Show By?ギブ
奈津子は笑い、私はそんな奈津子とスマホを放って窓を開けに行く。
夏の少し生暖かい風に紛れて、蛙の声が私の部屋へと流れ込み、トタン屋根の焼けた匂いが、変わらない香りで私の気持ちを中学時代へと戻して行く。
いけない…
私は、テーブルに置いたスマホを取り奈津子の様子をうかがった。
「奈津子?ごめん。ちょっと換気していた。」
私が声をかけると、奈津子はすっかり落ち着いていた。
「こっちこそ、笑っちゃってごめんね。
そう言う意味では無かったのね。」
奈津子の声に少しだけ思い出し笑いが含まれる。
「当たり前でしょ!こんな…滅茶苦茶な話、投稿しないわよ。
と、言うか、個人でもやらないでよっ。」
私は、奈津子の自称『フィクションです』の私小説を思い出して釘をさした。
「そんなに怒りなさんな。
でも、お金の部分は、必要だから書いたんだよ。」
「確かに、あのポンツクの為に、最低限必要なお金ではあるわね。」
私は、少し不機嫌に言うと、奈津子は中学時代のように少し大人びたような、斜め上の言い方で私を諭す。
「そう言う意味じゃ無いんだ。
これはね、読んでくれるお客さんの為の一文なんだよ。」
「え?」
「だからね、これから我々の話を聞いてくれる人たちに、『何が必要でこれをしているのか』を始めに提示するために必要なのよ。」
奈津子は穏やかにそう言った。
「そんな…何も見せないうちから、『金をくれ』って、余りに下品でしょ?」
私は非難がましく奈津子に言った。
「別に、お金に限定してないけれど、こんな所に来るお客さんなんてのは、大概、何かをしてあげたい人達なんだから、何をして欲しいと考えているのか、始めに提示した方が、話がスムーズにすすむのよ。」
こんなところで悪かったわねっ(*`Д´)
と、瞬時に考えていた自分の中に、評価低めのこのwebサイトへの愛着が自分にも芽生えていることに驚いた。
そして、ただ、提供されたい人達だと考えていた読者と言う存在についての解釈の違いに驚いた。
「何かをしてあげたい人達って、読者の事?」
奈津子はお客さんと呼んでいたけど。
「読者…まあ、そうね。」
奈津子は少し考えて納得した。
「?ポイントとか、ブックマークをくれるって意味?」
私は奈津子に聞いてみた。
このサイトで、読者にねだるとしたらポイントかブックマーク。あとは素敵な感想とかレビュー。
でも、子供のようにクレクレと暴れたところで貰えるものでもないし、
それを嫌う人も少なからずいる。
「違うよ。『なんの為に物語を書いているのか?』目的を提示するためよ。
あなただって、値段の明示されない…寿司屋の時価商品は、注文するのに躊躇するでしょ?
始めにそれを提示する方が、読みに来るお客さんだって安心できるのよ。」
「お客さん……。」
私は、奈津子の言葉に、彼女にとって執筆とは本気でフリマの延長なんだと思った。
「そうよ。誰もただ奉仕されたいなんて考えてないのよ。
我々だって、いろんな願いがあるし、
読者だって、いろんな希望があるわ。
そして、お互い、それを叶えるために、お互いの出来ることを擦り合わせて取引をしてゆくのよ。
特に、こんな素人の書いたものを読みに来る人達なんてのは、何かをしてあげたい人が多いんだから。」
奈津子はそう言って、呆れたように息を吐いた。
「無料だから、手軽だから読みに来るんじゃなくて?」
「無料ってだけなら、図書館の方が完結した話が読めるでしょ?
他にも、著作権が切れた名作を読めるサイトだってあるんだもの。
ここに読みに来る客はね、
私が思うに、『輝き』を求めているんだと思うのよ。」
かっ……輝き……(・∀・)
私は、華やかな秋の紅葉のように赤く舞い散る奈津子の青秋に胸が締め付けられる思いになった。




