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異世界転移したら俺だけステータスが見れなくて奈落に落とされたのだが?  作者: すすむ
第1章

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第4話 死ねない試練

しかし——一体どうすればいい。


あの威力だ。

まともに当たれば、ひとたまりもない。


まず、自分がどんな能力を持っているのかすら分からない。


分かっているのは一つだけ。


「……速くなってる」


さっき、確かに避けられた。

人間じゃありえない動きだった。


だが、それだけだ。


攻撃手段がない。


「当たったら終わりだろ……絶対」


そう思った瞬間——


ゴッ


「っ!?」


視界が迫る。


拳。

デカい。

速い。

避けられない。


「あ、これ死んだわ」


こんな所で俺は死ぬのか。

ああ、まだやり残したこと、いっぱいあったのに。


どうでもいいことだけ、はっきり考えられた。


重震獣の拳が——直撃した。



凄まじい衝撃が頭を叩いた。


音が消えた。


痛みが来る前に、感覚の方が消えた。


代わりに、体がどこにあるのか分からない。


「あ……?」


視界が、横に回転する。


地面じゃない。

天井でもない。


――浮いている?


遅れて、見えた。


少し離れた場所に、

制服を着た“誰か”が立っている。


「……は?」


数秒かけて理解する。


俺の体だった。


首から上が、ない。


「あれ……」


口が動いている感覚がない。


声も聞こえない。


なのに思考だけが続く。


「あれ……俺の体……なんであんなとこに……?」


そこで、意識が途切れた。



《試練中断》

《損傷個体を再生します》


「……は?」


息を吸った。


肺が動く。

心臓が動く。

体が動く。


「俺……死んだんじゃ……」


《本試練は“復活の泉”と接続されています》

《試練中、個体は死亡しません》


「……え?」


「……さっきの、見間違いじゃないのか……?」


理解した瞬間——


助かった、とは思えなかった。


ドスン!!


また、足音が迫る。


重震獣が再び拳を振り下ろした。


「やめろ!!」


さっき確実に殺された相手だ。

本能が逃げろと叫ぶ。


怖い

怖い

怖い


「……やめてくれ」


避ける。

転がる。

それでも迫る巨大な影。


「死にたくない……!」


《継続戦闘を確認》

《適応学習を開始します》


「は……?」


怪物が踏み込む。


逃げ場はない。


――胸を貫かれた。


肺の空気が一瞬で抜け、声が出ない。

心臓の鼓動が止まるのが分かった。



《損傷個体を再生します》


――握り潰された。


骨が順番に折れていく。

潰れる音を、自分の中から聞いた。



《損傷個体を再生します》


――踏み潰された。


地面に埋まり、視界が黒に沈む。



《損傷個体を再生します》


――投げられた。


岩壁に叩きつけられ、背骨が折れた。



《損傷個体を再生します》


――腕を引きちぎられた。


叫ぼうとして、首を折られた。



《損傷個体を再生します》


――頭を砕かれた。


考えが途中で消える。



《損傷個体を再生します》


――また、潰された。



《損傷個体を再生します》


――また、殺された。



《損傷個体を再生します》


――また。次に来る衝撃を、待ってしまった。



「……っ、は……ぁ……」


何回目か分からない。


死ぬ瞬間が、予測できるようになっていた。


次は胸。

次は頭。

次は握り潰される。


分かるのに、避けられない。


《学習率:上昇》


「……もう……いいだろ……」


勝ちたいんじゃない。


終わってほしいだけだ。



怪物が踏み込む。


だが今度は——


分かった。


さっきより、動きが見える。


「……っ!」


横に踏み込む。


拳が頬をかすめる。


「避け……た?」


心臓が爆発しそうなほど鳴る。


だが嬉しくない。


次は、どの死に方だ?


恐怖が消えない。


ただ——

ほんのわずかだけ、“遅れる”ようになった。



重震獣が唸る。


巨体が振りかぶる。


「……来る」


拳が落ちる位置が、分かる。


半歩前へ。


轟音。

岩が砕ける。


「今だ……!」


錆びた短剣を振る。


ギィン!!


弾かれる。


だが——


脚に、浅い線が刻まれた。


「……え?」


止まった。


初めて、止まった。


《初回干渉を確認》

《戦闘データ取得》


重震獣が咆哮する。


逃げなきゃいけないのに、動けない。


足が震える。


それでも——


「……通るんだ……」


勝てるとは思えない。


ただ。


終わりがあるかもしれないと、思ってしまった。


《適応率:上昇》


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