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今俺の目の前にはガラクタと呼んで差し支えない物が並んでいる。薄汚れ所々欠けた女神を模した像に、巨大なシャワーヘッドの無い如雨露。途中から折れた菜箸の様な物や、小さな三角形の積み木の様な物まで、様々だ。
「こんな、もんか?」
「一応、言われた物はここに運びましたがね……、こんな物が役に立つんですかい?」
最後に運んできたそれほど大きくはないが、見た目以上に重い石を置いて一息吐いた。そんな俺に一緒に石を運んでいたこの町の町長は懐疑的な目で俺を見ていた。
「壊れているけど、一応俺って錬金出来るから治せるし。」
「しかし、いくらマジックアイテムとは言っても、これらは一般的な生活用品ですよ?」
「まぁ、そうだけどな。でも組み合わせ次第って奴だよ。」
女神の像は魔法と剣の世界ではありがちな、無限に水が湧き出してくるマジックアイテムだし、巨大な如雨露は入れた水を倍にして放出する倍加如雨露。途中から折れた菜箸の様な物は、摘まんだ物の重さをゼロにする反重力箸だし、見た目以上の重さを持つ石はとんでもなく重い漬物石、名はまんま重石。
王様飛蝗が引いた後、まだ無事だった家屋から壊れたこれらを運び出したのだ。
ちゃっちゃか錬金で治している間にどういった使い方をするか、まだ不安そうにしている町長に説明する。
「まず水の女神と倍加如雨露を使います。」
これは簡単。傾ければ水が溢れてくるという特性を利用して、倍加如雨露の注ぎ口に水が入るように固定。シャワーヘッドを取り除いた倍加如雨露もまたある程度傾けて置けばあら不思議、何時までも大量の水が……
「で、それをどうするんですか?」
「えっ?子供の頃やったことない?アリの巣を水攻めするやつ……」
木材で土台を作りつつ、その土台を王様飛蝗に食べられないように錬金で石に変える。王様飛蝗の巣は地面の下に作られるから結構有効だったりする。
「しかし、運ぶのは……ああ、アイテムボックス持ちでしたね。」
「そう、それに設置は反重力箸でやればいい。箸の使い方には慣れてるし。」
「鬼ですからね……」
鬼は箸文化だ。俺の鬼の特徴である角を見てそう判断した町長。策は他にもあり巣穴を塞ぐのに重石を使う事にする。同じく反重力箸で運んでやればいい。
「巣、探すの苦労しそうですね……」
「……そうなんだよな。一応打開策はあるけど……」
俺の視線の先には植木鉢に植わった植物が。キングオニオンの苗だ。温度管理が必要なキングオニオンを育てる為に部屋の一室を借りて、打ち捨てられた植木鉢で育てているのだ。
このキングオニオンを錬成すると、混ぜ合わせる物でいくつかの薬に変化する。その代表格にとある毒草と混ぜ合わせる事で出来る王様団子と呼ぶものがある。
正確にはお坊さん団子というネタアイテムであり、モデルはホウ酸団子。所謂ゴキブリ団子だ。このお坊さん団子を食べた生き物は強制的に絶食状態になる。そしてその状態で他の食べ物を口にした瞬間、胃の中の物を全部吐き出してしまう拒食症状を発症してしまう。
この団子の凄い所は、例えば一匹の王様飛蝗がこれを食べ毒状態になり絶命すると、その絶命した王様飛蝗を食べた他の王様飛蝗にも同じ症状が出てくるところだろうか。
王様飛蝗だけではなく、鋼鉄蟻と呼ばれる体表が鋼鉄で出来た蟻の魔獣や、ブルーハワイローチという、何でその色になったと言いたい明るい真っ青な巨大なゴキブリの魔獣にも効果があるがまぁ今はそれは置いておこう。
自然物で作られた為に地面に置いておけば微生物が分解し無害なものに変えてしまう。死んだ微生物もまた植物の栄養と変わり、またしかし植物にとってはこの毒素を分解する事が出来る為、その植物を他の生物が口にしても問題はない。
「それでも作れる数に限界はあるけど……」
「できれば防衛用にも欲しい所ですね。」
いっぺんに育てられる数は植木鉢の数の事もあり、それほど多くはない。錬成する為に俺が作れる数にも限界はあり、巣に到達する前になくなれば俺達の方がピンチとなる。
「今は出来るだけ数を作るしかないなぁ。」
「私達にも出来ればいいんですが……」
「教えた所で錬金が出来ると言う訳でも無いし、まぁ今は耐えて耐え抜くしかないなぁ。」
「そうなりますね。」
錬成しながら町長と話していれば、下からシヤさんの時間だという声が聞こえた。
「あー……、うん、寝てくるわ。」
「ええ、すみません。おやすみなさい。」
王様飛蝗が引いている時間はそれほどない。一休みしなければ昼夜問わずで襲い掛かってくるため、疲労で動けなくなる。すでに少々疲れが貯まってきてはいるが。
俺は眠る為に一回の寝室代わりにしている部屋へと欠伸を噛み殺しながら向かった。




