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〜狂壊の鎮魂歌〜 悪魔との契約書  作者: マガミノ
第一章
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十話 一悶着

部屋に戻ってベッドへと身を沈める。

レルツィに扱かれたせいで体がクタクタだ。

けれど敢えて言うなれば充実した時ではあったのだ。・・・此処(ここ)に来てから初めての。

性悪な笑みを浮かべていたレルツィを思い出してフフッと笑ってしまう。


一番最低最悪な印象を持った相手と一番最初に有意義な時間を過ごすなんて私は思いもしなかった。

相手へのイメージが大変動し過ぎだ。

これじゃあ他の人達の印象もどんなきっかけで変わっていくのか分からない。


ちなみに私は生前では此処(ここ)まで単純な性格をしてはいなかった。・・・まあ今もそこまで単純じゃないし(むし)(ひね)くれていると思うのだけれども。・・・だけれども。


(・・・取り敢えずもう就寝の時間だし寝よう。)


モゾモゾと身動きをして掛け布団を被る。そして何時(いつ)ものお決まりで枕を頭に乗せず抱きしめて寝た。

目を閉じたら疲れのせいなのか直ぐに意識が落ちた。



----------------------------------------



「っう~~~~~ん~っ!!」


昨晩はよく寝れたようだ。

死んだから早寝早起き三食食事とはどういう事だ・・・と思うがこれだけ健康的な生活をしたのはとても久し振りだ。・・・ちなみにお風呂には入っていない。

疲れただろうからもう寝ろ、魂なんだから綺麗汚い関係ないだろとレルツィに追いやられたのだ。

確かに体もスッキリしていて一日風呂に入らなかった風には感じられない。


ベッドから這い出て部屋備え付けの洗面所へ向かう。

蛇口を(ひね)り、流れ出てきた冷たい水で顔をパシャパシャ洗った。

此処の洗面所自体もアンティーク調でとてもオシャレだ。

輝く銅色をしていてシックな印象がある蛇口についつい見とれる。

此処に来てから見とれるものばかりだ。というか結構私好みの雰囲気・・・ドンピシャだった。


ふと、生前のいじめ主導者の藤 朔羅(さくら)を思い出して苦々しい気持ちになる。彼女は絶対こういう部屋であっても物足りないだろう。私とは正反対過ぎるぐらいゴツゴツしたような物が大好きだから。


「切り替えよ。」


伸びをもう一度してから服を着替える。

軽い長袖ワンピースだ。私のサイズにそこそこ合っていてこれはどうしたのかとリーヴルに聞くと以前住んでいた人の物だからもう要らない、気にせず使用して良いと言ってくれた。

ちょっと膝下位の長さのワンピースが私のロングヘアにピッタリで気に入った。

髪は既に()かしていたから後は使用したベッドを整えて出るだけだ。

全てを終え、部屋靴から廊下用の靴に履き替えて外へ出た。



「おはよう御座います。」


食堂へ向かうと既に幾名かが集まっていた。

私が挨拶をすると真っ先にリーヴルがニコニコ声を掛ける。


「おはよう御座います澪璃(みおり)さん。昨晩は良く眠られたようでスッキリした御顔をしていますねぇ。」


「・・・どうも、ベッドもフカフカだったので。」


相も変わらずな胡散臭さだ。未だに笑みを貼り付けているだけの能面にしか見えず警戒をしてしまう。

するとリーヴルが挨拶をしてから他の二人がワラワラと来た。


「おはよう、澪璃(みおり)殿。・・・今日の朝食は安心してくれ。リーヴルと俺が作った。」


そう言ったのは仏頂面のベルデンだ。

そうか、今日はレンヅィーは手を出していないんだなと安心をして笑ってしまう。失礼ながら。

朝から聞く彼の重低音の声は耳に優しい。・・・何処(どこ)ぞの怪しいしたり顔さんとは違い。


「おい小娘、なんだその緩んだ顔は。それをレンヅィーに見せてみろ・・・ことを察した場合、後が面倒だからな?」


顰め面で近寄って、注意をしてくるのはレルツィ。昨夜ビリヤードで和解した一番口の悪い相手。

だからか私も調子に乗ってしまう。


「ハイハイ、レルツィさんはお節介ですね。有難う御座います。ところで昨日よりも大分毒舌減ってますね?どうしたんです?熱でもあるんですか?」


「・・・コイツっ・・・昨日の今日で調子に乗りおって・・・!!!」


ギリギリと歯軋りをするレルツィをニヤニヤ眺めてしまう。それをリーヴルは不思議に思ったのか聞いてきた。


「・・・おや?お二人は何時(いつ)の間にその様な冗談を言い合える仲に・・・?」


「・・・まあ、昨晩ガブリエルと吾輩が娯楽室に居た時彼奴(きゃつ)が来おってな、ソレでビリヤードを教えた迄よ。」


何を言いますか。教えてもくれたけれど実践してレルツィは鬼気迫りながらプレイしてたじゃないですか。

と言いたい。


「・・・・・・・・・・・・・・・おやおや、そんな事があったのですか。」


私の方を向いて笑顔で聞いてくるから私も頷く。


「はい、まだ弱いですけども色々ルールとか分かって楽しかったですよ。レルツィさんは実践の際は鬼気迫ってましたし、ふふふ。」


「貴様ァァァ・・・!!」


「・・・・・・・・・・・・ほう・・・それは、それはとても楽しかったのでしょうねぇ。」


「はい、それはもう!」


私がニコニコしていると何故かベルデンが物凄い勢いで巨体を丸め、悶えていた。

隅の観葉植物の影でそんな事をしているから理由もなしに可哀想になってくる。さすが大型犬だ。


「・・・レルツィも澪璃殿も察してくれ・・・」


力無く放たれた言葉はその一言だった。

しかし心当たりの無い私とレルツィは少し首を傾げ、思案してから聞く。


「どういう事ですか(だ)?」


「・・・いや、分からないのならば良いんだ・・気にしなくて良い。俺が余計なことを言ってもヤバさ倍増なだけだからなきっと・・・・・・」


何か言っていますがやっぱり分からない。

そうこうしているうちに大柄なベルデンが細身なリーヴルに首根っこを掴まれて厨房へと引き摺られていった。

そして私とレルツィは無言で顔を見合わせてからそのままそれぞれの席へ座った。

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