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「どうしても無理っすかぁ……」
「すみません、これでもお客様に無理言って出来るだけ詰めて貰っては居るんですが……、急な祝祭だった為に、多分他の所も同じような感じだと……」
ガヤガヤと宿に併設されている酒場兼お食事処の喧騒も、それ以上に騒がしい外の喧騒すらも、今のキヤラには恨みの対象ではないだろうかと言える程落ち込んでいる。何とかシヤさんと合流し、慌てて正門まで駆け抜けたのだが、俺達が正門に着く前に正門から魔王軍の先遣隊が到着してしまった。門は無情にも俺達の目の前で出入りできなくなってしまったのだった。
どうしようか考える前にまずは落ち着こうと宿屋に向かったのだが、最初に向かった宿屋にはすでに人が詰めかけていた。早馬を見た人々、特に行商人が宿屋に詰めかけたのだ。
外では屋台が立ち並び、先程まで花火が空中を彩っていたり、大通りを魔王軍の兵士がパレードしていたりしていた。商人にとっては儲けるチャンスであり、荷物を宿屋に預け外で屋台を開いている。
はぁと溜息を吐くキヤラ。俺とシヤさんの方を向いた。目がどうしましょうと言っている。コッケイオウにはティムした時に繋がった意識体で連絡を入れ、少しの間自身で餌をとってもらう事になった。
「取り合えず、何か腹に入れようぜ。」
「そっすね。……つっても、ここの食堂は満席みたいすっから、屋台のでいいすか?」
「そうだな。」
寝る場所がないのは困るが、だが焦っても仕方がない。取りあえずは腹ごしらえだ。宿屋の食事処は混雑しているし、同じ混雑でも屋台の方がまだゆっくり出来るだろうと俺達はその宿屋を出た。
「にしても困ったな。」
「すっね。一応知り合いにもあたってみたんですが……、商人系は全滅。屋台で忙しいそうっす。」
「実家の方は、あまり目立ちたくはないしなぁ。」
焼きそばの様な食べ物を食いながら、同じくお好み焼きの様なものを細長いパンに挟んだものを食っているキヤラに話しかける。
「はぁ、寝るトコねぇ……」
「いざとなったら道具屋でテントでも買ってきましょうか?」
「んで、公園にでもってか?そりゃ最終手段にしとこう。」
ゴールデンアップルドロップを舐めているシヤさんの言葉に、それすらも視野に入れなければいけないなと考える。
「同じこと考えてなけりゃいいっすけど……」
「不吉な事言うなよ……」
宿屋の現状を考えるとありえそうで、テントすら売り切れとか。勘弁してくれよう?
「…あの、もしかしてキッシュさんですか?」
「うん?…ああ、昼間の!」
「ええ、覚えていてくれて嬉しいですわ。」
ガックシと肩を落としていると後ろから少女に声を掛けられた。それは昼間助けたカイラクスだった。
「どうかなさいましたか?」
「ああ、いや、いきなりの祝祭で宿がどこもいっぱいでさ。」
「まぁ、それはお困りでしょう。それならばどうです、お礼もかねて私の家に泊まられては?」
事情を話せば手を胸の前で合わせ小首をかしげ、そう提案してくる。
「いや、ご両親とかに悪いだろ?」
「ご心配なく、御父上も御母上ももう亡くなっておりますから……」
「悪いっ……」
「いえ、両親共に寿命で亡くなりましたし、家老とか昔から仕えてくれている人も居りますから。」
困ったように笑うカイラクス。寂しい様子は少しあるが、それも俺が質問したせいで思い出したって程度の様だ。本当にもう吹っ切っているようで。見た目通りの歳ではないようだった。
「なら、世話になろうかな?」
「ええ、ぜひいらしてください!」
「いいかな?」
「うっす。俺は賛成っすよ?迷惑になりそうなら今日一晩だけでもいいんすから。」
「私も大丈夫だ。」
成り行きを見守っていたキヤラとシヤさんに声を掛け、了承を貰いカイラクスに返事を返そうと前を向くと……
「来られるのですね!お泊りですわ、友達とお泊り会ですわ!」
グイッと俺の手を取りヘタすりゃ触れてしまいそうな距離で目をキラキラさせていた。一目でわかる程喜んでいた。いたんだが、何か違和感が……
とりあえず寝床の心配はしなくてもよさそうだった。




