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第三特務部隊に日常が戻り、隊長は日課のアイスクリームを食べていた。


町の報告書に目を通していたヴィヴィは総裁からの手紙が混ざっていることに気付いた。


「・・・隊長、総裁からの手紙ですわ」


「なんて?」


「あれから崩壊した水路を立て直している最中に再び崩落が起き、作業者一名が重傷を負ったとのことです。命に別状は無いが足に障害が残ったため鉱山労働へと異動させモルドリア女侯爵預かりとしたそうです」


「災難だね」


「名前はアルベンスです」


わざわざ私信で知らせてくるのだから大きな被害が出たと思えば一人だけだったが、その一人の名前が切っても切れない因縁を持つ名だった。


闘技大会で再会とも呼べない再会を果たしてから一週間ほどの出来事だった。


王都では後処理に追われていたのだろう手紙が届いたのは事故が起きてから半年ほど経っていた。


「重傷というと悪運が強いですね」


「ヴィヴィ」


「それとフィアットとユーリーンが不思議がっていましたよ。どうして爆弾が不発だったのだろうって」


「それは・・・」


何か答える前に巡回からフィアットとユーリーンが戻って来た。


二人が戻る時間を見計らって話題にしたのだろう。


「お帰りなさい、フィアット、ユーリーン」


「ただいま、何かあったの?」


「隊長にどうして爆弾が不発だったのか聞こうと思ってたところに二人が戻って来たのよ」


「それは私も知りたい」


「あと当たらなかったのも」


何かあるとヴィヴィがほのめかしたせいで誤魔化すことができないと悟り隊長は溜め息を吐いた。


「俺は“ダブルスペル”じゃないんだよ。“トリプルスペル”持ちなんだよ」


「はい?」


「へっ?」


「“魅了(アトラクディブ)”と“変態(パーベート)”は知ってるよね。残りは“強運(フォーチュン)”だよ」


“スペル”を持っている者は人口の二パーセントで、“ダブルスペル”となると、その中の二パーセントになる。


“トリプルスペル”となれば〇.〇二パーセントにまでなり数えられる程度になる。


「ただでさえ精神系と肉体系の合わせ持ちなのに“トリプルスペル”持ちって、どれだけ伝説級になったら気が済むんですか!?」


「俺だって持ちたくて持ったわけじゃないよ!」


「“強運(フォーチュン)”なら爆弾が不発だったのも納得」


「まだ納得しないでしょ。それならあのバナナで滑って避けたり、ナイフが反れたりしたのは全部が全部“強運(フォーチュン)”のおかげってこと?」


フィアットの“鑑定(ディサーム)”は“スペル”にかかっているかどうかを調べるためで持っているかどうかは調べられない。


それができるのは“辞典(グロサリー)”を持つマグドラだった。


「怪我をするようなことになれば発動するのが条件だからいつもじゃないし、自分では制御できないから意識して使う“スペル”じゃないから“ダブルスペル”と変わらないんだけどね」


「ヴィヴィが驚いていないということは知ってたな」


「もちろんです。わたくしは隊長の補佐である副隊長ですから隊長のことで知らないことは何一つありません」


隊長とヴィヴィは部隊に所属する前からの顔見知りだった。


どこでどう知ったかのかは分からないがユーリーンたちよりも深い繋がりを持っていた。


気にはなるが簡単に教えてくれそうにないから追及しなかった。


「でもアルベンスは引き取られたんだね」


「水路労働ができないと分かった時点で処刑が確定していましたからね」


「刑期まで養うなんて優しいことはしてくれないからね」


「だからモルドリア女侯爵が引き取ると言われたのですよ。生きてはいるので鉱山労働への異動という形にはなりますが」


モルドリア女侯爵は苛烈な人だというのは、あの一件だけで十分に分かる。


取り調べのときにも言っていたが、アルベンスはモルドリア女侯爵のところに戻りたくないということは何度も繰り返していた。


きっと本人にとっては不本意ではあるだろうが、足が不自由な労働犯罪者を引き受けてくれるところなどない。


「“魅力(チャーム)”を使って刑期を短くされるかもね」


「それはないみたいですよ。モルドリア女侯爵は一生手元に置くと公言しているようですから」


「それは職権乱用というか災難というか」


「ですがアルベンスが世に放たれるよりはきっと良いことですね」


真面目に労働してもモルドリア女侯爵は刑期を短くすることはないだろう。


愛しているアルベンスをどんなことをしても手元に置き続ける。


「“魅力(チャーム)”よりも性質が悪いかもね」


「まぁこれで落ち着くところに落ち着きましたね」


「そうだね。セルラインもようやくワルナー様と結婚したし」


「新婚旅行に行って来ると言って三か月ですね」


「帰って来ると思う?」


「帰って来ないと思うよ」


拗らせすぎた反動で胸焼けするくらいに甘い雰囲気を出している二人は金に困ることない身分のせいか豪遊していた。


帰って来たときに子どもがいても誰も驚かないだろうというのは予想できた。


セルラインは入ったときも突然だったが、いなくなるのも突然だった。


そんなセルラインを繋ぎ止めておけるワルナーの懐の深さに脱帽ものだった。


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