なみ
波打ち際を歩く。小さな波に大きな波、たまにサンダルに波が入ってくることもあれば、ギリギリサンダルに当たるくらいで引いていく時もある。濡れてベタついた足が、サンダルを踏みしめる度にぎゅっ、ぎゅっと不快な音を出すけれどご愛嬌。心地のいい波の音に、砂を踏む音、波に当たる時に起きる水の音、一際潮風が頬を撫でて、どこからともなく現れたトンビの声。浜辺を構成する音の全てが今この瞬間を彩っている。相変わらず、足音からぎゅっ、ぎゅっ、なんて音はあるけど、あんまり気にならないくらいにその他の音に聞き入っていた。
「ぶぇっくしゅ」
くしゃみが出た。いくら暖かくなって来たとはいえ、四月に海に入るのは寒いと言うものだ。直ぐに波打ち際から砂浜に出て、近くの足洗い場で足とサンダルを洗い流す。持ってきていたタオルで足をある程度拭いて、上まで上げていた長ズボンを下ろした。なんだかぬくもりを感じる。
そのままフラフラと波の音を聞きながら砂浜を歩く。濡れたサンダルと、濡れた足に砂が付着してまた海に入って洗い流したくなるが、二度目は流石に行けなかった。
歩いていくうちに、海の方へ繋がるアスファルトの道があった。向こう側には何がある〜なんて適当なリズムに乗って鼻歌を歌いながらあるく。
アスファルトの道を歩くと、砂浜の波とはまた違った波の音が聞こえる。波がアスファルトに反射して途中で音が止まるのだ。なんだかそれが少し寂しくて、余計に鼻歌でごまかした。
アスファルトの道の先には、こじんまりとした灯台があった。近くに漁港はないと思っていたけど、灯台はあるんだなぁ、なんてことを考えていると、テトラポットの間にある隙間から水の音が聞こえる。
やっぱり、砂浜の波の音に比べたらなんだか寂しくなるのだけど、ついつい灯台の土台に腰掛けて景色と音を楽しむ。
きらきらと太陽の光を受けて反射する海面に目をすぼめながら、いつの間にか居なくなってたトンビを探してみる。なかなか見つからない。
やがて、テトラポットから聞こえてくるちゃぽちゃぽとした音にも聞きなれた頃、なんだか涙が溢れてきた。別段悲しいことも、精神的に参っていることもないのだが、なんだかとめどなく溢れて来る。ひとしきり涙が出て、ふと声も嗚咽も出ずに、本当にただ涙だけが流れていたことに気がつく。
別に気がついたからどうだってものでもないのだが、何かを洗い流す意味もあったのかなぁ、なんて事が頭を過ぎった。なんだか妙にすっきりした気分で、もう一度浜辺を歩いて、足とサンダルについた砂を足洗い場で洗い流して帰った。




