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【⑧】【32】永遠の誓い


 今日はクリスマスイブ。


 昼過ぎまでに買い物を済ませ、夜のパーティーに向けて絶賛準備中である。


 今回は、かい雪乃ゆきのが過ごす、二回目のクリスマスだ。



 リビングにはクリスマスツリーが飾られ、クリスマスを意識したデザインのカラフルなシートを下ろせば家具が隠れるようになっている。


 このツリーや家具の飾りつけは、去年と同じ。


 ソファーには飾りのシートが掛けられていないのも――去年と同じ。



 ダイニングのテーブルには、二人分の、皿、ナイフ、フォーク、スプーンなど、ディナーの食器が並べられている。


 雪乃が獣人化してから数か月。

 手の扱いにも慣れてきたので、今年はこういう形になった。


 去年と同じく丸鶏を焼く予定で、食材に注意したシチューも作った。

 人間用とは別に、猫用のパンとケーキも用意した。


 飲み物は、雪乃も飲めるスパークリングぶどうジュース。

 渋みの効いた、ややお高い一品である。


 魁はあまりアルコールを好まないので、雪乃と同じジュースを飲む。



 魁の服装は、ドレスシャツにネクタイ、黒のスラックス。

 パーティの初めだけは、ジャケットも着る予定だ。


 そして雪乃だが……

 獣人姿で、超ミニのサンタガール衣装を身に着けている。


 純白の被毛に、真っ赤な衣装がよく映える。

 サンタ帽子は、耳と耳の間に乗せるだけ。

 ただ、それだとすぐに帽子が落ちてしまうので、内側をヘアピンで留めている。



 なお、雪乃が着ているサンタガール衣装は上下一体である。

 雪乃はその体に規格外の凶器を隠し持っているため、サンタガールのミニスカートは"超ミニ"に変貌へんぼうを遂げたのであった。


「魁~! なんかこれ短いよ~!?」


 どうにかならないかと、あちこち引っ張ってみるが、どうにもならないことを悟った雪乃。

 スカートの裾を囲うように極太の尻尾を巻きつけた。

 一見するとスカートの飾りファー風で、なかなかいい感じだ。


「ねえ~。わざと小さいの買ってない~!?

 まあ、魁が好きなら、いいんだけどさ……」


 雪乃は、少々照れた様子で呟く。


「すまん……女性用の服は、サイズが統一されてなくてな……

 これでも、人間の身長基準では少し大き目の服なんだが……」


 謝罪を口にするも、魁の視線はサンタガール姿の雪乃に釘付けだ。


 それから少しの間、サンタガール姿の雪乃を眺めていた魁。


「ああ……やっぱり雪乃はかわいいなあ……」

 ふらふらと雪乃に近づき、抱きしめようと腕を伸ばすが――


 魁の腕に抱かれる寸前、するりと抜け出す雪乃。


「お~っとっと、旦那様~?

 "まだ"、"おさわり"は解禁前でございますよ~?」


 そして雪乃は体の後ろで手を組み、少しだけ顔を仰向けにすると、

「まだ昼過ぎだから、ちゅーで我慢して?」

 魁を上目で見てから微笑み、そっと目を閉じた。


 ピンと立った耳が、気配を探るように、ぴこぴこと動いている。


「ん……だな」

 指摘され、はっとした魁。

 腰を屈め、雪乃へごく軽い口付け。


 魁の唇が離れると、ぱちりと目を開き、

「にゅふふ~ よく我慢できました~ えらいえらい~」

 少し遠い魁の頭を、よしよし、と撫でた。


「さ~て、準備続けよ~?

