っていうかしますし」
「……うん、そういうことしてるから修行厳しいんじゃね?」
「まあ、成果を見せるという建前がありますので……翌日倒れかけるけど」
「おーい、仕事に支障出るだろ」
「ああ、大丈夫ですよ、ちゃんと翌日休みの時に襲撃しますから」
「……それじゃ奇襲に何ねぇだろ」
「まあ、そんな弱った状態で妹達のところに行けば優しくされるんですけどねー」
「確信犯か!?」
「やっぱり弟よりも妹ですよねー」
「………………明」
「俺、明先輩のこと梨絵さんの面倒見てるところばっか見てたから常識人だと思ってたけど……」
「……うん、俺も」
「あれな人、だったな」
「……あれな人、だったね」




