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IN THE GAME ~勇者と魔王が戦争している異世界で俺は農耕する~  作者: yosshy3304
プロローグ 俺はゲームの中で『村人』する。
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1-4

(これで、またレベルは1かぁ。)


 今度はそれ程苦労する事も無いだろと目を開けてみれば、ステータス覧にありえない物を発見した。


 異形種族と言うのは、人種族と違い職業を取れない種族である。職業のステータス上昇やスキルの恩恵を受けられないのだ。但し、基礎ステータスが高く、またレベルアップでその種族ごとに決められたスキルを取得していく。だが俺の目の錯覚か、職業欄に『村人』そして職業レベルに15レベルというものがある。キャラクターのレベルは1のままで。


「はぁ?…………って、そうかっ!!」


 最初は混乱した。バグかとも思った。だがそこで不意に幾つか思い出した事がある。まず職業の説明欄だ。村人の説明欄の一部に異形種族にも村はあり、村人は居るみたいな記述はあった。職業選択の時には異形種は職を取れないのだからと本当に村に居る村人Aみたいなモブキャラの説明のようなものだろうとも思ってたが、もしかして人種族から異形種族に転生した時に職業村人は残ると言う事を指していたんじゃなかろうか?


 そして様々な攻略サイトが、このゲームの最大レベルは課金アイテムを使っても105にしかならないとされていながら、運営側は100以上と何時までも言い続けている事だ。一時期都市伝説で150まで上がるとNPCが囁いていたという話が上がった事があったが、もしかして運営がそれとなく情報を流していたのかもしれない。


「だと…、すると……」


 俺は見た目巨大な二足歩行のモグラ姿でありながら、速足で初期フィールドの中央ぐらいまで来ては、モンスターの姿を探し始めた。レベルは1なれど、異形種族の高い基礎ステータスが村人の全てのステータスに掛かるステータス上昇効果で高められており、更に長い事初期フィールドで戦ってきた経験から、レベルは1でありながらやや一方的に殲滅出来ていた。


「やっぱりかっ!!」


 すぐさまファンファーレがなり、レベルが1から2へと上がる。それに合わせて職業レベルもまた15から16へと上がっていた。上昇率も今までの計算通りの上がり方をしている。


「三回の転生に課金アイテム。ははっ、いつかの都市伝説かよ。」


 課金アイテムで5レベル足せば、最大までレベルを上げれば確かに計算上は150まで届く。それどころか最弱と言われていた村人の、もしこのまま計算通りのステータス上昇率を見せれば、少なくとも他の職業では追いつけない高みにまで登れる可能性が出て来たのだ。


「ソロで農耕も出来るっ、なんだよこれっ、あははは。」


 もう止めようと思っていたタイミングでとんでもない事を見つけてしまったこの気持ちを静める為に、取り敢えず俺は経験値を集める事にするのだった。


 それからの半年間、ゲームとしての人気は低迷し新規以外にログインしてくるものも少なくなってきた頃まで俺は、リアルで時間さえできればレベル上げに勤しんでいた。転生の書の人種族の人の書が投げ売りされていた事もあり、レベルが15に達した時を狙って転生を繰り返した。運良く異形種族の転生の書も手に入って、この頃になればガチャでも転生の書が販売されるようになっていたからだ。


 ストーリー攻略はする心算は無かったが、それでも最終フィールドにある町では土地を買う事も出来、そこで大農園を作る事も出来るからと、最低でもそこまでは行きたいと言う欲もあったからだ。


「これで最後の転生っと。……っえ!?」


 最後に手に入れた異形種族へと転生して、その能力値を確認。村人のレベルが45あることを確認した時に、もう一つ職業が追加されている事に気付いた。


 『ナイトメア』そこにチカチカと追加選択があることを示す点滅があり、そこをクリックし開くと、異形種族と人種族を選ぶよう文章が出てきたのだ。見た事も聞いたこともない職業なだけに、俺は慌てて中断セーブし、ログアウト。多数ある攻略サイトを覗いた。