 魁の近くでじっとしてると、今度は私が我慢できなくなっちゃうからね~

 にゃ~ん にゃにゃ~ん♪」


 サンタガール姿の雪乃は、踊るような軽やかさで魁の傍を離れていった。


「俺も、ちょっと舞い上がってるか……」

 キッチンで動き回る雪乃を眺めながら、ぽつり。


 すぐに魁もキッチンへ向かう。

 そろそろチキンを焼き始める時間だ。



 ――チキンが焼き上がった頃、外はすっかり暗くなっていた。

 時刻は午後七時。


「焼けたぞー」


「はーい! テーブルに場所は作ってあるよー」


 テーブルの飾り付けを見直していた雪乃。

 キッチンにやってきて、テーブルを指す。


「お。随分手際がいいな」

 焼き上がったチキンを皿に置きながら、感嘆の声を上げる魁。


「当然です! 私だって勉強してるんだから!

 全部は無理だけど、できることはやれるようにね!」


 チキンの皿を持ち上げ、ダイニングのテーブルへ向かう雪乃。

 話しながらだったので、キッチンの棚に足を引っかけてしまう。


「あっ!」


 宙を舞うチキン。

 折角の料理が台無しに――


「させにゃい!」


 雪乃は崩れた体制を素早く立て直し、キッチンの床を蹴って跳躍する。

 空中で無駄に三回転半してからチキンの皿の下へと滑り込み、無事チキンをキャッチした。


「ふー……せーふ!」


 雪乃は猫獣人である。

 少々のドジは、人間の身体能力を超越したフィジカルでカバーが可能なのだ。


「 !! ……凄いな雪乃。俺だったら完全に落としてたぞ」

 ワンテンポ遅れて、魁が声を上げた。


「えへへ~。もっとほめていいんだよ~」

 にこにこ顔の雪乃。チキンの皿を手にしたまま、くねくね。


「本当に凄いな! 凄いが……

 そもそも足を引っかけないよう、注意しような」


「うう……ですよね~……」


 肩を落とす雪乃。

 サンタ服のスカートに巻きつけた尻尾が、力なく垂れ下がる。


「まあ一応の注意喚起だ。チキンは無事なんだから気にするな。

 さあ、俺はシチューを持っていくから、パーティを始めよう」


 今日は、いつまでも落ち込んでいる暇はない。

 魁の一言に気を取り直し、元気に返事を返す雪乃。


「 !! にゃぁい!」


 しゅばば、っとテーブルにチキンの皿を運び、他にやり残しは無いか見回し、

「あ、飲み物出すね! たしか、なんか冷やすやつに氷入れるんだよね!」

 魁がシチューを運ぶ間、雪乃は氷を入れたワインクーラーに、ぶどうジュースを入れてテーブルへ。


 シチューをテーブルに置いた魁は、キッチンとダイニングを仕切るカーテンを閉めた。

 そのカーテンも、クリスマスを意識したデザインだ。


「照明も切り替えるけど、いいか?

 雪乃は暗くても見えるから、あまり変わらないかもしれないが」


 ほのかに苦笑する魁。

 部屋の明かりを間接照明に切り替える。

 リビングからダイニングにかけて、淡い暖色に包まれた。


「暗くても見えるけど、雰囲気を大切にすることが重要なのでぇす!」

 言いつつ、雪乃は椅子を引き、自分の席に着いた。


 グラスにぶどうジュースを注ぎ、魁も席に着く。


 手にはグラス。

 微笑み、見つめ合う二人。


「メリークリスマス、雪乃。愛してる」

「メリークリスマス、魁。大好きっ」


 澄んだグラスの音が響き、二人はグラスを傾けた。


「じゃあ、いただこうか。雪乃はムネ肉か?」

「うん! むねにく~!」


 今日は手先のトレーニングのために~などとは言い出さず、全部魁にやってもらっちゃうつもりの雪乃だった。


 それからは、いつものように雑談しながら料理を食べ進めた。

 取り分けたチキンに、シチューとパン。

 雪乃も気に入ったらしい。



 ――程なくして、一段落。

 ケーキもあるので、食事の量は少な目だ。


「ふ~。おいしかった~。ごちそうさま~」

「すぐにケーキ食べるか? それとも、少し休むか?」


 どうしようかな、と考えを巡らす雪乃。


 いつの間にかスプーンを手にし、それをくわえながら天井を見る。

 ちらりと時計を見て、頷く。

 時刻は八時半を過ぎていた。


「ゆっくり準備して、ゆっくりケーキ食べよ?

