↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
2/2

SIDE 鮭


その焼き鮭は、もともと魚屋の裏で焼かれていた。

閉店後、店主が最後の一切れを焼き、「これは家で食べよう」とアルミホイルに包んだ、その瞬間。


猫が来たのだ。

ああ、猫だ。

「商店街のドン」と呼ばれるこの地域一帯を静かに支配している、やけに体つきの良い…いや、結構太り気味で、鋭い目つきの猫。


猫は飛びかからなかった。

ただ、じっと焼き鮭を見た。

その視線があまりに強く、焼き鮭のほうが先に耐えられなくなった。


鮭は思った。

「今ここで、この猫の体脂肪の一部となり果てるは、いささか吾《わ》が美学に悖《もと》る……!」


次の瞬間、鮭は浮いた。

熱と脂と未練が、ちょうどいい浮力を生んだ。

いやそんな馬鹿な、と言うなかれ。

飛んだのだから、仕方がない。


魚屋の換気扇の風。

商店街のエアコンの排気。

夕方の微妙な上昇気流。

それらを全部「たまたま味方」にして、焼き鮭は飛び立ったのだ、


目的は特にない。

ただ、「見られているかぎり、吾なお、ただの食材に非ず!」という、魚として最後のわがまま……、否、矜持である。


だから鮭は飛び続けた。四人の女子高生の視線を感じながら。

見られている限り、存在は続くと信じて。


一度は看板に降り立った焼き鮭だが。

四人の女子高生の声を受け、まだ落ち切っていない陽の光をたよりに、商店街の端まで飛ぶ。

そうして、そこから、黄金色の空に溶け込んでいった。

そこには、ただ、夕焼け雲がたなびいているだけである。


……焼き鮭の行方は、誰も知らない……。




ー了ー



……、いや、泪どこいった!?


ーホントに了ー



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。