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次の日の昼頃。いや昨日というか深夜は過ぎてたから今日だろう。に風呂すら入らず寝たから体中ベタベタしながら起きた。まず風呂と朝飯ではなく、もう昼飯だな。と便所をすまして改めてログイン。すると一番に目が行ったのが、ステータスのレベル欄。
「うおっ、昨日は気付かなかったけど、11レベルになってる!」
ステータスの上昇率も上がって66%にまで上がっていた。この数字はそれぞれの特化職と比べれば、対して高くも無く、基本ステータスの差から自慢できるものでもないけど、なんだかすごく嬉しくなった。
「だ・け・ど!!今は先に『錬金』だな。」
そんな気分のまま、イベントリから『回復の種』と『薬草』を取り出し、掌の中で合わせるように重ねた。握りしめた掌の中から光が漏れだす。生産職、当然村人も生産職だ。にはマジックポイントを消費してアイテム同士を掛け合わせ、効果の高い別のアイテムを作り出す能力が基本として備わっている。それがこの『錬金』だ。
「まぁ成功すんのは判ってたけど……」
一番基本の錬金である以上判定は甘く成功率が高い。その成功率を上昇させる効果がある職業村人である以上、この程度の錬金では失敗はしない。握りしめていた掌を開けるとそこには、何処から現れたのか判らないビンに緑色の液体が入った『回復薬』があった。
「おお、っておい!!」
初めての錬金に感動していると何処からかファンファーレが鳴り響いた。レベルアップしたのだ。確かに錬金する時にも判定がある為経験値を取得するが、だからと言ってタイミングが悪過ぎる事に笑いがこみあげてきて、周りの何だこいつみたいな視線を無視して笑い声をあげて笑っていた。
そんなこんなで、モンスター退治をしながら休みが重なる日があれば徹夜で回復の実を育てる農耕生活が始まった。回復薬はオークションに出しても、店売りしてもそこそこな値段で売れる事もあって、一番安い魔物避けぐらいは買えるようにもなった。次の日が休みであれば少し無理をすれば大丈夫にもなって、少しだがレベル上げも楽になってきた。
休みの日はゲーム三昧だが、日常では学校帰りに友達と遊びに行き騒いでいる事もあって、ここの所遊んでばかりだなと自分でも少し心配になって来てたりするが、それでもこのゲームだけはやめられない。課金して便利なアイテムでも入手すれば楽になる事も出来るだろうが、それでもここまで無課金でやって来たんだから、出来る限り無課金でやって行きたいとも思う。
「おっ、レベルアップ。後二つだな。」
そんな事を考えつつ錬金していたら、レベルが上がっていた。ついに14レベルだ。あと二つ上がれば第二職業を取ることができ、ゲームの攻略も楽になるはずで、まだまだ初期フィールドから出る事は出来ないにしても後半の方まで出張ってくることもできる様にもなったし、もう少しだけ、もう少しだけとゲームにのめり込んでいった。
それでも今時のゲームには寿命がある。一昔前の名作であれば、その寿命は十年とも二十年は流石に無いか?とも言われていた。種類が少なく、またゲーム会社もそれほど無い時代の話で、次回作の出るまでのスパンが長く、また次回作とのコンバートも無く、次回作が出たとしても単品で楽しめたからだ。だが今は違う。様々な種類、ジャンルがあり、ゲーム会社も膨大で、人気作ともなればすぐさま次回作が発表。また次回作とのコンバートもある。だいたい3年持てばいい方であるとも言われる。
何故こんな話をしているかと言うと、俺は本格的にボッチプレイヤーになりかけているからだ。ゲームの攻略速度、それもメインストーリーに絞れば、発売から一週間も掛けずに攻略する人も出て来る。更には半年も経てば大体の攻略法もWikiに掲載され、各ホームページに攻略法が乗り、攻略本も発売される。