 一休みしちゃったら、ケーキ食べらんないかも!」


 魁に異論はない。


 頷き返し、

「ダイニングの片付けは後回しにして、リビングで食べような」

 と、カーテンの隙間からキッチンへ向かい、二つのケーキと食器を持って、リビングに戻ってきた。


 雪乃は、先にリビングのソファーに座っていた。


「わーい! ケーキ!」

 両手を上げて喜ぶ雪乃。

 座って両手を上げると、超ミニのサンタ服はさらに短く――


「も~ぅ! この服可愛いけど、短すぎ!

 来年はもっと長い服を希望します!

 ロングドレスとか!」


 尻尾で色々隠しながら、抗議の声。


「すまんすまん。

 まあ、失敗した服のサイズはわかったから、来年は大丈夫だ。

 ――そういや、去年はどうしてたんだっけな。

 サンタガールは初めてだし――」


「去年はまだ、魁と話もできなかった頃だよ?

 忘れたの? それとも――

 どこかのメスネコと、勘違いしてるのかにゃ~?」


 雪乃の蒼い瞳がギラギラと輝き、魁に視線が突き刺さる。


 魁は、雪乃の視線に何の後ろめたさも感じなかった。


「雪乃とは、ずっと昔から一緒に居るような気がしてな。

 改めて確認する必要があったのか?」


「んーん。こういう嫉妬するの定番なんでしょ?

 ちょっと言ってみたかったから、嫉妬する表情とか練習してみたんだ。

 どうだった?」


「雪乃は、やっぱりかわいいな、って再確認したよ」


「なにそれー。練習した意味なーい! あははは!」


 深い絆で結ばれた二人に、この遊びは成立しなかった。


◆◆◆


 そんな話をしつつも、魁はケーキにローソクを立て、火を点けていた。


「そうそう。去年もこうしてローソク立てたね。

 ケーキを食べてから、マタタビで酔わされて、私は魁に――」


「クリスマスに、愛する白猫の雪乃と二人きりだったんだ。

 我慢できるわけないだろう?」


「魁に襲われた後に"かいちゅ~る"を食べて、魁と話せるようになったんだもんね!

 魁が、ただの猫だった私を襲っちゃうような人間で、とっても嬉しいよ!」


 顔を見合わせ、微笑む二人。

 内容はともかく、二人にとってはいい思い出なのである。


 うっとりしつつ、雪乃は魁に身を預け、徐々に体を開いて――


「あっ! 私もプレゼント用意したから、今日はまだダメ!

 マ、マタタビも禁止ね!」


 はっとしてソファーの端まで離れ、閉じた足をもぞもぞと動かす。


「とにかくケーキ食べよう!

 そんで、プレゼント交換! イベントイベント!

 や、やることいっぱいだよ!」


 すぐに立ち上がり、元気に声を上げる雪乃。


 魁も雪乃の言葉に同意。

 魁と雪乃はそれぞれ、自分のケーキに立っているローソクの火を吹き消した。

 雪乃のケーキは猫用、魁のケーキは人間用。


 食欲は満たされた。


 ケーキを食べ終えると、そそくさと皿を片付ける魁。

「俺はプレゼント持ってくるから、雪乃も準備するといい」


 サンタ帽の具合を直し、にこりと微笑む雪乃。

「あ、うん。私はもう準備できてるから、だいじょぶだよ~」


「ん? そうか」


 ――魁はリビングの家具に掛けたシートをめくり、戸棚から小さめの箱を取り出した。

 振り返って雪乃を見たが、箱などを持っている様子は無い。


 かなり小さいものなのか?

 という疑問からの、隠しておける大きさだとしたら何なのか?

