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天候にも恵まれて王都には何事もなく到着した隊長とヴィヴィはそのまま王城に滞在した。
王への謁見となると時間も手間もかかるがヴィヴィにとっては不要だった。
「久しぶりだな、ヴィヴィよ」
「えぇお久しぶりですわ、国王陛下」
「父と呼んでくれんか?ここにはわしたちしかいないのだから」
「そうですわね。ではお父様、お聞きしたいことが」
ヴィヴィの本名はヴィーネリアであり、国王の三人目の王女だった。
側室の母から産まれたため継承権が低く、有事の際の旗頭として教育されていた。
それが本人にはあっていて軍でも有数の使い手となった。
「どうした?ヴィヴィ」
「どうしてこの忙しい時期に結婚式ですの?わたくし何度も申しましたわよね。戦争が終わり民の生活が落ち着いた頃に慶事とするから関わらないで欲しいと何度もお手紙を差し上げましたわ」
「いや、だがな、戦争も終わり、ヴィヴィもいい歳だからな。王族でありながら未婚というのも体裁が悪い。いい話じゃないか」
「どこがですの?戦争が終わり民の生活を立て直すための政策を悉く失敗してきた尻拭いとしか思えませんわ。それも当の本人たちには知らせずに招待状を送るなど正気の沙汰とは信じられません」
今の国王は王座を引き継いだときには戦争まで秒読みというところだった。
国内は一気に戦争への熱を上げ、そして勝利していく国への忠誠心を高ぶらせていた。
戦争に勝利してからは、お祝いムードになり王家への賛辞も多かったが一度現実を振り返ると戦争の爪跡がそこかしこに残っている。
それを立て直すことを国に求めた民は国王へ期待を寄せた。
「ヴィヴィ、わしは国民のことを思ってだな」
「ならば何故、余った小麦や米を国で買い取ることを止めてしまわれたのです!量が出回れば値崩れするのは当たり前ではありませんか」
「戦争も終わったから兵糧も不要になるから買わなかっただけなのだが」
「国で買っていたのは兵糧のためだけではありません。飢饉が来た時に民を守るための備蓄です!お兄様もお姉様も弟たちも何度も進言申し上げたはずです」
戦略で天才的な才を持つわけでもなく、政策で特別なことをするわけでもなく、ただただ大局を見据えることのできない国王は行き当たりで政策を行ってきた。
ただ税収というものを変えることはしなかったため影響は一部だったり一過性のものであったりと周りが後始末をするだけで何とかなっていた。
「それは第一王子からも言われたが、ここ十数年、飢饉など起きてはいないではないか。起きてもいないことを案じたところで足元が疎かになるぞ」
「起きてもいないことを考えるのが王族の役目ですわ!民が安全に暮らせるようにするのが、わたくしたちの課せられた義務です」
「民は安全に暮らしている。何がこれ以上必要なのだ。戦争も終わり徴兵されていた家の者が帰って来た」
「一度に人が増えれば職に在りつけぬ民も出て参ります。今の失業率をご存知でございますか?」
勝手に進められていた結婚式への文句を言っていたはずだが論点がずれて国策の話になっていた。
一緒に来ていた隊長は黙ってヴィヴィを見守っている。
「たしか、十人に一人だったな」
「五人に一人ですわ」
「そんなにか!」
「戦争が終わったからと武器を作る者を解雇したからでございましょう」
他にも戦争が終わったからという理由で国の命令のもと雇っていた者たちを解雇した。
どれだけ周りが止めても王の御璽があれば止めることはできない。
「これでも少なくなったのです!第二王子と第三王子、果ては他国に嫁がれたお姉さまが尽力してくださったからにございます。それといつか言おう言おうと思って参りましたことがひとつございます」
「何だ?」
「わたくしの結婚となり目出度いことですわ。ではその相手は誰でございますの?」
大々的に招待状を送ってはいるが旦那となる男の名前は記されていない。
準備をした家臣たちも何度も確認したが王からは当日に発表するという言葉だけしか返って来なかった。
「それは当日のお楽しみだ。驚く相手を用意してある」
「・・・さようでございますか」
「久しぶりに会ったのだから夕食を共にしよう」
「本日は他国の王たちとの会食でございましょう。またの機会にお願いいたしますわ」
言いたいことは言ったからヴィヴィは笑顔で謁見室を出た。
王にとって子どもたちや家臣たちからの忠言は暴君でないと示すために過ぎない。
話は聞いているということを示すだけで意見を取り入れる気は元よりなかった。
「ヴィヴィ、大丈夫?」
「大丈夫ですわ。お父様がわたくしたちの声を聞かないのは今に始まったことではありませんもの」
「そうだね。あのときもそうだった」
「隊長が四神帝として勝利を収めたときでございますね」
思い付きで行動する国王に一番振り回されているのはヴィヴィだった。
それでも多くの民に慕われている王である以上は引きずりおろすこともできない。
クーデターを起こせば、それだけで国が傾く。
民のことを思えば黙って従うほかなかった。




