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IN THE GAME ~勇者と魔王が戦争している異世界で俺は農耕する~  作者: yosshy3304
プロローグ 俺はゲームの中で『村人』する。
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 職業村人のステータス値上昇の恩恵は全ての能力に掛かる。ただその上昇率が低い事、初期能力値が低すぎる事が問題だが、それでもレベルが7もあればその上昇率は28%。約三割もあり、ましてやレベルアップする事で初期能力値も上がる事でやっとこさ初期レベルの戦闘職並みの能力を手に入れる事は出来た。


「それでも初期フィールドで雑魚狩りとか。」


 愚痴りつつ、全ての基礎能力が高い事でダメージは押さえられ、更には狩猟速度もまぁまぁ。それでも安全マージンを考えれば初期フィールドを出る事は出来そうもない。友人は早々にパーティーに誘われ経験値効率のいい中級フィールドへと行ってしまった。レベルも言うまでも無くあっと言う間に抜かされてしまった。


「ボッチは、ボッチで今日も頑張るとするか。」


 ここまで来たんだからまた最初からとかは嫌だ。裏切った訳じゃないけど……それでも裏切り者の友人を見返してやると意気こんで、今までよりもまぁ雀の涙くらい?は上がった経験値取得速度を更に上げた。


「薬草採取ウマ―……」


 背中に初期モンスター、最弱で知られるデフォルメされたスライムの体当たりを受けながら、今日も俺は薬草採取に勤しむ。このゲームではこういった判定のある行動でも成功ならば経験値は取得でき、更にはモンスターの攻撃を防いだと言う事でそのモンスターを倒した時に戦闘経験値も取得できる。採取した薬草もGDに出来ると一石三鳥の行動であった。


「おお、レベルアップぅ!!」


 軽快な音楽と共に、頭の上にレベルアップと言う文字が躍る。これでステータスの上昇率も36%になり、初期フィールドの敵のレベルをもう一段階上げる事も出来る。ボッチだ何だと言いつつ俺はこのゲームを楽しんでいた。


「えっ、土地代掛かるの!?」

「そりゃ、当たり前だろ?フィールドに作るんならそれは自由だけど。ただ魔物避けは必須だぞ?」


 あの後薬草を売って出来たGDで鍬と種を買ってきた。と言っても一番安いやつだったが。ウキウキとやっと農耕出来ると農園までやって来たんだが、その農園で農耕するためにもGDが掛かると聞かされた。もうGDは残ってない。やけに自由度が高い受け答えするNPCに、何となく見下されたように感じつつガックリと項垂れる。


 魔物避けにもグレードがあって、一番安いやつすら買えず、またモンスター狩りの日々を送らなければならないのかと落ち込みそうになったその時に、そう言えば明日から三連休だった事を思い出した。


「……やっちゃいますか?」


 少なくとも学校の成績は悪くはない。こうやって連日ゲームに興じようとも、親が文句を言ってくることはない程度にはだが。そして明日からは三連休。だからこそ少し長めにログインして遊んでいたのだから。自身の手の中を見る。複数種ある種アイテムの内、その基本の中の基本『回復の種』が数粒。成長するまでに丸一日掛かるそれを見て、俺は覚悟を決めた。


 覚悟を決めたのなら準備しなくちゃと一度ログアウトする。被っていたヘッドセットを外し、そこらに無造作に転がす。夜食としてガッツリとインスタント類を食い漁り、トイレにも行った。栄養補助食品、ゼリー状のチューと吸うタイプのあれとカロリーメイトを持ち、水入りペットボトルを数本傍に置く。再びヘッドセットを被り直しログインした。真っ黒なロード画面を数秒見つめ、俺は再び村人になった。


 種を植える為にはまず専用の鍬で地面を耕す必要がある。この時、街中の地面は耕すことは出来ず、決まった農耕地しか耕す事が出来ない。それ以外ではフィールドならば、基本的に何処でも耕すことが出来る。イベント用の場所とか、ダンジョンの入口がある場所の様に耕すことが出来ない場合もあるのだが。俺は何時も薬草採取に来ていた、初期フィールドの少々真ん中よりの場所に来ていた。そして鍬を振り下ろす。


「おお、サクサク行く。」


 鍬のグレードは最低の物。だが振り下ろした感触は軽く、だけど地面は確りと耕していた。


「種をまき、後は24時間待つだけ。さぁ来いモンスター共!!」


 地面は真四角2×2マス分耕して、そこに五つあるうちの回復の種を一個だけ残して蒔く。ピョコンと双葉の芽が出た。種にはHP(ヒットポイント)が設定されており、このHPが成長時間が過ぎるまで残っていた場合のみ収穫できる。街中の農耕地ならば脅威が無い為に確実に収穫できるが、フィールドではモンスターの攻撃から種を守らなければならない。


 その為の魔物避けアイテムであり、この魔物避けアイテムはアイテムのグレードによって魔物を寄せ付けない時間が決まっている物だ。最底ランクの物であれば3時間程。最高ランクであれば12時間だ。だが俺は金が無い。だからこの種を自力で守らなければならず、だからこそ徹夜も覚悟して挑んでいる。暇なときは薬草採取すればいいだけだ。


「そっちには行かせないぞっ!!」


 ピョコンピョコンと間抜けな音をさせ、耕した部分へと向かってくるスライムを狩り続け、いつの間にかイベントリと呼ばれる所謂アイテムボックスを薬草で一杯にしながら、俺の一日は過ぎていった。


 そして丸一日後、俺は……空に向かってガッツポーズをしていた。一応トイレに行けないときの為に念のために用意していたペットボトルだったが、幸運にも使う事は無かった。畑とは呼べない畑だが、フィールドのモンスターはフィールドに作った畑を優先的に攻撃しに来るため、一度これを殲滅し尽くした後はリボーンするためのクールタイムの様なものが設けられていたからだ。その間にトイレに行った。


 いや、そんな事よりも今は掌の上にある『回復の実』の方が大事だろう。一番安い物とはいえ初めての収穫物。しかもこれだけの苦労をしたものだ。重さは感じない筈なのに、ずっしりと重さを感じられる様な感覚がある。だが喜ぶのは後にして、取り敢えずイベントリにしまい、ログアウトする事にした。興奮していた事もあったが、それ以上に眠気が襲っていたからだった。


 ログアウトした瞬間、頭部に被っていたヘッドセットをそこらに転がし、足元に散らかしたゴミを蹴とばしてベッドにダイブする。すぐさま俺の意識は落ちていった。

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