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 例えばそう、小さな傷でもカサブタになる頃に剥いでやればだんだん大きな傷になってくるし、小さいと思ってなにも処置せずに置いていた切り傷が、何らかの要因で大きくなって余計に痛くなるなんて事はよくある。

 身体的な傷はよく目立って、よく痛むから分かりやすいけれど、精神的な傷はよく分からない内に痛んだり、膿んだり、カサブタみたいに見える蓋で上手に隠れてたり、本人でさえも分からない傷が多々ある。


 僕で言えばそうだな、何歳くらいのことかは覚えてないんだけど、幼稚園に通ってた時のこと。

 当時仲の良かった子がいたんだけど、その子の手を別の子が引いて、まるで僕を避けるように『あっちで遊ぼ』なんて言って、どこかに行った、なんてことがあったんだよ。

 別になんてことはないんだけど、当時の僕は凄くショックを受けて、仲の良かった子も嫌いになった。これだけなら僕は被害者になれるだろう。だけど、現実は違った。僕はそうされるだけのことを仲の良かった子にも、手を引いて行ったあの子にもしていたんだ。

 それは、中学校にいる時に母の持っていた幼稚園の先生との連絡帳みたいなものを見つけた時だ。確か大掃除の時に見つけたんだけど、その中には当時の僕がかなりの横柄な態度で、その二人に対しても結構意地悪なことしてたみたいなんだよね。あれを読んだ時はもうびっくりしたよね。それまでの人生のある種軸みたいなものになってた傷だったし、同じように避けられないようにしようなんて漠然と思ってたんだから。なのに蓋を開いたら避けられても仕方の無いことを僕が相手にしていた。

 それが本当に怖かった。だって、自分がしたことが原因で避けられて挙句に被害者のように傷ついた、なんて思ってたんだから。でも、確かにあの時の僕は傷ついたし、それからもふと思い出すくらいには気にしていた。だから避けられないようにしようとしてたんだから。

 ただ、傷は自分で作れるんだ。僕のように都合のいいところだけを切り取って傷つけたこと以上に傷つけられた事を覚えている事もあるし、ひとつの傷をずっと癒せずに、だんだんと大きくなっていくような傷もある。

 結局、心の傷をどうこうできるのは自分だけなんだ。傷つけてきた人から謝られたって心にある傷は塞がらないし、むしろ広がることもあるだろ? 

 だからどうやって傷ついた自分を癒すか、それが重要なんだよ。


 ん? 僕が言った傷はどうなったんだって?

 事実を知って更に傷ついたよ。自嘲も自責もしたさ。今でも塞がってるとは言えない。ある眠れない夜に意地悪したことを謝りたくなる。でもどうにもならないんだよね。

 だけど、軽くする方法はあるよ。なにで傷ついたか、どんな風に傷ついてるのかをじっくり見るんだ。どういう風に傷つけられたか、じゃなくてね。

 相手ありきのことだから、どうしてもどういう風に傷つけられたかに目が行ってしまうけど、その言動で自分の心がどう動いたかが重要なんだ。

 だけど、ひとりじゃどんな風に傷ついてるかが少し分かりにくいんだよ。だから、日常を通して何か心に違和感があったり、ちくりと痛んだりする時はどんな傷があるのかを見るといいかもね。

 もしも、ひとりで傷と向き合うのが無理って時は、遠慮なく僕のところに来て欲しい。

 時間が来たし以上で終わるよ。

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