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2115年、アンドロイドの救世主  作者: レブナント
ACT4 タカマガハラ・アルコロジー襲撃事件
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第二話「レールガン狙撃」

「カイ! もう直ぐアルコロジーの最上階層に着く。

 エレベーターを減速するよ! 気を付けて!」

「皆、手すりに掴まるんだ!」


 高速で動いていたエレベーターが急激に減速し、遂にアルコロジーの頂点階層へと辿り着いた。

 カイと仲間たちは即座にエレベーターを降りて広い通路を走る。


「きゃああぁ! 助けてぇ!」


 走るカイ達の左右には逃げ遅れて立ち往生していたアルコロジーの住人達が居た。

 全員銃を持つレジスタンスを見て慌てて頭を抱えて伏せる。

 カイが叫ぶ。


「もう少しだ! この先にあるガバメントブロック内の下二階に辿り着きさえすれば……」

「カイ! 大変だよ!」


「どうしたキット!」

「国防軍特殊部隊の最後の1部隊がアルコロジー最上層の強化透明アルミの天窓を破って突入した!

 ガバメントブロックへ向かう4方向からの通路の東から進んでる!

 カイ達からみて2時の方角だ!」


 カイと仲間は走りながら右前を見る。

 強化透明アルミの窓の外、数十メートル先の別の通路上空にホバーヘリが待機しており、通路内を走る特殊部隊隊員達が見えた。

 相手もこちらを視認して気付いて指をさして叫んでいる。

 隊員の一人が走りながらこちらに小銃を向けた。

 カイは周囲の一般人に叫ぶ。


「巻き込まれたくなければ全員その場に伏せてじっとしてろ!」


 一般人が怯えて全員伏せる中、レジスタンス達は姿勢を低くしてさらに走る。

 特殊部隊隊員の小銃から放たれたフレシェット弾が周囲の壁や窓に次々と穴を開けていく。



 通信タワーの連絡路天井でレールガンと共に伏せるデフィは走るカイ達を捕捉していた。

 ハンドシグナルで通信を行う。


「ターゲットを確認した」

「カイ以外の仲間を撃て」


 しばらく沈黙するデフィだったがさらにハンドシグナルを送る。


「大勢の一般人が周囲にいて巻き込む恐れがある。今は不可能だ」

「分かった。そのまま待機しろ。

 だが少しでも撃てる瞬間があれば……狩れ」

「ラジャー」


 カイ達は通路を通り抜けて遂にアルコロジー中央最上部に位置するビルディングブロック、通称ガバメントブロックに突入した。

 文字通り政府の重要施設が密集する区画である。

 本来はアルコロジーには資材搬入用の直結エレベーターが中央に配置されることが多い。

 だがタカマガハラ・アルコロジーはこの区画を作ることを考慮して設計されており、テロリストの侵入を阻む意図で地上からここまでの直結エレベーターは存在しないのである。

 カイ達が幾つもの動く歩道やエレベーターを使用して迂回を繰り返して登ってきた理由はここにあった。

 本来は侵入など絶望的な要塞の本陣なのだ。


「カイ! もう無理だよ!ガバメントブロック主要通路を特殊部隊が先に抑えた。

 下二階への階段へ向かうには特殊部隊が待ち構えるT字路を横切って抜けないといけない!

 隊員のうち二人がオートエイム機能付きパワードアーマーを着てマシンガンを装備している。

 撃ち殺されるぞ!」

「…………」

「カイ!」


 後ろを走りながら話を聞いていた身体強化アーマーを着た仲間がカイを呼ぶ。


「藤木、何だ?」


 藤木と呼ばれたその男は手に持つ大砲のような武器を掲げて無言でうなずいた。


「藤木……」


 カイはしばらく無言だったが強い意志の篭った声で叫ぶ。


「このまま下二階へ向けて突入する! ……藤木、頼んだぞ。

 君は偉大な英雄の一人として後々まで語り継がれるだろう」


 T字路に到達し、藤木が大砲のような銃を構えて右の通路の先で列を作って待ち構える特殊部隊の方に大砲を向けてスイッチをアクティブにする

 大砲には赤い電飾のラインが点灯した。

 そして真っ先に飛び出した。

 

