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王太郎と紗耶

 俺の中にある紗耶(さや)との記憶の始まりは、それこそ物心がつく前からだった。家族や兄妹ではない存在だが、常に隣にいた存在。実の妹である秘芽子(ひめこ)よりも長い付き合いの、不思議で特殊な関係を築いていた。

 何でも朝臣(あそん)家と宇佐美(うさみ)家との間に縁があったらしく、俺たちが生まれる数年前に隣の土地を紹介して越してきたらしい。全て話に聞いただけだが、これだけだと俺と紗耶の付き合いにも納得がいく。

 そして俺と紗耶が二つの頃に秘芽子(妹)が生まれ、俺たちは兄と姉になった。そして爺ちゃんの勧めにより俺と紗耶は空手を始めるのだが、俺は二年ポッキリで道を諦めてしまうのは別の話――――。

 しかし俺が五つのときに宇佐美家は紗耶を残して消えてしまった。その齢の俺にはそれがどれだけ大層なことかは理解出来なかった。それはどうやら紗耶も同じのようで、当分の間は俺たちの日常が変わることはなかった。

 どうやら紗耶の両親は”ユクエフメイ“とやらになったらしいとは後から聞かされた。

 それをきっかけにどことなく穏やかさを欠く紗耶は厳しい性格になっていた。周囲に隙を見せようとしない紗耶は歳不相応に強がり、荒々しく猛々しく、近寄る者は次第に減っていった。がゼロにはならなかったのも事実だ。

 どうしても俺の目には紗耶が苦しんでいるようにしか写らなかった。それは朝臣家の全てが受けた印象であり、誰もが静かに紗耶を受け入れた。

 紗耶は荒れていた時期を自ら”黒歴史“と言っていたが、忘れようとはしていなかったようだ。生まれた頃からのお隣さんはそのときに”家族“になったからだろう。少なくとも俺はそう思っている。

 そして「ヤマト魔導学園」で肩を並べたと思っていた――――。


 そんな矢先――――――――。


「王太郎が私を殺して」


 それが紗耶の最後の言葉となった。それが紗耶の最後のわがままだった。

 認めたくない現実と認めざるを得ない感情の波に窒息する。


 ――――あぁ俺はきっと、紗耶のことを……。


 ならばやるべきことは、一つなんじゃないのか?

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