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24.ダンスをしながら会話してます 2

 うちに婿の立場を望んでいるの令息は多いのか、と意外に思ったけど、それは前提がお姉様相手だから――と思い直す。

 お姉様なら幼少の頃から跡継ぎとして勉強しているから、補佐として仕事をすればいい。自分で領地経営とかをするよりも楽よね。

 でも、わたしだったらどうなんだろうか? 今まで何も勉強して来なかったわたしと結婚したら、補佐どころじゃないわ。

 ……いえ、逆かもしれない。ぼんくらなわたし相手では実質うちを乗っ取ることも出来ると思われかねない。女伯として立てなければならないけど、何も出来ない――と思われる――わたしなら、代理と言って好き勝手出来そう。

 実際、漫画のアドルフ様はそんな感じで浮気相手に貢いで、ペイリー家を借金塗れにしたのだから。


 うちが堅実な領地経営をしていると言っても、それほど裕福ではない。お父様はああ見えても、我が家が無駄にお金を使うくらいなら、税収を下げるなりして領地に還元するほうだもの。

 わたしに甘いと言っても、ほいほいと物を与えることはなかった。そのつけが全てお姉様に行っていたのだけど。


「それで、ルカ様はどちらなのでしょう?」


 思い至ったことについて、濁す訊ね方をする。

 後者なら、彼と親しくなるべきではない。下手に仲良くなれば、リアム様に外堀をザックザックと埋められるでしょうね。


「どちらだと思う?」


 質問に質問で返されて、思わず顔をしかめてしまう。

 そうねぇ。ルカ様は言わなきゃ気づかなかったことに、わざわざ気づかせてくれた――そう、考えると前者になるし、ルカ様を選ばなかった場合も注意しろという警告になっている。

 少なくとも、今のわたしには考えつかなったことを教えてくれたように思えるわ。


「……善良な考え方の方に受け取りますわ」

「そう、良かった」

「考え方は善良ですが、本人が善良とは言っておりませんが?」

「……痛いところを突くね。まあ、先に恩を売っておこうという考えもあるかな?」

「ふふっ、はっきり言うのには好感が持てますわね。それと、公爵家ともなれば、他の爵位もお持ちでしょう? わざわざ婿にならなくても、ルカ様なら貴族のままでいられるのではなくて?」

「まあ、もらえる爵位はあるよ」

「そうでしょうね」


 腹の探りあいは面倒くさいのよ。前世も含めてそんな環境にいなかったから。

 例えば、ニールのようにはっきり言ってくれる人の方が付き合いやすい。ルカ様もまだ様子見だけど、リアム様よりは好感が持てる。

 そう思って笑みを浮かべると、ルカ様も嬉しそうな表情をした。


「そう、それは良かった」

「ルカ様くらい、リアム様も分かりやすければいいのですけれど」

「兄さんは、ね……。懐に入れた人には優しいけど、それ以外は損得でしか動かないところがあるから」

「……それだと、わたくしへの態度を見るからに『それ以外』なのでしょね」


 そう返すと、ルカ様は困ったような笑みを浮かべた。

 わたしとしては、別に優しくしてくれなくてもいいけど。話しているとムカついてくる人の傍に居たくないし。

 そんなことを考えていてせいか、きっとしかめっ面になっていたのかもしれない。


「エレン嬢は、兄さんが嫌い?」


 ルカ様に問いかけられてしまった。

 ここはルカ様を気遣ってそうじゃないと言うべきなのか、それとも本音を言うべきか――迷ったけれど、口から出たのは本音の方だった。


「……そうですわね、嫌いというほど為人を知っていませんし、どちらかというと、苦手というほうが合っていますわね」


 どうもノーリッシュ・カフェでの会話のせいで、苦手意識が強いのよね。

 こちらの知りたいことは言わずに、自分の主張を通そうとする。もう少し協力的に話してくれれば、理解しやすいのに。

 ああ、リアム様のことを考えると苛々してしまうわ。


「……できれば、リアム様のことはお聞きしたくございませんわ」

「ははっ、兄さん嫌われてるね」

「笑いごとではありませんわ。自分の思うとおりになるまで、同じことを何度も繰り返されましたのよ。もううんざりです」


 そして、性懲りもなく、わざわざ来て弟を紹介してるんだから。

 ルカ様も、リアム様に言われるままでいいのかしら?


「ルカ様は、リアム様のおっしゃる通りにされていますが、本当にそれでよろしいのかしら?」

「うーん、爵位をもらい、何か事業を任せてもらう予定ではあるけど、婿に行けと言われて断る必要もないかな、と。それより、どんな女性かと思ってね。いくら、ヴィンスのためとはいえ、僕まで動かそうとするくらいだから……どちらかというと、興味があったからだね」

「まあ、はっきりとおっしゃいますのね」

「うん、だって本音で話さなければ、エレン嬢は見切りをつけるでしょう?」


 少し困ったような表情で、ルカ様は問いかけた。

 そうね、確かにその通りだわ。リアム様には散々苛々させられたもの。弟であるルカ様にも同じことをされたら、もうアルドリッド公爵家の者の話は聞く気になれないわ。


「そうですわね。苛々するのは精神衛生良くないので、ルカ様とも関わり合いになりたくはありませんわ」

「はは、はっきり言うね。一応、公爵家の者なんだけど」

「これくらいで我が家に何かしてくるようでしたら、リアム様の器の大きさが知れますわね」


 実際、何かしてきたら困るんだけど、流石に裏で動いているようなので、表立ってリアム様やアルドリッド公爵家を貶めるような言動を慎めば、動くことは出来ないと思うの。

 今回ので問題なのは、リアム様がわたしに近づいて内緒話をしたことかしら。

 あれって、傍から見ればかなり親密に見えてしまうのよね。それでも、リアム様から離れるために手を出せば――押すだけど――それに対して抗議される可能性があったもの。

 上位貴族相手って面倒くさいのよね。

 うちは伯爵家。貴族としては中の中だけど、伯爵家の中では少し下と言えるかもしれない。

 そんな家の娘が、高位貴族を相手にしなければならないのは、胃がキリキリ痛くなるのよ。


いつも誤字脱字報告ありがとうございます。

投稿する前に見直してはいるのですが、なかなか無くならないものですね。

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