 今まで気にしたことは無かったが、どうやら村人のレベル上限突破方法はいまだ解明されていない様だった。村人で始める人が少ないのと居てもパーティーでレベルを上げて第二職業を取る方法しかない様だった。しかも第二職業以降を取った後は、転生しても職業として村人が残らない様なのだ。もし残っていたら、今頃ちょっとした騒ぎになっている事も考えると、俺は運が良かったのかもしれない。


 だからこそ当然俺の知りたいナイトメアの職業についてなんか書かれておらず、少しの間だが俺は悩んだ。悩んだけど俺の目的は農耕生活。別にストーリー攻略や、俺ツエェ…をしたいわけでは無いのだ。そういったキャラを作成する事も出来るようにもなったから悩んだが、失敗したらその時はその時だと思い直し、改めてログインする。


 ログインした瞬間、目の前には職業選択を迫るウィンドウが開く。人種族の方は基本の使い慣れた人で良いだろう。ただ問題は異形種族の方で、最初に選択できる基本の10種族と、俺が今まで転生した異形種である巨大な二足歩行のモグラであるノームと、最後に転生しようとした頭に角の生えた黒い肌の偉丈夫。所謂鬼である『オーガ』が追加されている。


 まぁ、実際はどれでも良かったのだが、此処は最後に転生しようとしたオーガを選択する事にした。


 種族『人』は突出したステータスが無い種族であり、あえて他の種族と比べて利点を上げるのならば、攻撃の当たり判定や攻撃速度に影響を及ぼす器用さが高い事だろう。


 また種族オーガはHPや攻撃が他種族よりも圧倒的に突出しており、次いで防御に優れる種族だ。難点は器用さが低い事ぐらいの前衛職であるが、それでも前衛戦闘、特に壁役として優秀な種族でもある。


 基礎ステータスの平均値は、各ホームページに記載されており、そこからナイトメアという職業の基礎ステータスを推測すると、どうも選んだ種族である人とオーガの基礎ステータスの半分の値を足した値であるようだ。そして職業の部分にナイトメアが無くなり、種族がナイトメアになっている事にも気付いた。


「ナイトメアってハーフ設定なのか。どれどれって結構カッコイイっ!!」


 設定が終わった事で、ナイトメアのもっと詳しい説明文を見ることができる様になり、それによると、人種族と異形種族との相の子であることが書かれていた。どんな容姿をしているんだろうと、キャラクターの目線視点から頭上から見る俯瞰視点に換えて見てみると、其処に居たのはやや幼い容姿で細身の、しかし服の上からでも鍛えられていると判る肉付きをしたキャラクターが居た。黒髪で頭の耳の上あたりから真っ直ぐ天を指す角に、青い瞳。それに女性受けしそうな幼い目の端正な顔立ち、所謂イケメン少年が其処に居た。


「うわぁ、村人の補正でステータスも凄い事になってんなぁ。」


 ゲーム内のキャラクターの事だしと、自分が動かすキャラクターの容姿に少し恥ずかしく思いながら改めてステータスを眺めた。村人の全ステータスに基礎ステータス値から計算された上昇率を加える補正のお蔭でステータスがとんでもない事になっている。上昇率1035%というとんでもない数字。数字だけならば基本職の戦士に、戦士の上位職である『戦士長』を足せば、もっとも上昇を見せるステータス値であれば悠々と超えていく。だが、マイナス補正の掛かるステータスもあると考えると、全ステータスが等しく上がる村人がどんだけとんでもないかが判るだろう。


「これなら、しょっぱなから第二フィールド行けんな。」


 レベルは1ではあるがステータスが軒並み10倍になっている。しかも基礎ステータスが異形種族のそれ。半分とは言え低ステータスの村人と比べるまでも無く高ステータスであるのだ。十分に耐えることができる。


「うひょひょ、待ってろよ俺の農園よっ!!」


 もしゲーム発売当時であれば、フィールドで願望駄々漏れで笑い声を上げるイケメンが見えたかもしれない。だが幸か不幸か他のプレイヤーが居ない中、俺は第二フィールドに向かって走っていくのだった。

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