9話 赤星 芳雄との出会い
今回は過去のお話です。中学生の頃の悩みを思い浮かべてほしいですね。
俺が、赤星 芳雄と出会ったのは中学2年生の冬。
裏路地のゴミ置き場に、ごみのように捨てられていた芳雄。
帰り道の近道として裏路地を通っていたのだが偶然、血まみれの芳雄に会った。
赤い髪、ピアスをつけた耳、ボロボロな服、所々に出来ている内出血や切り傷の後。
かなり一方的にやられたのだろう。
普段の俺なら恐ろしくて無視して横を通りすぎるのだが、その頃の俺は自分のダメさ加減にやけになっていて、こいつも同じ境遇なのかと興味を持った。
「だ、大丈夫なのか?」
薄暗い裏路地に俺の声が響く。
ヤンキーがこっちをにらむ。
が、もう体を動かす体力もないのか興味がなかったのか知らないが、すぐ目をそらした。
少なくとも俺は殴られんだろう。
俺は誰かに愚痴を聞いてほしかった。
友達もいない俺には道で倒れているこいつにでも聞いてもらおうと勝手に話しかけた。
「何があったか知らないけど大変だったな。俺はさぁ、何をやってもダメダメなんだよ。勉強も赤点になりかけるし、特技もない。進路希望調査だって俺は何を書いていいのか、いや、俺は何が書けるのか考えても考えてもわかんないんだ。」
ヤンキーは黙って目をつむっている。
「他のみんなは、工業高校に行ったり音楽専門や看護学校なんていう所も行ったりするそうなんだ。もちろん働きだすやつもいる。俺は何をしたらいいのかな?相談する友達もいないし、先生からはお荷物扱いされてるし。」
だんだん目から涙が溢れてくる。
あぁ、見ず知らずのやつにだけどやっと言えた。
すると。
「フ.フフ..アハハハハハ!!!」
ヤンキーの笑い声が路地裏に響く。
こいつ笑いやがって! なにか文句も言おうとヤンキーをにらむ。でも、怒る気は一瞬で失せた。
ヤンキーも涙を流していたからだ。
「俺と真逆のことで悩んでいるやつがいるとは思わなかった。」
「どういう意味だ?」
初めてヤンキーと会話した。
ヤンキーの悩みも聞いた。
両親が教師で、いつも優秀な子供を演じなければいけない日々。
友達なんていうものは無く、毎日が勉強。
同級生からも腫れ物のように扱われ、中学生になると名門中学に入れさせられ中学二年に進学すると同時にグレていったらしい。
「俺は周りの期待される目が怖くて逃げ出した。」
「そうか。本当に俺と反対だな。」
「世の中には、お前のようなやつもいるのか。」
「お前のほうが、少数派だと思うぞ。」
ヤンキーといろんなことを話した。
他人から見れば、ヤンキーといじめられっこが裏路地で。
って感じに見えるだろう。だが、表情を見ると全く違った。
俺とヤンキーはお互いのことを押しつけあうように話し合い、自分との違いを比べながら討論していく。
「やっぱりお前はうらやましいよ。自分が期待されるほどのモノを持っているなら、しかもそれが数多いなら、いろんなことが出来るぜ。」
「いろんなことかぁ。でも、決められたことをやるだけの人生なんて嫌なんだよ。」
「うらやましい悩みだな。」
「うらやましい?!どこが?」
ヤンキーは俺の胸ぐらを掴む。
初めて目と目を会わせてしゃべった。
「だって、いろんなことが出来るってことは自分のやりたいことも出来るって俺は思うぜ。」
「俺の...やりたいこと?」
「そうだ。」
ヤンキーはそっと胸ぐらを離す。
怖かった~。
「俺のやりたいことってなんだ?」
「俺が知るかよ!自分のこともわかんないのにさ。」
お互いが沈黙する。
やっぱりできるやつもできないやつも、人間悩みは同じなのかな?
「アー!クソ!俺は何がしたいんだよ!」
ヤンキーが怒鳴る。
俺は冗談のつもりで言った。
「今やりたいことは、やりたいことを探すのがやりたいことかな。」
ヤンキーはキョトンとした顔でこっちを見る。
ヤベー、変な冗談言うなって怒られるかな?
「やりたいことを見つける。それがやりたいこと。」
復唱する芳雄。
冗談を真面目にされると恥ずかしいから止めてくれ。
すると突然、ヤンキーが立ち上がった。
「そうだよ!俺はやりたいことを探したい!今からでも遅くねぇはずだ!学生生活全部使ってでも答えを見つけ出す!」
こいつのなかで何かのスイッチが入ったみたいだ。
「ありがとうよ!え~と名前は?」
「タクト。白神タクトだ。」
「俺は芳雄。 赤星 芳雄。あのよ...。」
急に芳雄がウジウジとする。
なんか気持ち悪いな。
「タクト!俺と友達になってくれ!」
「え?俺ヤンキーの友達なんて要らないんだけど。」
今でさえダメダメなのに、これ以上下がってたまるかよ。
「悪いことは今日でやめる。俺はこれから真っ当に生きていくよ!だからいいだろ?」
「で、でも俺と芳雄は学校違うし。」
「タクトはどこの高校受けるんだよ?」
それがスラッと言えたら悩んでないって!
「決まってないよ。」
「だったら...あそこの高校受けろよ!」
遠くの方にチラッと見える、学校の屋上。
普通の地元の学校で俺でも入れるくらいの学校らしい。
確かA高校だったか?
「んじゃタクト!またな!」
「お、おい!」
芳雄は大通りに向かって走っていく。
はぁ。自分だけすっきりしやがって。
すっかり日も傾いてしまった。帰り道。
俺は、自分のやりたりことを探すのがやりたいこと。
ずっと呟いていた。家の玄関を開く。
「あら。タクト。帰ってきたの?」
「ただいま母さん。」
自分の部屋に入り机に向かう。
進路希望調査の紙を出して。
「自分のやりたりことを探すのがやりたいこと。」
気づくと俺はA高校と第一希望に書いていた。
青春小説ってこんな感じかな?
おい!ヨシオはどうなったんだよ!って思った読者さん。
明日に持ち越しでお願いします。




