第37夜 蒋介石宛の天皇親書
「今晩は、東條閣下、ご機嫌はいかがでしょうか。」
「頗る良い。」
「閣下、頭の中にもう一人の自分がいるというのは、どんな感覚ですか。」
「別の人格がいる感じだ。なにしろ年上の自分だ。」
「それは、二重人格だ。お話をお聞かせください。」
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『先生』は、黄泉がえり前の世界で、ルーズベルト大統領が日米開戦間際に送った親書を思い出し、この世界で、蒋介石宛の天皇陛下の親書を陸軍大将松井石根に託した。以下がその親書だ。
「約50年前、不幸にも清国と日本は、李朝朝鮮の宗主権を巡って戦火を交えました。その結果は、漢民族の目覚めとなり、辛亥革命により中華民国が成立しました。
その後も、日本は、列強なかでも露西亜、蘇聯邦と満州を巡って覇権を争いました。そして、満州族の満州国の建国以後、貴国と日本の関係は、友好善隣関係から敵対関係となり、両国国民同士も悪感情に覆われ、盧溝橋事件以後、戦火を交え、現在に至っております。
盧溝橋事件の偶発的な1発の銃弾によって、貴国との戦争は拡大してきましたが、それこそ蘇聯邦及びコミンテルンの企みだったのです。この度、日本で国際諜報団事件が発覚し、盧溝橋事件とその後に続く様々な日本軍に対する事件は、コミンテルの中国共産党に対する指示があったこと。そして、日本政府の近衛声明「国民政府を対手とせず」には、国際諜報団の暗躍があったことがはっきりしました。
両国は今、非常事態に直面しています。貴国が日本と抗戦を続けることにより、両国が疲弊し、両国民の怨嗟の声が、共産主義革命を起こすのを蘇聯邦は待っているのです。
私は、平和を重んじ、万邦国民の生活を重視する眼差しで、この数年間の日中戦争の推移を強い関心を持って見守ってきましたが、米国及び英国の貴国への援助により、戦乱は、中国全土に及んでいます。
私は、世界のどの地域においても、他国の侵攻を憂慮することなく隣国同士共存でき、そして差別措置や優遇措置などの存在しない通商関係が維持される中で平和がもたらされることを強く望んでいます。
私にとって明快であるように、軍事委員会委員長閣下にとっても明快だと確信していますが、これらの命題を成就させるために、日中両国はいかなる軍事的行為を互いに行わないことに同意すべきです。これが命題解決には必須だと感じます。
今、アジア諸国において必要なことは、他国の干渉なしに各民族の意志を反映した自主的な政権の誕生とそれらの国家間において、対等な外交並びに平等な通商関係を構築することであると信じています。
この非常事態を勘案し、日本政府が提案する大東亜諸国経済連合構想がこの「暗雲を払拭する方法」であると信じ、この場を借りて提案いたします。軍事委員会委員長閣下も日本との和平に断を下し、この連合に中華民国も参加していただきたいと切に希望します。
大国である両国の国民のためだけでなく、アジア諸国の平和のためにも、軍事委員会委員長閣下と私は、これまで培ってきた2千年の両国の友好関係を復元し、これ以上の惨事や破壊を地球上から阻止する神聖な責務を負っております。
昭和16年11月15日
大日本帝国天皇 裕仁 御璽
内閣総理大臣 東條英機 副署」
『先生』:(さて、これで蒋介石は和平に応じるか。アメリカと歩調を合わせるか。楽しみだな。)
『私』:(汪兆銘政権をどうするかだな。)
『先生』:(問題ないさ。周仏海は、蒋介石政権と連絡を取っているはずだ。それに、奴は3年もすれば病気で死ぬ運命だ。昔、狙撃された弾が取り出せず腫瘍となる。弾を取り出せば、死ぬかもしれない。それを蒋介石に教えてやれば和解するさ。)
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もうじき就寝の時間ですから今日はここまでとしましょう。
続きはまた、明日、お話します。おやすみなさい。