 という考察。


 そして、獲物のネズミがプレゼントなのでは……という疑念を抱く。


 一緒に住んだばかりの頃は、普通の猫のように雪乃からネズミや昆虫を献上されたものだが――


 まさか、とは思いつつ、「ちょーおっきいのが獲れたんだよ!」と、服の下ではなく、口から巨大なネズミを吐き出したり――


(いや、雪乃は今まで獲物を吐き出したりはしなかった。

 そもそも猫にそういう習性は無いはずだ……)


 雪乃の様子に注目しつつ、リビングのテーブルへプレゼントの箱を置いた。


 本当にネズミがプレゼントだったとしても、今、想定内になった。

 想定外ではないので、それ程騒ぐことではない。

 雪乃のプレゼントについては一旦忘れることにした。


「さあ、雪乃。リボンを解いてくれ」


 魁は、雪乃へと箱を差し出す。

 赤いリボンで封がされている白い箱だ。


「うん!」

 リボンを解いて箱を開けた雪乃は、目を見張った。


「これって……」

 雪乃は魁へと視線を移し、言葉を待った。


「今更になるが、改めて……」


 それは、"赤い革の首輪"だった。

 猫獣人を想定した大きさの首輪で、天然石のチャームが光っていた。



「結婚しよう」



 魁は箱から首輪を取り出し、雪乃の方に開いた。


 首輪を見つめ、無反応の雪乃。


 やがて、小さな返答。



「――はい」



 雪乃は震えていた。


「命尽き果てようとも、雪乃を愛し続けることを誓う」

 雪乃に首輪を巻き、バンドを閉じた。


 首に巻かれた首輪を撫でる雪乃。

 天然石のチャームが柔らかな間接照明の光を反射して輝く。

 雪乃の瞳からは、サファイアの雫が一粒、零れ落ちた。


 そして、

「私も、ずっとずっと、ずっーと、魁を愛し続けます」

 静かに誓いの言葉を口にした。


 ――この瞬間、雪乃のハッピーメーターは上限を突き破った。


「びゃああああああああああああ!

 かいいいいいいいいい!

 うううううれしいいいいいいいいいい!」


 魁に飛びつき、発火する程に顔を擦り付ける雪乃。


「今までも結婚してたようなものだが、式を挙げたりはしてなかったからな」

 顔を擦り付け続ける雪乃を、こちらからも抱きしめた。


「うん……そういえば、そうだったね。

 これで私は、正式に魁のものになれるんだね!」


「結婚するんだから、俺も雪乃のものだぞ?」


「にゃーん! 魁が私のもの! にゃっひょーい!」


 魁とイチャイチャしながら奇声を上げる雪乃であった。


「――それで、この首輪なんだが、天然石のチャームに術がかかっててな。力を込めると、対応する石を持った相手にだけ、自分の居場所を伝えられるようになってるんだ」


 魁は、雪乃を抱いたまま、首輪の石に軽く触れた。


「ふにゅうん……」

 魁の手が喉の被毛に触れ、雪乃が身をよじる。


「――そうそう、あと、こっちは猫用の首輪だ」

 魁は、忘れるところだった、といった様子で再びプレゼントの箱へ手を伸ばし、小さな赤い首輪を取り出した。


「付け替えるのが面倒かもしれないが、雪乃には両方必要だからな。

 勿論、こっちにも術のかかったチャームがついてるぞ」

 よく見えるよう、首輪を雪乃の目前へ掲げる。


「あ、やっぱり猫用なんだね! やったあ!

 ……確かに首輪は付け替えが必要そうだけど、何か便利な術があると思うから、長様に相談しまーす!

 それで、いい方法があったら、猫用の首輪は尻尾につけようかな~?

