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「その荷物何?」
私の足下に置いてある可愛げのない大きな紙袋を見て、だいちゃんが言う。
「これ?母の入院の着替えとかタオルの替えだよ。」
「そっか。引き止めてごめん。お母さん大丈夫?」
申し訳なさそうにだいちゃんが聞く。
そういえば、先日病院まで送ってもらったんだった。
母の病状について言うべきか迷ったけれど、誰かに聞いてほしい気持ちも相まって、私は言った。
「うん、癌なんだ。」
「そうか。大変だね。」
「でも元気そうに見えるんだよ。」
病室にいる母の態度を思い出しながら、私は努めて明るく言う。
思えば、誰かに母の病気について話したことはなかった。
会社の上司にも、入院していますとしか伝えていない。
「病院へ行けば、早く結婚しろってうるさいの。しかも私が彼氏を紹介しないなら手術しないとか駄々こねちゃって大変だよ。あまりにうるさいから、彼氏いるって嘘ついちゃった。」
こんなことをだいちゃんに言ったって仕方ないのに、だいちゃんがうんうんと聞いてくれるからつい甘えて愚痴をこぼす。
「だから合コンに参加したんだ?」
「うーん、まあ、そんなとこかな。」
私の返事に、だいちゃんはふっと笑みを浮かべて頭をぽんぽんとした。
「咲良は優しいね。」
とたんに、治まっていた頬の熱がぼっと復活する。
今優しさをくれているのはだいちゃんなのに、私が優しいとか褒めてくれる。
それにその仕草は、昔もよくやってもらった記憶がある。
だいちゃんに頭をぽんぽんとされると、私の心は落ち着くんだ。




