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ラジオ大賞  作者: ふりまじん
投げ銭大将
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僕、なにかやっちゃいました?

奈津子からは返信はない。

私は、グラスの液体に慰められながら、この先の展開を考える。


夏になってコロナは落ち着いてきたように思えた。

春先の、外国でのニュースをみていた時より恐怖感は薄れてきたけれど、

もう、大がかりなイベントやフリマは無くなってゆくような気がした。


雄二郎が給料を貰うまで最低でも1ヶ月。

前に、秋になったら仕事が来るらしいとメールを貰ったから、

コロナが終息して、新しい景気対策がうたれる頃に名古屋に行けるかもしれない。


そこまで考えて、私は逆に不安になる。

大体、雄二郎が好調なときは、周りが不調にだったりする。

アイツが名古屋へ行けるほどお金を貯められると、

運の悪いことに感染が爆発、ロックダウン…なんてならないかが気になった。

とにかく雄二郎の、この手の間の悪さは、喜劇の名作並みに絶妙なのだ。


高校生の娘や、高齢者のいる2世帯同居の絢子は、例え、コロナが終息しても一年は県外に遊びになんていけないだろうし、


私だって、家族は大切だ。

それに、近所の人達も、口には出さないけれど、不安に思っているのは確かだ。

名古屋に遊びになんて、この時期に行くのは、ひんしゅくを買う覚悟が必要だ。


すると、名古屋に行けるのは…奈津子と雄二郎の二人(○_○)!!


いや、それは嫌だわ。


私は、演歌をBGMに奈津子と雄二郎が、いい感じのひなびた温泉に二人で行くところを想像して、首をふる。


そんなの不潔よっ…


よく分からない、奈津子への所有欲に突き動かされムカムカしながらも、


交通費の二万円も用意できない男に、温泉なんて無理だと突っ込みを入れる私もいる。




馬鹿馬鹿しい考えに、頭を遊ばせながら、グラスで踊るブランデーとサイダーの泡に落ち着きを貰う。


どちらにしても、名古屋の旅行で、フリマクラブ ノーマジーンは解散することになるだろう。


もう、不用品を集めたり、

それを再利用して手芸をしたり、

思い出を切り売りするような小説を書いたりしなくていい……。


そう考えたとき、思わず涙がこぼれてきた。


自分でも、思いもよらない事だったので、少し驚きながら、涙をぬぐって景気のよい曲を再生する。


『AMBITIOUS japan』


前に聴いていたので、この曲が鳴り響き、

私は、歌詞の明るさに胸に何かが込み上げて、盛大に泣いてしまった。


と、言っても、気持ちは平静で、涙がポロポロこぼれるのだ。


のぞみ……


のぞみに乗ることなんて叶わない、一万字推定50円の私に泣いた。


がむしゃらに、書き、突き進めば夢が叶うなんて嘘だ。


確かに、1000話…一千万字書いたら、5万円分のアクセスがある計算だとしても、ポイントには交換期限があるから、

この、殆どガチの修行僧でもなければ、書かないであろう文字数を一年か二年で書き上げるなんて不可能だ。


写経だって無理そうなのに、世界観のあるオリジナルの作品で一千万字…


無理である。



webファンタジー小説の主人公なら、ここでチートと呼ばれる都合のよいスキルが生えてきて、なんか、あっという間に解決するけど、そんなものは私には無い。

この時、私は、2万円の価値の重さに涙した。

そして、1ヶ月でそれを稼ぐ予定の雄二郎の姿に、真面目に働くことの強さを見た気がした。


「俺、なにかやっちゃいました?」


ふと、なろう系ファンタジーが嫌いな人が挙げる、この台詞を思い出した。


これは、チートという、都合のよい能力で、問題があっという間に片付いて、周りが驚くときに主人公が使うとされる、お約束の決め台詞?らしく、

この台詞に腹が立つ人が、少なからずネットに気持ちを投げ捨てているのを見かけたけど、

いままで、その理由が良くわからなかった。


が、今ならわかる。

確かに、腹が立つ。



10年である。

その中の1年、小説で何とかしようと頑張ってみた。

現在0円。推定価値一万字に50円。


出来ない戦いを…ギリギリの攻防戦を戦っていた、辺境の老騎士のような私。

この1年、辺りを偵察し、垣根を作り、

何度か軽く戦い、

敵を見極め、そして、いざ本戦…となったとき、

フラりとジローがやって来て、中世ヨーロッパ風味の世界に、ベージュの作業服で左右に揺れながら、よく分からない魔法円を手から発動して敵を…世界を丸焼きにして


「僕、なにかやっちゃいました?」


と、聞かれるビジョンが見えた気がした。



頭の中の老騎士と

ほろ酔い気分の私は、


能天気なジローに、こう叫びあげる。


出来るんだったら、もっと早くやれよっ!

と、言うか、少しは周りを見て、考えて発動しろよっ。

こんな焼け野原で、これからどうしたら良いんだよっ!!




あはははっ。



何か、破壊的な笑いに襲われた。

泣いたり、笑ったり…

私はきっと酔っている。

でも、はじめて感じるこの気持ち…

カタルシス…が心地よくなってきた。


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