 にゅふふ~☆」


 雪乃は口を「人」の字にし、大きく目を見開いて耳を動かしながら、嬉しそうに目前の首輪を見つめていた。



 ――そんな雪乃の様子を見ていた魁。


「これは一旦しまっておこうな」

 と、おもむろにプレゼントの箱を引き寄せ、小さい首輪を箱へ戻した。


 そして、

「雪乃に首輪を渡したなら、俺も証を持ってないとな」

 と、箱内に隠されていた指輪の台から、銀色の指輪を取り出した。


 雪乃の白い毛並みをイメージした、銀の指輪。

 指輪の裏には、雪乃の瞳と同じ色の蒼い石。

 それと、首輪と同じ色の赤いラインストーンが埋め込まれていた。


 魁は指輪を雪乃に手渡し、

「雪乃、めてくれ。この指に」

 差し出したのは、左手の薬指。


「えっ、あっ、はいっ!」


 慌てて返事をし、受け取った指輪を、緊張の面持ちで魁の薬指へ通す。


「……ありがとう。これで、俺は雪乃のものだ」


「あっ―― うん! 魁、大好き!」


 ぎゅっと魁へ抱きつく雪乃。

 抱き返す魁。


 二人は声もなく、しっとりと抱き合う。


 ――その時突然、思い出したように、雪乃がその静寂を破る。


「――あっ! 私のプレゼントもあるんだった!」


 幸せにとろけていたたため、半ば忘れかけていた。


「そういえば、そうだって言ってたな」

 魁は少し体を離し、雪乃を見た。


「うん! とっておき!」

 大きく頷くと、雪乃は大きく口を開けた。


「……!?」

 雪乃の行動に、魁は驚きを隠せない。

 もしや、本当にネズミを――


「私の口に、指……入れてみて?」

 雪乃は、はにかみながら魁に告げた。


「指を……?」


 ネズミをつまみ出せ……というワケでもなさそうだ。

 どういうことか理解が追いつかないまま、人差し指を雪乃の口へ差し込むと――


 雪乃の口が、パクリと口が閉じられた。

 すぐに、ぬるぬると魁の指を舐めまわし始める雪乃。

 一瞬どういうことか理解が追いつかなかったが、すぐに理解した。


「雪乃、これは……」


 魁の指をくわえて舐めまわしながら、上目遣いで魁を見つめる雪乃。

 なあに? とでもいいたげに、小首を傾げた。

 雪乃に、ほんのり、笑みが浮かぶ。


「これが、プレゼント……だよ?」

 魁の指を咥えたまま、雪乃が告げる。


 魁は、雪乃の口の中を探るように優しく指を動かす。

 鋭い牙は完全に引っ込み、その他の歯も短く形が変わっていた。

 そして、ヤスリのような猫の舌が、適度な摩擦とぬめりを持った舌に変化していた。


 魁の言葉に返す雪乃の瞳は、怪しく輝く蒼い三日月のようだった。


 指を口から引き抜くと、雪乃と魁の間に銀糸の橋が掛かる。


「そ。変化の術の初歩だよぉ?

 痛くにゃ~いでしょぉ?

 ……気に入ってくれたかにゃあ~?」


 雪乃は瞳を三日月のように細めたまま、なまめかしく光を反射する舌を見せつけ、舌なめずり。


 既に、雪乃はスイッチが入っているようだ。


「これで、たくさんご奉仕できるよねぇ?」


 雪乃は見せつけるように舌を出し、魁の薬指に光る指輪を、ベロリ、と一舐め。


「こうやって、"かいちゅ~る"直飲みしたら、どんな味するんだろ~?

 た~のしみだにゃぁ~?」


 乱れたサンタ服にも構わず、みだらに笑う雪乃。


「じゃあ……早速試すか?」


 魁もスイッチオン。

 強引に雪乃を抱き上げ、階段へ向かう。

 

「あれれ~? 去年みたいに、ここで襲わにゃいのかにゃ~?」


 抱き上げられた雪乃は魁の首に腕を回し、耳元に囁く。


「寝室までなら我慢できるようになったのさ。

 雪乃が育ったみたいにな」


 雪乃に囁き返し、強く抱き締める。

 

「そっかぁ……っはぁっ……魁ぃ……」


 雪乃も、目を閉じて強く魁へ抱きついた。




 ――魁に抱き上げられたまま、雪乃は薄く目を開け、小さく呟いた。


「魁……今日は、乱暴にしつけして欲しいにゃあ――」


 雪乃の太い尻尾が、魁の腕に巻きついた。



 階段への扉が、激しい音を立てて、閉じられた。



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