最初期のプレイヤーは、俺なんか見向きもされない程にレベルを上げ、最終フィールドに出向いているだろう。逆に今から始めると言うプレイヤーは、そう言った先人の残した攻略サイトを読み込んで、身内(友人も含む)とプレイするのが当たり前になってくる。
そんな中、村人という低ステータスキャラに拘りプレイしている俺は、最初の内は兎も角固定パーティーは組めない。何よりきついのはレベル16の壁と呼ばれる、レベル15からレベル16に上がる為に必要な経験値の大幅な上昇だった。初期フィールドで稼げる経験値はもっとも多く稼いだとしても一回の戦闘では10前後が限界。まぁ、普通に戦闘職ならばレベルが二桁に達したのならば、パーティーを組んで第二フィールドに移る。第二フィールドでは初期フィールドと打って変わって、いきなりモンスターの強さも上がるが、手に入る経験値の量も桁違いだから。
職業レベルはどんなに高くとも15レベルまでしかない。第二職業を取る為には基本職を15レベルまで上げた上で、もう一レベル上げる必要があるのだ。つまり16レベルの壁を越えなければ、俺の念願の第二職業は取れないのである。
「無理だろ、これ。どんなに無理しても後半年もかかんじゃねーか。」
単純に計算してみた。一日に獲得する事の出来る経験値量。それも錬金も農耕も、その間に攻めてくるモンスターも合わせても次のレベルに上がるのは後半年掛かる計算になる。しかも無理してこれだ。日常生活もある以上、更に時間はかかるだろうことは予測出来てしまう。
「やっぱ村人ではここらが限界かなぁ……」
村人の基本ステータスは他の職業と比べて、秀でた所も劣る所も無い代わりに貧弱で、その上昇率も平均しても精々戦闘職の半分ぐらいだ。15レベルに達しても上昇率は120%しかなく、例えばこれが戦士という代表的な前衛戦闘職ならば、もっとも秀でた所で上昇率は750%もあることから、どれだけ弱いかは判ろう。
「ただ、新しく初めてもなぁ……」
完全に時期を外してしまっており、戦闘職として作り直したとしても今更パーティーを組めるとは思ってもいない。もう、このゲーム止めるか?とも考え始めた所で、ピコンとレアアイテム取得音が鳴った。
少しでも経験値を稼ぎたくて、初期フィールドの最奥にある洞窟。所謂ダンジョン内でデカいモグラの様なモンスター『ノーム』を狩っていたのだ。一応村人でも15レベルにもなれば、初期フィールドでは無双出来てしまう。だからこそ少しでもリターンを求めて、この場所に潜っていたのだが。
「『転生の書』って、今回のアップデートで実装された奴じゃねーかっ!!」
『転生』最初の選ぶキャラクターの中には人種族と呼ばれるものが10種類。そして異形種族と呼ばれるのが10種類ある。この種族は基礎ステータスがそれぞれ異なっており、更にレベルアップした時の基礎ステータスの上がり方も違う。それらを選んだ後は新しくキャラを作り直さない限り種族を換える事が出来ないが、それを唯一可能にするのが転生という行為である。デメリットとしてレベルが1に戻ってしまう上、3回までしか行うことができないが。
本来ならば中間の町にある転生神の神殿でしか行えない行為であったのだが、運営が新しく作り上げたこのアイテムは、持ってさえいれば、何処でもこの転生を可能にしてしまう物であった。ただし手に入れるには対応するモンスターを倒し、更には低確率で手に入る複数あるレアアイテムの抽選に当てなければならず、いまだに手に入れたと言う話はそうそう聞かない。
「最後に神様からのプレゼントってか?」
村人でのプレイも限界で、農耕プレイは出来るとこまではやった。元々農耕がしたくて始めただけあって、ストーリーを攻略する気も無く、端的に言ってもう飽きはじめていて、最後に転生して第二フィールドぐらいは行ってみようかと思う。
「ノームって土の精霊の名前でもあるんだよな?粋な計らいだよな。」
農耕プレイをしていた俺にはあっている種族だろうと、村人15レベルが消えてしまう事は惜しいが、それでもどうせ止めるんだしと初期フィールドの最初の方まで戻ってきて、異形種族のノームに転生した。




