学校にて3
「沢田石が向こうで死んだから、こっちでもそうなっている……嵯峨さんが言いたいのはそういうことだよね」
無月の言葉に嵯峨さんは静かにうなずいた。
「……あり得るね」
無月が低く呟く。
「でも、でもそんな……そんなことって……!」
「可能性の話だよ、八重。あれだけリアリティのある世界だったんだ。死が現実に反映されたっておかしくないと思えるほどにね」
無月の冷静な言葉に誰も反論できなかった。
「向こうで死んでたらこっちでも死んでたかもしれねぇのか……チッ、あの国の連中ますます許せねぇな……」
御法川は机の縁を強く掴んで舌打ちした。
「……兵士やモンスターが死ぬのは、戦争みたいなものだって受け入れてたけどさ。どこかで、ゲームの世界みたいに思ってたんだよね。自分たちは死なない、みたいな」
四方田さんが自嘲するように口元を歪める。
誰も次の言葉を口にしなかった。
嵯峨さんの呼吸が次第に浅くなり、膝の上で握られた指先から血の気が引いていく。
「……この話の真偽は確かめようがないね。一旦、別の確認をしようか」
全員の視線が無月へ集まった。
「皆、帰還する時に選んだ特典は何にした? 現実へ持ち帰れるものを二つまで選べるっていう話だったけど」
「あっ、えっと、私はエゴと魔法にしたわ」
四方田さんの声がわずかに明るくなる。
「……私もエゴと魔法」
嵯峨さんも呼吸を整えながら小さく答えた。
「……持ち帰れると言われても正直ピンと来なかったし、今も試すわけにいかないから半信半疑、というよりは9割が疑いだけどね」
四方田さんが呆れるようにつぶやいた。
「まぁね。で、依代は?」
無月に尋ねられ右手を軽く持ち上げた。
「エゴと、この指輪だよ」
「えっ……わざわざその気色悪いの選んだの」
嵯峨さんが露骨に引いた。
「しかもお前のエゴ? あの役に立ちそうもねぇの選んだのかよ」
御法川がニヤつく。
「うん。御法川とハサミは使いようってね」
「なんだそれ?」
御法川が眉をひそめるたが、特に説明する気はない。
その顔を見ながら、僕は無月へ視線を移した。
「そういえばちょっと気になってたんだけどさ。……魔王が倒された時アナウンスが流れたよね?」
「ん、ああ。流れてたな。……それがどうかしたか?」
御法川が首を傾げる。
「いや、別に大したことじゃないんだけど」
「深谷無月って、誰?」




