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2115年、アンドロイドの救世主  作者: レブナント
ACT6 クラブ音音襲撃事件
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第四話「アントドローンの猛襲」

 VIPルームの巨大スクリーンに別の部屋の映像が映し出された。

 薄暗い部屋の全面がディスプレイで埋め尽くされ、中央の高台にリクライニングシートと操作端末が密集する構造である。

 チーフオペレーターと思われるホステスがあちこちのパネルを操作している。

 そして下の座席に座る別のホステスへと慌ただしく指示をしていた。

 ティアラがマイクで話しかける。


「テディちゃん! これは只の停電なの?」

「停電じゃないわ。周りの建物に変化が無い。

 クラブ音音への電流供給だけが止められたのよ」


「何? まさか電気代払ってなかったとか?」

「そんな訳ないでしょ。……屋外カメラN1、N2、S1、E1、W1全て拡大! 何てこと……」

「どうしたのよ?」


 テディと呼ばれたホステスは無言でパネルのスイッチを押した。

 VIPルームのスクリーンにいくつもの屋外カメラ映像が並ぶ。

 東西南北全ての方向から黒で統一されたアーマーを付けた兵士達が銃を持って押し寄せていた。

 さらには全方位に各2、3体の巨人のような中規模パワードスーツが歩み寄ろうとしている。

 テディはマイクを掴んで館内放送で叫ぶ。


「コードレッド! フロアのメンバーはお客さんを地下シェルター避難誘導して下さい。シークレットサービスチームは総員戦闘態勢!」


 黒装束ホステスの一人の顔がモニターに映った。

 フロア入り口でカムイ達を迎えたホステスである。

 そのホステスは拳銃を片手に構えながらヘッドセットのマイクに叫ぶ。


「何が起こったの?」

「多分VIPのお客様目当てね。総勢100人以上の兵隊と、20体ほどの軍用パワードスーツに包囲されてる」


 巨大なトリプルバレル・コイルガンを構えたホステスがフロアの柱に隠れながらテディに通信する。


「敵の映像の同期を」


 ホステスのグラスにカメラ映像が同期された。

 キョロキョロと周囲を見渡してトリプルバレル・コイルガンのチェックをしながら後退し、隠れる位置を変えた。

 そしてマイクに落ち着いた声で話す。


「相手は民青党内閣直属の機密部隊、ハンニバルズだ。

 目撃者は全員問答無用で消す。

 取引が通じる相手じゃない。総員、全力での戦闘準備を!」


 やり取りをVIPルームの巨大モニターで見ていたカムイは半ば呆れながらティアラに尋ねた。


「ハンニバルズなんて軍事マニアの俺ですら初めて聞いたぞ。

 というか、彼女たちはホステスなんだろう?

 何でこんなに迷いなく対応してる? 彼女は何者なんだ?」

「あの巨大な銃を持った彼女は、マサコちゃん。前内閣直属特殊部隊、火車の軍曹よ。ちなみに火車はNINJA部隊として諸外国に恐れられ、隊員は全員が肉体改造をしてるの。

 薬物強化で短時間超人的な力を発揮するわ」


 モニターに映るマサコと呼ばれたホステスはポケットから小さなカプセルを取り出すとキャップを外し、露出したピンを自分の首に突き刺している。


「……」

「素人の女の子も多いけど、軍事各方面のエリートも多数在籍しているのよ。

 この店はトラブルには慣れているわ。

 ただ、ハンニバルズなんて大物を呼び込んだのは初めてよ。

 私の趣味の……代償は大きかったわね」

「ごめんなさい、私のせいで……。彼らは私が目的なんです。

 私が出ていけば……」


「それは駄目よ。ハンニバルズは痕跡をすべて消す。

 貴方が出て行っても何も変わらないわ。

 そしてなにより、クラブ音音はお客様を絶対に守る方針なのよ」


 突如店のあちこちでガラスの割れる音、薄い金属板の破壊音が響き渡った。

 館内放送でテディの声が響く。


「建物の全方位の窓やエアダクトからアントタイプの歩行制圧ドローンが侵入! 皆気を付けて!

 列を作って無数に入ってきてる。

 兵装は……対人用キャンディニードルガンを確認!

 戦えない従業員は絶対に前面に出ずにドアを封鎖すること!

 一発貰えば激痛と麻痺で動けなくなるわよっ!」


「ちぃ、情報の暗号化と退避は済んでる?」

「はい。ティアラさんの世界各国の分散サーバーに退避済みです。

 ただ、今は通信が出来なくなっているのでチェックが出来ません」


「オーケー。後は地下の秘密通路から逃げれるわ。皆注意しながら付いてきて」


 ティアラとちぃがVIPルームから歩み出て左右を確認する。そして小走りにメインフロアの方へと走る。

 P-99ナイトバーストを構えたカムイもVIPループから飛び出した。

 不意に廊下の5メートル後ろの天井のエアダクトのカバーが床に落ち、一体のアントドローン、蟻の形をした体長30センチほどの機械が廊下に降り立つ。

 カムイは即座に射撃して粉砕した。

 だが次々と天井から落ちてくる。

 何体ものドローンを拳銃で打ち砕きながら、突き当りのドアから様子を伺うティアラに振り返って叫ぶ。


「まだか? こいつ等きりがない、打ち損じたらアウトだぞっ!」

「いいわっ、ついてきてっ!」


 ティアラが壁に手を当てるとドアがスライドして開いた。

 ドアを通り抜けた先はメインフロアである。

 全ての窓ガラスに防弾シャッターが降り、ホステスのマサコが巨大なトリプルバレル・コイルガンで天井の4つのダクトの穴、壁際の3つのエアダクトから湧いてくるアントドローンを正確に粉砕し続けていた。

 マサコはティアラとカムイの方を一瞬振り向いて叫ぶ。


「急げ! もうそろそろハンニバルズ本体が強行突入してくる頃合いだ!」

「急ぎましょう!」


 ティアラが走ってフロアの反対側の扉へ向かう。

 背後の廊下のドアが閉まり、拳銃を抱え上げてリロードしながらカムイも走る。


「はぐっ!」


 マキは喉を何かで撃たれていた。

 天井のダクトからちょうど射線が通っており、アントドローンがマキの喉を狙撃したのである。


「ちくしょうそこかっ!」


 マサコが天井のダクト口付近にコイルガンを乱射した。

 小さな爆発と共に破片が飛び散り、3、4体のアントドローンが床に落ちる。


「大丈夫か、マキ!」


 マキは無言でうなずく。


「よし、行くぞ」


 カムイは喉に手を当てて出血を抑えるマキと一緒に、ティアラ達の後を追った。

 

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