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十歳の最強魔導師  作者: 天乃聖樹


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火種

 魔法学校の中が騒がしい。


 校舎の廊下を教師たちが慌ただしく行ったり来たりしており、その表情には焦りが浮かんでいる。


「……? どしたんでしょう?」


 首を傾げるフェリス。


 ジャネットが戦慄する。


「これはひょっとしたら……抜き打ちテストの準備でもしているのかもしれませんわ! わたくしたち生徒を非道なテストで苦しめる陰謀なのですわ!」


「て、てすとですかっ!? いじわるされちゃうんですかっ!?」


 フェリスは震えた。


「どうもそういう雰囲気でもないようだけれど……気になるわね」


 三人が困惑していると、廊下の向こうからロッテ先生が走ってきた。


「先生! 廊下を走っちゃいけませんわ!」


「ジャネットも結構暴走しているわよね」


「せんせえっ! テストですかっ? テストなんですかっ?」


 少女たちはロッテ先生を取り囲む。


 ロッテ先生はわたわたと足踏みしながら。


「テストじゃないんだけど……ちょっといろいろあってね! フェリスちゃんたちは心配しないでいいことだから!」


「なにがあったんですの!? ちゃんと話してくださいまし! 話すまでは放しませんわ!」


「行っちゃやーですー!」


 少女たちはロッテ先生にむしゃぶりついて引き留める。


 ロッテ先生は仕方なさそうにため息をつき、声を潜める。


「誰にも言っちゃダメだよ?」


「はい!」


「その……先生たちが何人も王国軍に召集されててね。特に戦闘教官の人は優先的に呼ばれてるから、みんな大慌てなんだよ」


「しょうしゅう……?」


 きょとんとするフェリス。


 アリシアは嫌な予感がした。


「……紛争でも起きてるんでしょうか?」


「いや……そこまでは……うん、言えないんだけど」


「ロ、ロッテ先生も行っちゃうんですか?」


「私は呼ばれてないんだよね。ほら……私はなんというか……」


「非力ですものね」


「まあそうなんだけどはっきり言われるとへこむなぁ! とにかく、引き継ぎとか手続きとか大忙しなんだよ。授業もしばらくゴタゴタすると思うから、自習はしっかりね!」


 ロッテ先生が走り去っていく。


 フェリスたちが漠然とした不安を覚えながら女子寮に戻ると、屋根裏部屋から黒雨の魔女レインと天使ライラが出てくるところだった。


 二人とも旅装束にチェンジしており、ライラは旅行鞄を抱えてぱたぱた飛んでいる。


「あれ? どこか行くんですか?」


 尋ねるフェリスに、レインがうなずく。


「ちいと気になることがあってな。どうも地脈の動きが妙だから、プロクスを調べてくる」


「妙って、なにが妙なんですか?」


「今はまだ分からぬ。ただ……」


「ごめんね、女王様! これも女王様のためなの! ちょっとお出かけしてくるわ!」


 天使ライラは黒雨の魔女と手を取り合い、空の彼方へ飛び去っていく。


「なんなのですかしら……」


 残された少女たちは顔を見合わせた。

10月15日に新作『ノラネコ彼女を餌付けしたい』が発売されます!

シェアハウスでノラネコのような家出少女たちにごはんを作ってあげるラブコメです。

こちらから試し読みもできますので、どうぞよろしくお願いいたします。

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