続編 帰郷
影の囁き続編!黒い胎動です
一年ぶりの村。
リナはバスを降りた瞬間、重く澱んだ空気に包まれた。
かすかに湿った土の匂いと、どこか焦げたような煙の匂いが混ざっている。
「変わらない……でも、何かがおかしい」
彼女は大きな鞄を肩にかけ、ゆっくりと村の細い道を歩き出した。
視界に映るのは、年老いた家々と、わずかに生い茂る雑草、そして静かに囁く風の音だけだった。
あの老夫婦の家は変わらず、けれど以前よりもどこか陰鬱で冷たい印象を与える。
だが、迎えに来るはずのユウの姿は見当たらなかった。
「ユウ……?」
リナは周囲を見回したが、返事はなかった。
その代わりに、鞄の中から一通の手紙がひらりと落ちた。
見覚えのある筆跡で書かれた文字が彼女の目に飛び込んだ。
⸻
『来てほしい。もう一度、すべてを終わらせるために――』
-ユウ
リナはそれを握りしめ、息を呑んだ。
ユウは何を企んでいるのか?
何が「終わらせる」ことなのか?
その時、背後から小さなすすり泣きが聞こえた。
振り返ると、薄汚れた服を着た少女が、震える手で顔を覆っていた。
「大丈夫……?」
リナは声をかけたが、少女はただ無言で首を横に振り、やがて小走りで闇に消えた。
不安を胸に、リナは村の中心へと足を進める。
そこには、かつて見慣れた村の風景が広がっていた。
だが、ひとつだけ違っていた。
村の古い教会の鐘が、深く重い音をたてて静かに鳴り響いていたのだ。
リナはその音に導かれるように、教会の扉を押し開けた。
中は薄暗く、長い間使われていなかったのか、埃の匂いが鼻をついた。
祭壇には、新しい蝋燭の火が揺れていた。
「誰かいるの?」
だが返事はなかった。
祭壇の前には、一冊の分厚い書物が置かれている。
ページをめくると、そこには彼女の家系にまつわる驚くべき秘密が記されていた。
――“器”とは何か。
――“血の記憶”とは何か。
――そして、リナに託された使命とは何か。
だが、その書物を読み進めるほどに、彼女の胸の奥に重い影が落ちていった。
夜が更ける頃、村の外れから、あの少女のすすり泣きが再び聞こえた。
リナは迷わずそちらへ向かった。
そこにあったのは、倒れた木の下で震える少女の姿。
そして、周囲に散らばる、見覚えのある奇妙な紋様の跡――。
これは、単なる事故ではない。
彼女は、再び、村に眠る“影”と向き合う決意を固めたのだった。
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