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3.賊滅の地、ザナドゥ

さぁ賊退治の後半戦だ。

賊達は石壁を警戒して全速力が出せない。

しかし諦める選択肢も無いようで、怒号で自らを奮い立たせながら突進してくる。


好都合、実に好都合。

貴様らは近付けたのではない、追い込まれたのだ。


道の両脇いっぱいいっぱいの壁は200メートルほど先まで伸びた。

手元からこのくらいがひとまずの限界か。 覚えておこう。


「野郎ッ! ぶっ殺してやらァ!」


バンデシネとかいう賊の一味が怒号を張り上げながらいよいよ目前に迫る。

待ってたよ。 ここまで来てくれるのを。


さぁクラフターの機能【削除】だ。

壁の間の地面を削り取れ!


カリカリカリッ


軽妙な効果音に似合わない光景が広がる。

バンデシネ一味の足元が消滅し、次々と転落していった。


「うわああああっ! なっ、何が起き──ぐびゃっ!」


と、言っても大した深さにしなかったから結構生き残るんじゃないかな。

下から悲鳴や怒号が聞こえてこない。

10ブロック、つまり10メートルはちょっと深すぎたかな……

考えてみれば10メートルは3階建ての家の屋根の上くらい、そこから落ちたら……うん、死ぬな。


レーダーマップには遅れて3騎の賊が来たが、恐らく壁と巨大な穴を見て計画の失敗を悟ったのであろう、慌てて引き返す様が映っていた。


「何人か捕り逃したが仕方ないか」

「凄い! 旦那様凄すぎる! あのバンデシネ一味を一網打尽だ!」


トレック少年が馬車から飛び降りて大はしゃぎだ。

削除された地面スレスレまで行って、うひゃ~とか声をあげてる。

地面が弛くなってるかも知れないから、あまり近付かないようにね。


「しかし予定外に全滅されてしまったな。 両脇の壁を落とす所が攻撃のメインだったのに」


ボヤいていると、金髪美少女も馬車から降りてお礼を述べてきた。


「助けて頂いて本当にありがとうございます。 私はマーロウ商会の会頭の長女、プリシラと申します」

「礼には及ばないさ。 それより、何で追われていたんだい?」


プリシラと名乗った金髪美少女は突然顔を赤らめてモジモジとしだした。


「あ、あの。 自分で言うのは恥ずかしいのですが、一応私は町一番の美人なんて言われてまして……」

「なるほど納得。 確かにそこらの財宝より価値が高いだろうな。 それで町を出たタイミングを狙いわれた、と」


俺が肯定したせいか、両手で顔を覆ったまま固まってしまった。

恥ずかしがり屋さんか。 可愛い。

しかし埒が開かないから話題を変える。


「それで、被害は?」

「あっ、はい。 幸い死人は出ませんでした。 怪我人が一人で済んで良かったです」


後ろで後始末の作業をしている商会員を見ると、なるほど一人腕に矢が刺さってる。

町に戻るまでは下手に抜き取りたくないのだろう。


「あ、ポーションあるよ。 ポーション」

「ええっ!? ポーション作製までなされる魔法使い様なんですか!?」


うん、むしろ本職。

クラフターはブロック設置と豊富な装備とアイテムで戦う職業だから。

その代わり何とステータスとスキルが一切得られない。

全てを装備で賄うのだ。

なので、なぜか剣を同時に10本とか装備できる。

ここでやったらどんな絵面になるんだろう?

そんな事を考えながらアイテムボックスからポーションを取り出す。

初級、基礎、中級、上級……まぁ一般人なら中級ポーションで全快かな。


「あったあった。 はい、これ」

「あ、あの。 これはとても高価な魔法薬では?」


プリシラさんがおそるおそる訪ねてくる。

えーと、店売り素材で作ったとして……金貨100枚かからんな。

サンクラじゃタダ同然よ。

そもそも錬金釜に材料ぶちこんでコトコト煮るだけだしな。


「いや? お手頃だから遠慮せずに。 まぁ料金代わりに町までまた馬車に乗せてもらおうかな?」

「それは是非ともです。 では、遠慮なしに……」


いきなり商会員が絶叫して矢が引き抜かれた。

そりゃ痛かろう。

引き抜いた商会員が「しまった! 矢じりが残ってしまった」と叫ぶ。


あらら。


「まぁポーションはまだたくさんあるし、町にいったら改めて傷口を手術で開いて矢じりを摘出すれば良いさ。 とりあえずそのポーション飲ませちゃってください」


商会員はためらったが痛みに暴れる仲間を見過ごすのも辛かったのだろう、仲間の手を借りて体を押さえ付けポーションを何とか飲ませた。


にゅるっ ポロッ


おう、キモい。

腕の中に残っていた矢じりが傷口から押し出されるように出て来て商会員は完治した。


「凄い! こんな効果まであるポーションなんて相当高価なポーションだったに違いない!」


商会員が口々に喜びの声を上げながら礼を言ってくる。

サンクラには矢じりが残る継続ダメージとか無かったからなぁ。

こうなるのか。 良かった、良かった。


プリシラさんも改めてお礼を言ってくる。


「本当に重ねてお礼を申し上げます。 あれは傷口が腐って腕を切り落とすか最悪死んでもおかしくない傷でした。 一度には無理ですが、代金は絶対マーロン商会が全額お支払致します。 お値段は……金貨300枚とお見受けしましたが……」


困ったね。 移行祭りで落ちてたのを拾っただけ、なんて言っても分からないだろうし。

こちらとしては、回復量の高いポーションなら体内残留物も除去できるという情報を得られただけでむしろお礼を言いたいくらいなんだが。

いざと言う時の検証がこれでひとつ済んだのだから。

適当な言い訳をして誤魔化すしかないか。


「気になさらずに。 えーと、こう見えても私はお金持ちの魔法使いでして、富める者の義務というものです」


別に彼女らから税金取ってる訳でもないけどね。


下手に問答にならないようにプリシラさんの前から去って、商人員の手伝いをしているトレック少年の所に駆け寄る。


「いやー、大変だったなー トレック少年もお腹が減ったろう」

「はいっ、いつでも腹ペコです!」


このくらいの子供ってそういうものだ。

代謝と消化能力が凄いからな。

よーし、じゃあパンでも……いや、待てよ。

せっかくだからサンクラのアイテムを出すのではなくて【通販機能】を使おう。


サンクラには常設コラボとして、世界最大大手のネット通販サイト「アマテラス」のアイコンが常に画面内にあった。

このアイコン経由で買うと専用ガチャポイントが貯まってちょっとしたガチャが回せる。

俺なんかのヘビーユーザーは必要なリアル生活物資をメモってからログインしたものさ。


アマテラスのアイコンを意識すると、出た出た。

見慣れた画面にログイン済み。

残高は……384万円。

多分これ、俺の生前の財産全部を換金してくれた額だろうな。

生涯独身アラフォーでこれとは情けない。

神様の言うとおり、今生は前世の分まで幸せにならねば!

そのために転生させてもらったのだから。


改めて、新しい人生の再スタートを噛み締めた。

俺はここ、約束の地ザナドゥで生きて幸せを掴む。

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