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実力者と言っても隊長の敵にはなり得なかったのか、開始の合図とともに一撃で気を失わせるという戦法で勝ち進んた。


怪我をする者も多く出て、休息期間というものが初めて導入されたことで本戦出場者を決定するまでには半年はかかった。


「そういえば、セルラインが戻ってくるようですよ」


「そうか」


本戦ともなると戦いはより熾烈なものになるから十分な休息が参加者には与えられる。


半年もの間、戦い続けた隊長たちと参加が決まっている四天王たちでは疲労度合いが違っている。


「隊長、本戦参加者が決定しました。出場確認の書類になります」


「十二人か」


「はい、四天王の三人と予選勝者九人です」


「誰が出ない?」


「青龍のようです」


四天王の中でも情報収集が主な担当である青龍は特別に免除されていた。


戦闘能力で言えば自衛できる程度というところだった。


「順当にいけば朱雀とは何戦目だ?」


「三戦目ですね。準決勝です」


「それまでは負けられないな」


「はい」


出場の意思を確認する書類にサインをして隊長は闘技場へ向かった。


このまま出場の意思の確認が取れると試合が始まっていく。


本戦を楽しみにしている観客もいる中、前列には関係者が座っていた。


予選まではリングに上がりさえしなければ下で見ることが出来たが本戦ともなると棄権なため観客席に座るしかなかった。


「勝てば入賞ってとこね」


「まぁ勝つでしょうけど、レイピアをいつ抜くと思う?」


「あの姿だとレイピアを抜くの大変だものね」


軽々と振り回してきたがレイピアの長さと身長とさほど変わらない。


振り回すのはできても抜くというのは難しい。


「予選を勝ち抜いたのは分かるけど、弱そうよね」


「対戦相手は選べないから仕方ないけど」


「第一〇二四哨戒部隊は無いでしょ」


敵が来ないか見張りをする部隊で戦力としては数えられていない。


そんな部隊の隊長が本戦に出場したというのは奇跡に近かった。


「あの筋肉は鍛えてるけど」


「隊長も出方に困ってる」


観客は筋肉隆々の男と子どもの戦いに目を輝かせているが軍関係者は冷めた視線を送っていた。


哨戒部隊がどれだけ戦力ではないかというのは身に染みて分かっている。


「本戦が始まりました!第一〇二四哨戒部隊のコルフィス!敵兵を発見し逃げることに関しては天下一品!速さには定評があります!」


紹介されたコルフィスは誇らしげに観客に手を振った。


それに観客は声援で応える。


「第三特務部隊の子ども隊長!レイピアは鞘に入ったままで予選は無傷で勝ち進みました!優勝候補で間違いないでしょう!」


優勝候補という実況の言葉にコルフィスは反応して隊長を睨み付けた。


「子どもが優勝候補とかおかしいだろう!」


「なら勝てばいい」


「大人に対して礼儀がなってないな!」


戦いの合図はすでに鳴っているがコルフィスは離れたところで叫ぶだけで一向に攻撃する気配がなかった。


コルフィスが本戦まで進めたのは虎の威を借りる狐だったからだ。


「俺はあの有名な四神帝(ししんてい)の弟子だ。怪我をする前に棄権しろ」


「四神帝の弟子?その割には弱いな」


「何!」


聞き返したときには隊長の姿は消えてコルフィスの背後にいた。


膝裏を蹴って膝をつかせるとレイピアを首に当てた。


反応することもできずにコルフィスはされるがままになる。


「俺からは二つだ。それが守れたら無傷で帰してやる」


筋肉で覆われているから丈夫とは限らない。


レイピアで叩けば骨折と内出血は避けられない。


腕と肋骨へ怪我を負い、戦線からは必ず離脱することになる。


哨戒部隊に所属している軍人は命の危険が格段に低い代わりに怪我をすれば退役を迫られる。


「ひとつ、二度と四神帝の弟子と言わないこと。ふたつ、今すぐ棄権すること。軍人、辞めたくないだろう?」


「はい、棄権します」


背後からの殺気に耐えられずコルフィスは自ら棄権を宣言した。


「勝者・子ども隊長」


勝者宣言をされたことで隊長は殺気を鎮めてリングを降りた。


恐怖により動けなくなったコルフィスは抱えられて退場した。


他の優勝候補とされる朱雀、白虎、玄武の三人も勝利となり、次の試合は一週間後に再開となった。


人を爆弾で吹き飛ばすのではないかと危惧した朱雀は煙幕を使用する程度に止めて近距離戦で勝利した。


「今回は爆弾を使わなかったんですね」


「実力者相手に動きを止める程度の爆弾では勝てない。文字通り吹き飛ばすのなら可能だろうけどね」


「隊長との闘いで使うかもしれませんよ」


「それならそれで問題ない。爆弾を掻い潜るくらいは簡単だ」


持ち運びができる大きさの爆弾の範囲というのも限られている。


そして、今回は闘技大会ということで観客に危害が及ぶものの使用は極端に制限されていた。


「せいぜい範囲は十メートルくらいのものだ」


「隊長なら可能だと思いますけど、怪我はしないでくださいね」


「分かっている」


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