白い暁
~あらすじ~
ゲキセンノ果てに気を失った王太郎は見慣れた天井の部屋で目を覚ます。同時に襲い来る現実に飲まれ、再び眠りについた王太郎の夢に現れたのは――――?
目が醒める――――。
目に写るのは薄く灯る電灯と染みの多い天井。そして窓から日射しが入り込み醒めたての視界には刺激が強かった。
窓から逃げるように右へ首を向ける。そこには誰もおらず、カーテンが俺を部屋からさらに小さい四角へ区切っているようだった。
体を起こすには億劫で、しかし体を動かさねばもどかしい。ベッドの上で寝返りをうち、薄ピンクのカーテンと対峙した。
そうしていくらかの時間が過ぎると、記憶が刻々と明瞭に蘇ってくる。
完全に思い出した記憶の最後は、一ヶ月も二ヶ月も、いや半年も前のことのように思われる。
もしやあれは夢なのではないだろうか?
俺が心のどこかで一番恐れていることが”悪夢“として表れたのではないだろうか?
そんな都合のいいことではないことくらい分かっている。
気だるい身体の節々に走る鈍痛が、あの激戦を現実だと証明している。
もう一度寝返りをうち、外へ視線を移した。
真っ青で雲一つない快晴の下に、遠くにだが、本当に微かにだが、聳え立つ銀色の巨壁が見える。
「ほれ、見ろ。夢ではないのだぞ」
重たい現実の宣告が聞こえたようだった。
あれやこれや考えることが不毛に思われ、再び瞼を閉じた。いっそ目覚めなければ……、そんなことを考えれば沙耶に怒られてしまうかもしれない。
ただ、今は深くいつまでも眠っていたい気分だった。
『でも、まだ君は諦めないんでしょう?』
これは夢なのだろう。浮遊感を全身で浴びながら出所も知れない少女の声がする。
――――誰だ。どうして分かったようなことを言う。決して俺はそんなことは思ってはいない。どうしたらいいのか分からない。自分がどうしたいのかさえ分からない。
少女の言葉に胸の奥がざわついた。速まる鼓動が鼓膜を激しく叩く余りに、支離滅裂な文章が脳に響く。
『難しいことを考えているんだね』
――――お前は何が言いたい……?
穏やかな声は声にならない声に答えてみせた。
『君の本心、かな』
――――知ったようなことを言うんじゃない。何を知っている。
『知っているよ。少なくともこの半年は君の一番近いところで触れてきたから』
――――お前は、一体……。
得体の知れないものに触れるときのように、恐る恐る手を伸ばす。
『私は知ってるよ。君の喜びも悲しみもときめきも苦悩も痛みも希望も絶望も、そして決意も――――』
指の先にある空間に影が収束する。そこには白い長髪の少女が佇んでいた。
「き、君は……」
その少女の姿に喉から声が出る。驚きと同時に戸惑い、心臓が急速に動いている。
白いワンピースに身を包んだ少女は、呆けた俺の指に指を絡ませた。絹のような艶やかな感触は夢ではない。
『久しぶりだね。一度顔を合わせて、一度お話したの覚えている?』
――――う、うん……。
声はなく、俺は首を縦に降ったのみだった。
『改めて自己紹介するね。私の名前はクロエ。”クロエ・キャベンディッシュ“』
そう言ってクロエは手を握り笑ってみせた。




