表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/91

64

砂埃が収まって視界が開けたくらいには隊長の視界も回復していた。

 

爆風に吹き飛ばされた瓦礫で体中を切っているが致命傷と言えるものはなかった。

 

「やっぱり避けてたか」

 

「足元を狙うだけなら避けるのは難しいことじゃないさ」

 

「簡単に言ってくれるね。爆発の範囲外に離脱するのは難しいのにな」

 

視界を奪い、音を奪っても爆弾で仕留めることはできなかった。

 

むやみに使っても手持ちが無くなり丸腰になる。

 

隊長が一定の距離から近づけないのは爆弾で攻撃されることを懸念してのことだ。

 

足元を狙っているときなら跳躍で避けられても、跳躍の最中に狙われれば避けるのは至難の業だった。

 

「そろそろ決着をつけようか」

 

「そうだな」

 

地鳴りと何かが割れる音が大きくなる中、隊長と朱雀は互いの距離を縮めようと足に力を入れた。

 

先に攻撃を仕掛けたのは隊長で勢いをつけようと腰を落とした瞬間に地面が割れて下に落ちた。

 

逃げることもできずに隊長は下に落ちた。

 

「はぁ?」

 

その様子を見ていた朱雀も突然のことで対応が遅れて自分の足元の地面が割れるのに巻き込まれて落ちた。

 

観客はいきなり地面が割れたことに驚きながらも何かのパフォーマンスだと信じていた。

 

轟音が落ち着いたころにユーリーンは観客席から身を乗り出して隊長を探した。

 

「隊長!」

 

「姿が見えませんわね」

 

「大丈夫かな?」

 

安否を確認したくてもできた穴は大きく装備もなしに降りるのは自殺行為だった。

 

「ヴィヴィ副隊長、ユーリーン、フィアット」

 

「セルライン、帰って来てたの?」

 

「隊長が戦うって連絡を貰ったから急いで戻って来たの」

 

セルラインが戻って来ると連絡はあったが本当に間に合うとは誰も思っていなかった。

 

かなり急がせたのだろう。

 

後ろでワルナーが疲れた顔をしていた。

 

「それで隊長は?」

 

「瓦礫の奈落の底」

 

「えっ?」

 

隊長の雄姿を見るつもりで来ているセルラインは命すらも確約できない現状に顔を青くした。

 

「たっ隊長!」

 

「無事なのかい?」

 

「分かりません。私たちも現状を把握したのは先ほどですから」

 

気を失いそうなくらい顔色が悪いセルラインをワルナーは支えながら席に座らせる。

 

誰もが固唾を飲んで状況を見守った。

 

「一体、何が起きたというのでしょう!地面が!地面が割れました!」

 

「うん、確か闘技場の下には水路が走っていたはず」

 

「総裁?」

 

「これはあれだね。地盤が脆くなっているところに玄武と白虎がリングを破壊するくらいに打ち合って、朱雀が爆破したことによる不幸な人災だね」

 

的確な解説だったが観客が欲しいのは二人の安否だ。

 

このまま両者不在で試合終了というのは高い金を払って見ている観客たちは納得していなかった。

 

「いって」

 

「おお!朱雀が生きていました!これはすごいです!」

 

「一体、何があったんだ?」

 

「そこは実況のこの私が解説しましょう!」

 

完全に総裁の予想に乗っかる形だが自信たっぷりに話した。

 

それを当の総裁が楽し気に見ているから問題にならなかった。

 

「よいっしょ」

 

「おおっと!子ども隊長も生きてました!どうしてこうなったか聞きますか?」

 

「どうせ水路が崩落したんだろ?」

 

「そこは聞くのが大人な対応ですよ」

 

見たところ擦り傷は負っているが致命傷がないから試合は続行された。

 

隊長の姿を見て安心したのかセルラインは手を振って声援を送る。

 

「隊長!おいたわしい姿になられて」

 

「無事で良かったよ」

 

セルラインが隊長に対して入れ込んでいるのは容認しているからワルナーとしては死んでくれなければ、どうでもいいと思っている。

 

隊長に熱い声援を送っているセルラインの左手の薬指には銀色の指輪がはまっていた。

 

同じデザインのものがワルナーの左手の薬指にもはまっていることからペアリングだというのは分かった。

 

「セルライン、その指輪はどうしたの?」

 

「ふふふ、ワルナー様が求婚してくださったのよ。お揃いのものを身に着けるのが夫婦の証なのですって」

 

「東方の国では互いの指に嵌め合うのが習わしらしいからな。真似をしてみた」

 

「ふふふ、指輪を渡してくださるときのワルナー様は恰好良かったのよ」

 

あれだけ拗らせていたのに、すっかり恋する乙女になっていた。

 

そんなセルラインが可愛くて仕方ないという目でワルナーは見ていた。

 

「それは良かったわね」

 

「それに」

 

「それに?」

 

「隊長の追っかけをしても良いって言ってくれたの」

 

「・・・・・・そう」

 

セルラインは確かに隊長のためにならどんなこともするが、それはあくまでも憧れの人のためというものだった。

 

恋をしていたのとは本人の中では違うらしい。

 

「おぉっと?二人だけのはずが誰か瓦礫の下から出てきました!生きてます!生きた人です」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