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十歳の最強魔導師  作者: 天乃聖樹


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森羅の鍵

 真実の宮殿の小径を、エウリュアレがフェリスを先導していく。


 妖艶な美女の姿をしたエウリュアレは、その長いドレスの裾を地面に着けもせず、わずかに宙に浮いて進んでいる。


 湖面を思わせる水面に、クリスタルの薄板が点在する小径。辺りには美しい音楽が静かに流れ、遠い星々がささやいている。


 トレイユの街とも、魔法学校とも、いや、地上のいかなる場所とも異なる奇妙な風景なのに、フェリスにはそこが無性に心地良く感じられた。


 そう、あたかも……ここが己にとっての家、真の居場所であるかのように。


 やがて、小径の向こうに白銀の扉が見えてきた。扉には大きな錠前がつけられ、鎖でがんじがらめに縛られている。


 エウリュアレは扉の前で立ち止まると、フェリスの方を振り返った。


「この扉の先が、現世と来世の狭間、精錬界でございます」


「鍵、閉まっちゃってますね……」


「無論でございます。死者の魂は現世から来世に向かうのが道理……彼らが真実の宮殿に押し寄せてきてしまっては、世界の秩序が乱れますから。『森羅の鍵』がなければ、誰も理に逆らうことはできません」


「しんらのかぎ……? その鍵は、どこにあるんですか?」


「そちらに……女王様が持っていらっしゃいます」


 エウリュアレが、フェリスの手を指し示す。


 そこには、眩く光り輝く大きな鍵が握られていた。


「ふえっ!? い、いつの間に!? なんで持ってるんですか!?」


「貴女様が、主であらせられるからです」


「あるじ……?」


 フェリスにはわけが分からない。思わず鍵を取り落としてしまいそうになるが、鍵は手から離れるやすぐに光の粒子となって消え、フェリスの手に再び出現する。


 しかし、今はそんなことを気にしている場合ではない。フェリスは鍵を握り締めて、扉へと足を踏み出す。


「……女王様。一つ、ご忠告を。たとえ主でございましても、世界の理を崩すことには限界があります。繰り返せば繰り返すほどに理は崩れ、やがてすべての消滅を招くでしょう。狭間に生まれ真実に棲む私どもは構いませんが、女王様の愛する人間たちは無事では済みません」


「……どゆことですか」


「今回で魂を狭間から横取りしてしまえば、次はない。要するに、女王様のご友人たちが死んだときに、同じ方法で救うことはできなくなるということです。それでよろしいですか?」


「…………っ」


 フェリスはたじろぐ。


 けれど、すぐに頭を振って。


「アリシアさんたちは、死なせないです。それに……今なんとかしてライラさんを連れて行かないと、学校のみんなが死んじゃいますから」


「かしこまりました。では、鍵を扉へ」


「はい!」


 フェリスは白銀の扉に、輝く鍵を差し入れる。


 漆黒の光を放ちながら、狭間への扉が開いた。

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