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第二職業を取る時に、最初に選べる職業にプラスして最初に取った職業の上位職業というものを取る事が出来るようになる。『戦士』であれば上位職業は『重戦士』『軽戦士』『戦士長』。それぞれ異なる恩恵にステータスの上昇率を見せるも、結局は戦士の延長線上でもある。要するに、もしステータス上昇の恩恵がマイナスであれば、その数値も強化される。
別に上位職業を取らずに、初期職業ばかりをとってもいいが、その上位職業もまたレベルを上げて第三職業、第四職業と取っていく内に更なる上位職業が出て来るため、普通は得意な部分を伸ばすためにも職業は基本的に上位職業を取って行くのが普通であった。
ただ先程言ったように、俺の様に初期職業ばかりを取るものも居るが、それでも一つは上位職業を取る。何故なら、上位職業を最大レベルまで上げると、範囲効果のあるスキルが解放されるからだ。『魔法使い』であれば円状に広がる範囲魔法攻撃が。『戦士』であるのならば、直線状に攻撃を放つ斬撃の範囲攻撃が解放され、モンスターとの戦いをより楽にしてくれる。
では俺が取った『村人』の上位職業である『農民』は如何か。実は農民の場合は5レベルで範囲効果のあるスキルが解放され、それ以降スキルを取得せず、そこからステータスの上昇率が馬鹿みたいに上がったりするのだが。それは置いといて、その覚える範囲効果スキルというのが『収穫物収集』である。
広範囲に落ちたドロップアイテムを、そのスキルの範囲内に落ちているアイテムを一度に集めるスキルであり、この対象はドロップアイテム以外にダンジョン内に設置された宝箱や、農耕で育った実系アイテム等も対象にとり重宝していた。
後半期の離れていったプレイヤーを呼び戻そうと、様々なアップデートを、詳しく言えば新アイテムや職業の実装。攻撃エフェクト等の増加等、運営が行った。その際にアイテム取得方法も変えられていたのである。
昔のアップデート前のものは、只々何々が手に入ったというメッセージが流れるだけであったのが、この時から地面にドロップアイテムの画像が表示されるようになり、それに触れなければ取得できない様になっていたり。パーティーでのダンジョンアタック。特に範囲攻撃で大量にドロップアイテムが手には行った時とかはアイテムを拾うのがメンドクサイ時があると、知り合いが愚痴っていた事も知っていた。
なので年下だったが、その知り合いとパーティーを組んでダンジョンに潜った事もあり、その時の事を思い出してウッドタイガスだったものにそのスキルを使ってみたのだ。
「うわぁ…、便利っちゃ、便利何だけどさ。」
俺の掌にはウッドタイガスの牙と爪、そして木目の皮があった。現実化し、ゲームの様に一個しかドロップアイテムを落さないという訳では無く、どうやら無事な部分だけがアイテムとして取得できるようだ。実際ウッドタイガスがドロップするウッドタイガスの爪は4本1セットの筈なのだが、俺の掌の上には3本しかなく、さらに木目の皮も小さく辺も不揃いだ。
ただそれでも何処か生暖かく感じるのは、ついさっきまで相手が生きていたと知っているからであり、だからこそ何処かゲーム感覚であった俺はここが現実だと思い知らされた。すでに成人し、独り立ちした後でもあったからこそ、何処かの餓鬼みたいにゲーゲー吐いたりすることは無くとも、それでも気分的にはよくは無い。顔が引きつっているのが判る。
「はぁ、仕方ない。無いよりはマシだと思うか。」
だが現実を見ていない訳でもなく、ゲーム時代のアイテムがイベントリに残ってはいても、それでも廃人プレイをしていた訳でもないので、アイテムが限度値まであるという訳でもなく、少しでも温存できるようになるのならと、これからもこのスキルの恩恵に与る事とした。
ウッドタイガスの牙は錬金する事により、丸太というアイテムに変わる。この丸太を使って、様々な拠点を作成出来るようになり、更に爪は中級の鍬へと変化する事もあって、よくこのドロップアイテムを求めてウッドタイガス狩りをしたものだと、久々に錬金しようとしていた。
《きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……………………》
「なんだっ!?」
だが突如森中に響き渡る甲高い悲鳴。手の中にあるアイテムで錬金しようとしていたタイミングだったので驚いてしまった。アイテムこそ落としはしなかったが、慌てて周りを見回すも、木々は風に揺られ、擦れる葉の音しか聞こえてこない。モンスターの鳴き声等ではなく、あれは間違いなく人の悲鳴だった。
「まさか、聴力まで強化されているのか!?」
思い当たるのはそれ。もしかしなくても五感全てが強化されているのだろう。それをオンオフしているのだとすれば、錬金しようとして集中していたからこそ聞こえたものなのだろう。
「いけるって思えちゃうんだもんなぁ…」
斜め上を見上げ、木々の中でも一際高い大木を見つめる。現代日本人のその上別にアスリートでもない俺であったが、何故かあの大木の天辺ぐらいまでなら飛び上がれると思える。試に足に力を込め、垂直に跳び上がれば、悠々と大木を跳び越していた。
「やばっ、着地の事考えてなかったっ!!」
流石に、そこそこ高さのあるビルの屋根ぐらいまで余裕で跳びあがってしまうとは思ってもみなかったので、下半身にひやりとした風を受けつつ焦ってしまう。
「うおっ!…って当たり前か、自分で跳びあがったんだもんなぁ。」
ドサという音、湿り気を帯びていない部分を巻き上げながら、膝をクッションに使い俺は無事に地面に降り立つ。自身の身体能力で跳びあがったのだから、それも力を込めず軽くジャンプした程度であり、だからこそ跳びあがった高さに驚きはしたものの、着地出来るのは当たり前で、バランスを崩したとしても尻もちをつくぐらいであろう事は簡単に思いつく。
「よし、今度こそ。」
数回その場で跳ねながら、慣れてきたので再び足に力を込め、他の木々よりも高い大木の上の方の枝に向かって跳びあがった。
「よっ…と」
片手で細い幹に掴まりながら、意外に強度のある一番上の枝へと跳び乗って、もう一方の手で太陽の光を遮る様に周りを見渡した。見渡す限りの森。遠くの方には山脈が広がり、右手にその山脈の谷間から続く細長い河があった。距離があるからそう見えるだけで、近づけばもっと大きいのだろうが。
その河の傍。突如響き渡る爆音と舞い上がる粉塵。断続して聞こえる悲鳴のような、甲高いキャーキャーという声。間違いなくあそこだ。
「間に合うかっ!?」
異世界だと思われる場所。今居る場所すら何処だか判らないのだから、せめて何かしら情報は欲しい。ならば言葉が通じなくても、言葉があると思われる生命体を救っておいた方が何かと都合がいい。そう表向きの理由を作って、足場の枝を全力で蹴った。
グングンと景色は後ろへと流れていく。緑一色の眼下。時折木々の枝を足場に、いまだ鳴り止まぬ爆音の方へと文字通り飛ぶように駆け抜ける。怪我をするかもしれないという不安も、勢いがつきすぎた事による恐怖も無く、ただただ俺は現場へと急ぐ。
「よっしゃ、……って、はぁあ?」
最後の一歩を踏み出し、木々の間から見えた目の前の光景に、俺は思わず唖然としてしまった。




