お告げ
空中に『探求者たち』の術師が姿を見せ、快哉をほとばしらせた。
「まさか! まさか我々の魔術を打ち砕くとは!! なんたる魔導! なんたる力! 素晴らしい! 素晴らしいぞ!!!!」
フェリスたちが攻撃を加える間もなく、術師がフェリスの間近に迫った。
血走った眼をぎらつかせ、フェリスに覆い被さらんばかりにして、しなびた口の端からよだれを垂らす。
「ああ……欲しい……お前の力が欲しい……。引き裂いて、呑み干してしまいたい……。そうすれば、きっとあのお方のところへもたやすく到達できるというのに……」
渇望。貪欲。
「ふええええええええ……」
フェリスはカタカタ震えた。
逃げなければならない、吹き飛ばさねばならないのに、術師の形相が怖すぎて体が動かない。濃密な血と魔法薬の臭気が、敵のローブから滲み出してまとわりついてくる。
「フェリスはあげませんわーーーーっ!!」
「ぐはっ!?」
ジャネットが突進してきて、術師の脇腹に杖を叩き込む。
不意を突かれた術師がよろめき、隙が生まれた。
フェリスは我に返り、言霊を唱える。
「真空よ、星々を結ぶ清廉なる代行者よ、その爪を研ぎ澄まし、敵を滅せよ――インペリアルワンド!!」
魔法陣から巨大な腕が突き出し、術師を叩き飛ばす。
術師は大広間を吹き飛ばされ、壁に激突する。
その口から、血が噴き出した。術師は壁に寄りかかって体を支え、絶え絶えの息を漏らす。
「さあ、年貢の納め時ですわよ! 覚悟なさい!」
ジャネットがびしっと術師に杖を突きつける。
「我が同胞を裏切り、殺めた罪、償ってもらおう」
バルフが斧を振り上げる。
「くく……罪なものか……。『あのお方』に到達するためには、いかなる血を流そうとも許されるのだ。『あのお方』が許してくださるのだ」
「ゆ、許すわけないですっ! 絶対に許さないです!!」
フェリスは震える声で訴える。
なぜ『探求者たち』のような忌まわしい教団がフェリスのところに来ようとしているのか分からないし、自分がその女王だと告げるのは恐ろしくてできないが、でも、彼らの行為を認めていないことだけは伝えたかった。
「お前のような小娘が許そうが許すまいが、詮無きこと。すべては『あのお方』の意志! そして、あのお方の巫女の託宣なのだ!」
「巫女……? あなたたちの上には、巫女がいるの……?」
アリシアが訊いた。
探求者たちの教団については、謎が多い。狂信的な信者と、それを率いる術師たちによって構成されている、というのが一般的な認識だったが。
しかし、アリシアの問いに術師は応えようとしない。
「これで……充分だ……。虜は好きにするがいい……」
愉しそうに笑いながら、術師の体が溶けていく。どろどろと、黒々と。悲鳴を上げる少女たちの前で。
やがて術師は、笑い声だけを残し、闇となって消え去った。
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