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58 恋へのズームイン

 すっかりお腹が満たされた二人は身延みのぶ線で富士駅に戻ると、売店にある幾多の誘惑をスルーして東海道線のホームに移動した。


「とりあえす静岡駅まで行って、ホームで乗り換えね」


 朋美が教えてくれる。同じ東海道線なのだが、一本で浜松までは行けないようだ。


 虹子「静岡駅ってさあ。あれ、ラーメン横丁の静岡おでん版みたいなとこあるよね」

 朋美「あるけど、今日はもう時間もお腹の余裕も無いな」

 虹子「また次リベンジだな」

 朋美「うん。帰り道に一人で寄る予定だけど」

 虹子「あ〜ずるい!」

 朋美「虹子にも味あわせてやるから。写真で」

 虹子「拷問か」


 東海道線の静岡行きに乗ってから、虹子はUNITYで、時枝ときえおばあちゃんを入れた自撮り写真やしぐれ焼き、そして裏メニューの卵焼きの写真を唐銅からかねあかりに送った。


 あかりからは「卵焼き!そこまでたどり着いたのか」と言うメッセージとともに、グランブル沼津のマスコットが謎の腰振りダンスをしているスタンプが貼り付けられた。


 虹子:ひかりさんから富士宮焼きそばを大量に渡されたけど・・・

 あかり:庭キャンプで富士宮焼きそばをみんなに食べさせようと思ってさ。

 虹子:なるほど!

 あかり:あ、二人は連チャンになっちゃうな。まあ私のはおばあちゃんとも違うから。

 虹子:連チャンでも行けるっす!


 あかりとのやりとりが落ち着くと、虹子は東京組の共有UNITYにも富士山や焼きそばの画像を送ってあげた。風見類かざみるいから「おいしそ〜」と言うメッセージが届き、星野夕輝ほしのゆきから「でもカロリーが高そうね」と続いた。


 そこから数分して古賀凌駕こがりょうがから「ユキ、最近気にしてるもんな」と余計なメッセージが来た。虹子が心配したら案の定「リョウくん、失礼ね(プンプン)」と続く。予想された展開になってきた。


 虹子「バカップルか!」

 朋美「え、なになに?」

 虹子「ああ、凌駕の彼女って言ったらいいのか分からないけど」

 朋美「ユキって、ヤングシスターズの星野夕輝?」

 虹子「うん、まあ」

 朋美「あの鼻たれ小僧だった凌駕くん。星野さんと付き合ってるんだ。やる〜」

 虹子「あれ、付き合ってるって言うのかな・・・」

 朋美「何、この”東京組”ってグループ名。埼玉の私は除外かよ」

 虹子「そんな訳では」


 今となっては親友の朋美に隠す必要など何もなかったが、5人とのことは虹子のサッカー再開に関係するため、言いそびれて現在に至っていた。


「タイミング合えば誘うけど」


 虹子はそう伝えるが、東京シスターズと言えば、朋美が在籍する浦和レッドクイーンズにとって宿敵だ。しかもエースと守備の要。きっとライバル意識は強いだろう。


 それについて朋美に聞くと、やっぱり試合をした時は夕輝とバチバチの当たり合いをして、二人ともイエローカードをもらったそうだ。


 虹子「どんなイエローだったの?」

 朋美「こっちはボールを奪いに行ったつもりが、思い切り削っちゃって」

 虹子「ええ〜」

 朋美「そしたらあいつ、削り返してきて。あれは報復だよ。VARがあったらレッド」

 虹子「そうなんだ」

 朋美「こっちも削り返したけど。退場にならない程度に。キヒヒ」

 虹子「怖っ」

 朋美「ま、試合後には握手したけどさ。向こう、つり目になってたけど」

 虹子「いや、それはもともと」


 話しながら朋美の額には青筋ができていた。ちょっと不安げな虹子の要素を察したのか、朋美が我に返る。


 朋美「ねえねえ、集合写真みたいなのは無いの?」

 虹子「一枚撮ったかな。ええっと・・・これこれ」


 虹子はスマホの画像をスクロールして、新宿中央公園で6人一緒に撮った写真を見せる。スタロの屋外席でコーヒーを飲んでいた、サラリーマン風の男性に撮ってもらったのだ。


 虹子のスマホ画像を眺めていた朋美が、急に目を輝かせる。


 朋美「ねえ、この背の高い男子は?」

 虹子「シダケン」

 朋美「ズームインしていい?」


 そう言うと、朋美は虹子の回答も待たずに右手の中指と人差し指で、シダケンの顔をアップにする。朋美の様子が明らかにおかしい。


 朋美「シダケンくんて言うんだ・・・」

 虹子「城北ウイングの後輩だけど。朋美のチームとやった時は控えで、出なかったかも」

 朋美「そうなんだ。今は?」

 虹子「ブルーレッド東京のユースチームでセンターバックやってるって。アンダーの代表にも選ばれてるみたいよ」

 朋美「そっか。あのさ」

 虹子「ん?」

 朋美「・・・」


 急に朋美の顔が赤くなって、虹子から目をそらしている。さすがの虹子も状況を察した。朋美がいかにもなイケメンには見向きもしなかった理由がやっと分かった。


「なるほど〜」


 そう言う虹子を朋美が横目て見てくる。凌駕によるとシダケンこと志田賢太しだけんたは虹子に憧れを抱いているという。ただ、虹子の感触では恋愛感情と違う気はしていた。


 親友のための恋のキューピットならいくらでも努めてあげたい。そう思いながら虹子はニヤけてしまっていた。


「あのさ、タイミング見てつなげるよ」


 虹子が言うと、朋美は「あ、ありがと」と急に乙女な態度で感謝を表してきた。朋美の意外な一面を見てしまった気がする。


 最近の朋美のプレーはよく知らないが、ジュニアの頃は男子顔負けのディフェンスで、豪快にボールを奪うプレーを得意としていた。しかし・・・


 虹子「ピッチを離れたら、朋美は丸顔の可愛らしい女子高生なのだ」

 朋美「こら、丸顔は余計だ」


 虹子と朋美は静岡駅で東海道本線の豊橋とよはし行きに乗る。ここから18駅、だいたい1時間半で高塚に着く予定だ。これまでと打って変わって、虹子はシダケンに関する質問攻めにあった。


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