「うおおぉぉぉーーーーー!」


 叫ぶ藤木に向けて集中砲火が浴びせられる。

 だがその銃弾を尽く、藤木の2メートル手前ほどで空中で弾いた。

 小型のイージスガンである。

 藤木の後ろをカイを先頭にレジスタンスが駆け抜けて通路の先にある階段へと駆けこむ。

 銃とマシンガンの斉射が続けられる中、隊長と思われる人物が一人の隊員に指示を出す。


「パルスレーザーライフルだ」


 頷いた隊員は隣でマシンガンを連射するパワードアーマー兵士の背中のバックパックから大型の小銃を取り出すと構えた。

 キュィーーンと音がしてエネルギーがチャージされ、銃に備えられたホログラムスクリーンのメーターがマックスになる。

 そして次の瞬間、高速で瞬くパルスレーザーが藤木の全身のいたるところに浴びせられた。


「ぐあっ、ゴフッ、オググ……」


 体の条件反射でイージスガンを横へ反らせてしまった藤木は全身を穴だらけにされ、さらにはミンチ状態になる。

 隊長が指示を出す。


「進め」



 カイ達は階段を駆け下りると5つほどの厳重な扉を潜る。

 キットがハッキングして操作しており、走るカイ達の眼の前で自動的に開いて通り抜けると同時に閉じていった。


「カイ! 遂に辿り着いたね!」

「ここからが本番だ」


 目の前に並ぶ端末とディスプレイ、計器類を走りながら確認したカイは、葉巻サイズの穴が二つ開いた機材の前で立ち止まる。

 そして胸の内ポケットから取り出した、穴と同じくらいの大きさのガラスで包まれたデバイスを挿入した。

 ディスプレイに文字が表示される。


【ソフトウェアミキサー:『断片』を検知しました。最高度暗号化デバイスです。識別を行います】


 カイの仲間たちが銃を構えて閉じられた扉の両端に立つ。


「キット! 窓のシャッターを念の為に閉じろ」

「分かった!」


 カイ達のいる部屋に重厚な金属製のシャッターが音を立てて降り始める。


【ソフトウェアミキサー:『断片』のヘッダ情報を確認。プログラム名『P-X』 総数2 現在の数1】


 カイは先ほど挿入したものと同じ形式のデバイスを今度は別のコンピューターに挿入した。

 そしてキーボードを叩き、幾つものケーブルを装着して通信する。


「キット、準備が出来た。頼む」

「メインサーバーへの接続を確認。もう片方の『断片』を探索中……。

 さすがだよ、こいつは手間が掛かりそうだ。

 こんな複雑な構造は初めて見る……カイちょっと時間が掛かりそうだ」

「どのくらいだ?」

「分からないよ。勿論最善をつくすけど予想がつかない」

「急いでくれ!」


 突如パコンと音がして天井のエアダクトのカバーが外れ、音を立てて床に落ちた。


「しまっ!」


 エアダクトからドローンが飛んで降下し、一瞬ぐるりと見回す様に回転した。

 そしてドローンは爆発し、周囲に無数の液体を撒き散らした。

 液体はカイとその仲間たち全員の体に飛び散って、無数の小さな斑点として染みこんだ。


「畜生、やられたぁ!」

「まずいぞ! ナノドローンだ」

「…………」



 通信塔の連絡通路天井。

 デフィはバイザーで無数の動く光点を確認していた。

 銀河のように散らばる光点は部屋の形を示し、人型に散らばった光点は揺れ動く。

 ハンドシグナルを送る。


「こちらオウルβ。ターゲットを3人確認した」

「よし、撃ち殺せ」

「しかし全員生身の人間でパワードスーツのようなものは着ていない。

 オーバーキルだ。

 生身の人間を狙ったレールガン狙撃は国際条約に違反している」

「これは命令だ。撃て」


 デフィはハンドシグナルで中指を立てた。

 最新鋭のハンドシグナル翻訳機はどんなサインも的確に翻訳し、音声情報として送信する。


「強烈にお断りします」

「オウルβ! お前は只の末端の隊員だっ! 自己判断はするなっ!

 セキュリティレベル規定でお前には知らされていない情報が多々あるんだ。

 目の前に居るテロリストは数千万人、数億人の命を危機に陥れる可能性がある。

 そして今は一刻の猶予もない。

 お前一人のワガママで隊員を強行突入させて仲間を死なせたいのかっ!

 オウルα、クロウα、クロウβ狙えるものは居るか?」

「射線に一般人密集エリアがある。移動の必要がある。数分掛かるだろう」

「同じだ」

「同じだ」

「背に腹は代えられない。他の隊員に撃たせる。例え十数人の一般人を巻き添えにしても構わん」


 デフィはハンドシグナルを送った。


「了解した。狙撃する」



 カイ達の居るサーバールームにて、突如壁に穴が開き、一人の仲間が炸裂した。

 部屋中に肉片が飛び散り、仲間は頭と手足を残して胴体は形すら残さず消滅した。

 カイは最初に差し込んだデバイスを抜き取って通信する。


「キット……。残念だ。もう手遅れだ」

「まってよカイ! もうちょっとなんだ……多分……」


 カイは手に持ったデバイスのスイッチを押す。

 デバイスから煙が立ち上り、中の溶液や半透明の青色のプレートが見る見る黒く染まっていく。

 続けざまの二発目の狙撃で、もう一人の仲間が肉片と化した。


「キット……ワン達を頼む。 ……そして俺はお前たちを信じている。

 ……キット……託したぞ…………」

「カイーーーッ!」


 3発目の狙撃がカイの下腹部に命中。

 カイの体が炸裂し、鎖骨から上の体がゴトッと地面に落ちた。

 直後にサーバールームのドアが破壊とともに開けられて特殊部隊隊員が雪崩れ込む。

 隊長はカイの死体の近くに歩み寄り、床からデバイスを拾って見つめる。

 既にデバイスは真っ黒になっていた。

 隊長は首に掛けたデバイスを操作して通信する。


「彼らの持ってきた『断片』は既に完全に抹消されていました」

「……せっかく張った罠が無駄になったか……。カイはどんな状態だ?」

「残るのは手足の先と、首から上だけですね」

「急いで回収しろ。新鮮な状態ならブレインスキャナーにかける価値はある」

 

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