第一話 鬼ヶ島からの襲来
昔々のそのまた昔、鬼ヶ島ではこんな唄がありました。
"海の向こうの宝島〜奪えや奪え〜金銀財宝"
鬼ヶ島の鬼たちは、宝島へ押し入り、住人たちから金銀財宝や食糧をたくさん奪って行きました。
ガラガラッ!
突然家の戸を開け、鬼が言いいます。
「ほらほら、命がおしければ、金銀財宝を出せ」
「だ、誰だっ!お前らは!」
住人は、一目で分かる野蛮人に対し、小さな娘と妻を背の後ろにかばいながら、怒鳴り返しました。
「酒だ、酒!酒も出せ」
「はっはっはっ、お前はいつも酒だな」
まだ後ろにも多くの鬼がいるようです。
「面倒だ、早く殺して家の中を探せばいいだろ」
「まあ、待て。」
更に後ろから他の鬼たちをゆっくりとかき分け、家の中に入ってきたその鬼は、そのまま住人の目の前に立って言いました。
「食事中申し訳ないが、この家にある、金銀財宝と食糧全てをすぐに出してくれないか」
「…お前たちのような野蛮人に渡すものは、何一つ…」ゴゴンッ!!
鬼は右の手に持っていた大きな金棒を頭に振り下ろしました。
小さな娘を残し、あっと言う間に二人の頭を潰してしまいました。
「ーーーーっ!!」
娘は恐怖のあまり、叫び声が声になりません。
「娘、金銀財宝と食糧はどこだ」
「ーーーー、ーーー、ーーーー」
「喋れなくしてどうするんだよ」
「はじめっから、こうしとけば良かったんだ。話し合ってる時間がもったいない」
「さあ、探すぞ」
次々に鬼たちが家の中に入ってきて、その家にある全ての物を奪って行きました。
「他のやつらも、上手くやってるかな」
「今日で三日目だ、大丈夫だろ。この波佐見村も一気に終わらせるぞ」
「次はあっちだ、さあ行くぞ」
"海の向こうの宝島〜奪えや奪え〜金銀財宝"
鬼たちは唄いながら、一晩中波佐見村を襲い続けました。
…………
…………
夜が明け、なんとか鬼の襲撃を間逃れた村人たちが少しずつ集まってきました。
皆、大なり小なり傷を負っています。
「斎藤!大丈夫だったか」
一人の男が足を引きずりながら、近づいてきます。
一瞬驚いた様子でしたが、声をかけて来た男の方を見た後、小さなため息をつきながら、肩を落とし呟くように小さな声で答えます。
「浅井か……あぁ、俺だけな……お前の方は?」
「……うちも、俺だけだ……」
斎藤は左肩を負傷しており、白色の服が左肩の部分だけ真っ赤になっていました。
「雉屋は大丈夫か?」
「俺も分からない…とにかく向かおう」
雉屋とは、この村に一つしかない雉林家がやっている薬屋のことで、村の病人や怪我人を一手に引き受けていました。
動ける村人たちは薬をもらうため雉屋へ向かいます。
道中にある家に声をかけながら歩きましたが、死体があちこちにころがっていて、とても無残な状態です。
「毛利のとこも今川のとこも殺されてしまった……」
「黒田と朝倉のとこは子供は大丈夫だったみたいだ。子供たちはとりあえず明智のばあさんが預かってくれている」
「明智のばあさん大丈夫だったんだな。じいさんは?」
斎藤は首を横に振りました。
「くそっ、何なんだ鬼ヶ島の野蛮人どもめ」
「有田村も、こないだ襲われたんだよなぁ?」
「あぁ、その前は瀬戸村も…」
「海辺の村はこれで全部襲われた」
雉林家の門の前まで着きましたが、人の気配は全くありません。門をくぐり村人たちは、開きっぱなしになっていた戸に近づき、恐る恐る中をのぞきました。
中には頭を砕かれた両親の傍に呆然と座り込む娘がいました。あまりの恐怖と悲しみからか髪の毛が真っ白になっています。
「大丈夫かっ」
村人はすぐさま娘に近づき声をかけます。
娘は目を見開いたまま、ゆっくり村人の方を見るとそのまま気を失ってしまいました。
宝島はとても豊かな家が多く、鬼たちは海を渡っては次々と村を襲いました。
子供の目の前で親を殺し、親の目の前で子供を殺して行きました。
何も考えず、ただただ奪って行きました。
そして、宝島のありとあらゆる村から全てを奪い尽くすと、鬼は現れなくなりました。
残った村人たちは、鬼を強く恨みながらも生きていくしかありません。
またいつ来るやも知れぬ鬼の存在に怯えながら…




