7-3
「ほぅ、結構な質と量だな。」
誰だって褒められれば頬が綻ぶもの。今現在の俺の顔は笑顔だろう事は判り切っている。それは持ってきた食料の内の一つであるバンカラナスを手に取りながら、キヤラに案内された先の食堂の主人の言葉だ。
「でも、よくこれだけの量を採れたな。この辺は今年は不作だったろうに。」
「え゛!?」
「いや、あのっすね……」
だが続く主人の言葉に顔が引きつり言葉に詰まる。キヤラが言い訳をしようとするがそれより早く主人が言葉を発した。
「まぁいい。こっちとしては良い物が手に入りゃ商売繁盛。何処で作られたかなんて気にするもんじゃねぇな。」
「あ、あはは……」
完全にとは言えないかもしれないが、それでも俺達がこの近辺に住んでいない事に気付かれてはいる。この作物もこの辺で出来た物ではなく、豊かな土壌しかないとも言われる王都と前線の間ぐらいの物だとも、多分だが気付かれているのだろう。出なければ何処で作られたかなんて言わない。
「物もいいし、これだけの量だ。うちも厳しいけど、色は付けさせて貰おう。」
「あ、ありがとうございます。」
これは注意されたと考えたらいいのか?多分、俺達がキヤラの知り合いと見て、さっきの様なやり取りをしたんだと思うけど。王都に住む住人が魔獣のレベルの高い危険な場所で、しかも何処にあるのか判らない隠れ里を見つける事なんか出来ないとは思うけど。
「……次からは少し少なめに持ってきますか?」
「そうだな。」
シヤさんの言葉に、籠の中に入れる食料を少なめにイベントリから取り出す。一応、念の為だ。
「次はこっちっす。」
籠を背負ったキヤラが先導し、細い道の先を指差した。
「でもこういった所何件も知ってんの?」
「そりゃ、そうすよ。家出た直後とか、やっぱり王都周辺で準備するっすよ?それに元貴族っつたって貧乏なんすよ?幼馴染がやってる店だってそれなりにあるっす。」
貧乏だからこそ、そういった幼馴染の店で安く大量買いする為に、その幼馴染の店にとってもお得意様となる。だからこそ、その店を継いだかつての幼馴染の店もそれなりに知っていると言う。それなりの時間、王都に帰ってきていないから潰れたり移店したりした店も当然あるが、キヤラは外で遊ぶ事の多かった為に、友達百人を遥かに超える数の友達が居たそうだ。全員が全員店をやっている訳でも無かったが、それでも節制の為にそう言った友達が多かったのも事実なのだそうだ。
「ここっす。ヤルーキィ?入るっすよっ!」
二件目は宿屋。見た目は少々寂れているが、中に入ればそれなりに繁盛していた。
「おお、キヤラじゃねぇか。久々だな。」
体格のいい人好きしそうな笑顔のおっちゃんが出て来た。キヤラの片をバンバンと叩き、久々の再開を喜んでいた。
「そんで、今日はどうしたよ?」
「実はすっね……」
再開を一通り喜んだ後、宿屋のおっちゃん本名ヤルーキィ・ナァイサが本題を切り出し、それにキヤラが答えている間、俺は外の喧騒が気になった。
細い道の先、少しばかり治安が悪い場所。悪いと言っても本通りから離れているから子供の声が騒がしいと言ったぐらい。だからこそそれ程珍しい事ではないだろうが、それでもやけにさっきから外から漏れ聞こえる声が煩い。
「何だ?」
「如何しました?」
「あっと、ちょっと外見てくる。これ宜しく。」
「あっ、はい。」
一度気になれば、どうしても気になってきてしまい、シヤさんに籠を頼んで俺は外へと出た。出た瞬間、俺の横腹に突撃してきたものがあった。
「す、すまんっ!!」
品の良い仕立ての動きやすそうな服を着た少女。見た目歳の頃は10歳前後だろう。そんな少女が一言謝り駈けていく。
「待ちやがれ、クソガキっ!!」
更にその後ろから、どう見てもよく門を通れたなといった風貌の男たちが怒りを露わに追いかけて行った。
「あー……、とりあえず厄介事でいいのか?」
仕方なしといった風を装って俺は少女と男たちの後を追いだした。




