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ラジオ大賞  作者: ふりまじん
投げ銭大将
53/111

スミレ、500円目指す

やめよう。


私はベッドに横になり、酔いに誘われるように目を閉じる。


もう、小説は書かなくても良いのだ。


雄二郎は、今度こそ、お金を作るみたいだし、

政府は、旅行に補助金を出してくれるみたいだし、 私の出番なんて無い。


50円の為に、一万字を書くなんて馬鹿馬鹿しいことをしないで、編み物でもした方がましだ。


私は、納得出来ない気持ちを寝返りで交わしながら、ふて寝をする。


けれど、頭の中の世界はなかなか消えてはくれない。


少年はこの世界とローランドを心配していた。


禁忌の森には、良い魔女が住んでいて、

村は、飢える事なく貧しいながらも、穏やかな暮らしがいつまでも続くと信じていた。



でも、禍々しい赤い流れ星が森に落ちると、少しづつ変化が訪れる。


春の訪れが遅く、長雨が続いた。


川の水は、赤黒く淀み、

空は厚い灰色の雲に覆われる……。




いけない。話が進んで行く。



私は、寝返りをうち、壁にかけられたカレンダーを見つめた。


投稿して、連載をやめてしまう事を、ネットでは『エタる』と呼ばれている。

諸説あるが、永遠を意味する『エターナル』が短くなった、と、言う説を私はとっていた。


読者はこの『エタ』った作品を嫌うが、

作者は、そこまで行かない前の話が、『没』という文字と共に降り積もって堆積している。


でも、『没』作品は、退会しても消去されずにしつこく残ったりする。


忘れてしまうものも多いが、そんな作品は、まさに『エターナル』。


死ぬまでこびりついてくる。


私は眉を寄せて起き上がる。

仕方ない。頭が落ち着くところまで書いてしまおう。


壁のカレンダーを見た。

12月の日付に胸がつかれる。

去年…確かに、私達は皆で日帰りの温泉にいた。


名古屋名物、味噌おでん(らしきもの)を奈津子が作って皆に食べさせてくれた。


「名古屋に出張する奴がいて、味噌頼んだんだ。

なんか、味噌は後付けでなく、汁に入れちゃうみたいなんだよ。」


と、言う解説が正しいかは分からないけど、なんだか美味しかったのは覚えている。

優しい味噌の味かした。


あれを…また、食べられるようになるのかしら?


コロナで生活が制限されるなか、12月への期待が高まった。

夏に向けて、世界やテレビの騒ぎのような、大きな心配事は無かったし、

今までの通りに行かなくても、また、12月には、皆で近所の温泉に行くことは出来るようになる気がした。


しながら心配にもなる。

何しろ、あの雄二郎がお金をためるって言うのだから。


「やっぱり貯まらなかったよ(^-^ゞ」


と、12月に上目使いで苦笑している雄二郎が思い浮かんだ。


やっぱり、書こう。

勇者の少年の物語を。


私はノートを開いた。


そう、もう、無茶はしなくて良いのだ。

雄二郎が居ない、思ったままの短編作品を作ろう。

そして、500円を目指そう。500円では換金出来ないようだけど、それで良い。


モーニング1食分。


雄二郎に努力賞を。


そして、私達に春の旅行への希望を…

その500円はくれるに違いないのだから。


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