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2115年、アンドロイドの救世主  作者: レブナント
ACT6 クラブ音音襲撃事件
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第五話「ハンニバルズ突入」

 フロアでトリプルバレル・コイルガンを撃ち続けていたマサコが監視カメラの方に顔を向けて叫ぶ。


「時間がないっ! 私は今手が離せない! シュリを呼んで!」


 館内放送でテディの声が響く。


「業務連絡! シュリ、フロアのマサコちゃんの応援へ向かって!」


 廊下を進むカムイとマキの隣を凄まじい速度でホステスが駆け抜けてすれ違う。

 下半身がサイボーグ化されており、かなりスリムで長い脚をしていた。

 後ろを振り返りながらカムイがティアラに尋ねる。


「何だ今のは? 突風で転びそうになったぞ!」

「シュリちゃんよ。第23回サイバーオリンピックの長距離走のメダリストよ。カムイさん貴方も知ってるでしょう?」

「早すぎて顔が見えなかったよ。こんなに早いんだな……」

「カムイさんあそこ!」


 マキが指さす方向のエアダクトにアントドローンの触角が覗いていた。

 カムイが慌てて射撃して破壊する。


 一方、フロアではマサコがアントドローンの迎撃を繰り返しながら後退を続け、巨大な柱のそばに立っていた。

 背後に駆けつけたシュリが立つ。

 それをチラ見したマサコは柱に手を当てた。

 センサーが静脈を読み取り、カバーが開く。

 中には大量のコイルガンのカートリッジと吸着地雷が格納されていた。


「シュリ、あと一分以内に敵のパワードスーツが正面のドアか防弾シャッターを突き破って突入してくる。

 ここはもう持たない!

 足止めの地雷を設置しろ!

 設置ポイントは私がレーザーポインターで指示する!」


 シュリは20個ほどの吸着地雷を柱から取り出し、両腕に抱え込む。

 マサコはレーザーポインターで最初の設置場所を指定した。

 階段の段差の下、突入者からの死角である。

 シュリは素早く移動して設置を行った。

 吸着地雷が周囲の模様を認識して擬態を始める。

 マサコはコイルガンのカートリッジを交換しながらアントドローンの撃退を続け、合間に地雷設置個所を次々と指示する。

 シュリは全ての地雷を設置した。


「シュリ! 撤退だ!」


 マサコはフロアの自動ドアを開いて廊下へ走りこむ。

 シュリもすかさず後に続いた。


「テディ! フロア方面のドアのロックを!」

「フロアを封鎖します!」


 同時にあちこちから爆発音が響く。

 再びテディの館内放送が響く。


「不味いっ! 南館と北館を繋ぐ中央エリアに突入されたっ!

 北館を守ってるナオコとニミーが分断されて孤立した!

 地下シェルターのある東館へ行く道も防がれた!」


 ドアの窓からちょうど中央エリアの様子を伺っていたティアラが慌てて壁際に隠れる。


「皆隠れて! 中央エリアにパワードスーツが2体入り込んでいるわ。」

「どうしましょうティアラさん! ここを通らなければ地下道へ行けませんよ?」

「フロアから来るマサコちゃんと合流しても、二体のパワードスーツに無事に勝てるとは思えない……ほんと、どうしようかしら?」

「奴ら本当に俺たちを殺す気か?」

「当然でしょう!? 連中は常に目撃者を殲滅するのよ」

「ごめんなさい。皆さん。私のせいで」


 テディに同期してもらった館内監視カメラの映像の中で、シェルター内で俯くホステスを見ながらティアラが言った。


「謝るのはこちらかも知れないわ。うちの従業員が通報したのかも……。ん? 皆伏せてっ!」


 ティアラの叫びと共に全員が床に伏せる。

 直後大きな爆発音が二つ起こり、機関砲の鋼鉄を叩くような激しい射撃音が中央エリアから響いた。

 物音が一時止んだタイミングでティアラが再びドアの窓から中央エリアを覗く。

 そして壁のパネルを操作し、ドアを開けた。

 中央エリアでは二体のパワードスーツが破壊されて煙を上げていた。

 そしてその傍に今では旧式化して生産が終了している前世代のパワードスーツが機関砲を装備して佇む。

 パワードスーツのフロントパネルが開き、ホステスが現れる。


「アイちゃん! 来てくれたのね?」

「ティアラちゃん、お客様達は無事?」

「今のところは大丈夫よ。助かったわ!」


 フロアから退却してきたマサコとシュリも合流する。


「アイ! ナイスだ!」


 再びテディの館内放送が響く。


「地下シェルターの前にまでアントドローンの集団が押し寄せてるのでドアを封鎖したわ!

 もうこれ以上危険に晒すリスクは回避したい!

 シェルターをこのまま移動させて地下水路経由で逃がします!

 私達は別な手段で道を切り開かないといけない!」


 ティアラが怒りをあらわにして叫ぶ。


「ちょっと! テディ! あたしたちはどうなるの?」

「何とかするのよ! 何とか! 私も立場は同じよ!」


 カムイが銃弾を装填しながらマサコのほうを向いて尋ねる。


「どうやってこの危機を切り抜けるか……軍曹殿の意見を聞こうか?」


 マサコは片手を壁に当てた。

 壁のカバーが開き、陳列された熱小銃やパルスレーザーライフル、熱線銃が露わになる。


「戦場で重要なのは研ぎ澄まされたセンサーでの観察、状況把握だ。

 テディ、私へのカメラ映像の同期を続けろ。

 活路はあがく努力を放棄したものではなく、野獣のように見て、聞いて、匂いを嗅ぎ、変化の苦痛を惜しまない者が切り開く。

 ……テディ、上空の北北西向きの監視カメラを拡大しろ」


「拡大します。……高速で接近する飛行物を確認、ホバーカーではない……。

 人型……あれは、ノドカちゃん!」

「元空軍特殊部隊のサイボーグ、フライソルジャーのエースのご登場だ。

 キーパーソンが揃った。

 ……これから活路を切り開く!

 全員武器を持て、そして時が来れば私に従い、全力を振り絞れ。

 生死を最後に分けるのは……」


 マサコはトリプルバレル・コイルガンを構え、パワードスーツの侵入してきた壁の穴に向かって射撃した。

 顔を出した二人のブラックアーマーに身を包んだ兵隊がコイルガンにアーマーごと貫かれて倒れる。

 アイは自分の乗っているパワードスーツのハッチを閉じて向き直る。


「必死さだ」

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