雄二郎、仕事の日取りが決まったってよ。
50円…推定一万字完結で50円(T-T)
ここから、だいの男がマジで働いた稼ぎに勝てる戦術なんて思い浮かばない。
いや、戦わなくてもいい。そう、私は間抜けなファンタジーを作らなくても良くなった…御役御免になったのに、あまり嬉しくない。
よく分からないモヤモヤした気分に混乱し、気分転換にお茶をいれることにした。
階段を降りると、誰もいない家は静かで、灯りのない縁側のガラスのサッシにつきの光が集っていた。
まだ、8時、昔なら、この家には笑い声と灯りが絶えなかった時間帯だ。
私は、よく分からない焦燥感から逃げるように台所へとゆき、
氷の沢山入れたグラスにブランデーを入れ、サイダーをその上から勢い良く注ぐと一口含んで、それから、月明かりで鈍く輝く廊下に行って座り込んだ。
綺麗な月を見つめながら、蛙の声を黙って聞いた。
子供の頃、喧嘩をしてはここでいじけていたのを思い出した。
喧嘩と言っても、長女の私はいつも『お姉ちゃん』の一言で負けさせられた。
ケーキの飾りのチョコも
クッキーの飾りのリボンも、大概は、妹へと渡り、
大学の進学は弟が優先された。
その度に、『お姉ちゃん』の言葉を呪い、そして、自分に絶望したけれど、
それでも、料理にしても、勉強にしても、『お姉ちゃん』の面目は保っていたし、『お姉ちゃん』だからこその愛を感じたこともある。
すごい成績を残したり、表彰とかもされなかったけど、私は家族や友人に頼られ、愛されている自信があった。
馬鹿馬鹿しい。
私は、グラスの飲物をゴクゴクと飲む。
月が雲のない夜空に光のレースを広げる。
それを見つめながら、私はため息をつく。
若いブランデーのブドウの薫りが鼻孔を優しく撫でて、私は大人の自分を取り戻す。
やくたたずの気持ちかぁ…
私は、グラスを手に部屋へと戻る。
よく分からなかったイライラの原因を理解した。
私は、『お姉ちゃん』の自分を嫌いながら、頼りにされる誰かの『お姉ちゃん』でいたかったのだ。
それが、妻や母と役名が代わっても、私の存在意義だったのかもしれない。
でも、家族も独立し、誰も私を頼ってはくれなくなった。
それに気がつかずにいられたのは、雄二郎がいつだって間抜けな顔で世話をやかせてくれたからだ。
文句を言いながら、私は心の中で、頼られる自分を喜んでいたのだろう。
でも…、それも終わった。
よく分からないけど、雄二郎は真面目に働いて名古屋に行く金を稼ぐと言う。
あとは、名古屋に行って終わり。
私は、穏やかに沈んでゆく気持ちのままに奈津子にメールをする。
雄二郎、仕事の日取りが決まったってよ。




