85 魔道具作りの依頼
ドワーフ達から、火を付ける魔道具を作って欲しいと依頼が来た。
ルーサイアの街には、すでにもう結構な数のドワーフが集まって来ていて、鍛冶職人もかなり増えたらしい。
そしてドワンゴさん達が使っている、火を付ける魔道具の使い心地に感動し、みんな欲しくなったってワケだ。
彼らには鍛冶だけじゃなく刀作りも頑張ってもらってるので、要望は出来るだけ叶えてあげたい。当然依頼は快く引き受けた。
この魔道具の作り方は簡単で、筒状の先っぽに【火生成】を付与し魔石へ回路を通すだけでいい。あとはボタンでスイッチのオンオフが出来るようにするだけ。
最近は新兵の指導ばかりで変にストレスが溜まっていたのもあって、いい気分転換になると思い、パッパと20個ほど作った。
「よし、これは楽勝だな」
生活に必要な物って他にも何かないかな?
日本にあった便利な家電を思い浮かべる。
照明器具、テレビ、冷蔵庫、ドライヤー、コンロ、ポット、洗濯機、瞬間湯沸かし器、ストーブ、炬燵、電動髭剃り、パソコン、電子レンジ、時計、懐中電灯、電動ノコギリ。
まだまだいっぱいあるだろうけど、こりゃあキリが無いわ。
とりあえず絶対欲しいって感じなのは、洗濯機とストーブか。仕組みを考えるとどっちも作れそうな気はする。
洗濯機のスクリューは、使用する素材と威力の調節が重要とみた。服が破れちゃ台無しだからな。回転方向を交互に変化させたりの、最新式洗濯機みたいな機能は相当研究しないと無理だけど、とりあえずの物ならばすぐ出来るだろう。
ストーブはもっと楽勝だ。火生成型にするか熱生成型にするかの違いくらい?安全面を考慮すると熱生成型だろう。ドライヤーのように風を送る機能も付ければ更に良いかもしれん。つーか巨大ドライヤーだな!
あとはコンロなんかを作れば、料理班が絶対喜ぶ。
これも簡単に作れると思うから3つ目の候補だな。
よし!まずはこの3点を作るぞ!
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ストーブとコンロは楽勝だった。
ただ洗濯機だけは、水を入れて実際に使ってみないと成功したかどうかもわからん。排水機能も付けたけど、水漏れの可能性が無いとも言い切れんし。
とにかく実験をしに行こう。
井戸の横に洗濯機を置いて水を汲んでいると、誰かがやって来た。
「あれ?小烏丸、それは何っスか?」
「ルーシーか。魔道具を作ると毎回必ず現れるとは、本当に鼻の利く女よ・・・」
「ナハハハハ!偶然っスよ!それも新しい魔道具?」
「これは洗濯機だ。上手く行けば洗濯が楽になるぞ」
「へーー!面白そうだから横で見てるっス」
「あー、それなら洗濯前の汚れた服かなんかを探して、持って来てくれないか?」
「汚れた服・・・、すごく汚れている方がわかりやすいっスよね?」
「あーー、まあ確かにそうだな」
「んじゃ訓練で泥のついた服とか探してくるっスよ」
「オーケイ、頼んだ!」
洗濯機に水を汲んだ後に洗剤も必要なことに気が付き、館の中から手作りボディーソープを持ってきた。
どすっ
ちょうど戻って来たルーシーが、汚れた服が大量に詰まった大きな箱を地面に置いた。
「いっぱい持ってきたっスよ!」
「おおっ、コイツぁ洗い甲斐がありそうだぜ・・・」
洗濯3回分くらいあるやんけ!しゃーないから全部やるかぁ~。
第一陣を投入し、ボディーソープを入れてスイッチオン。
ゴトンゴトン
「おお!!ぐるぐる回ってるっス!」
「良い感じだな。これは成功の予感がするぞ」
何分ほどやれば良いのかよくわからんので、テキトーに数分待ってから水を抜いて、綺麗な水を汲みなおした。今度は泡を流さなきゃならんからな。
そして数分後、第一陣の洗濯は終了した。
「見た感じ成功だとは思うけど、乾いてなきゃ評価しにくいなあ」
「これは凄いっスよ!ボタンを押すだけで洗濯が終わるなんて画期的過ぎるっス!」
「とりあえず干そうか」
2人で洗濯物を干して行く。
「じゃあ第二陣はルーシーが操作してみるといい。手順を説明するよ」
「おお!ウチの番っスね!」
水を汲んだ後、ルーシーが洗濯物を放り込んでボディーソープを入れる。
「じゃあ押すっスよ!ポチっと」
ゴトンゴトン
「おお~、回ってるっス!」
「ホントは交互に逆回転させると、もっと汚れが落ちるんだけどね。今の俺の実力じゃこれで限界だった」
「ほえ~。小烏丸は何でも作れて羨ましいっス」
「実はコレ以外にも違う魔道具を2つ作ってあってさ、洗濯が終わったらそれも実験する予定だぞ」
「なんと!?それはウチも見届けねばならないっス!」
「ハハッ!んじゃ洗濯が終わったら次は食堂な」
「了解っス!」
そして全ての洗濯物を干した後、ルーシーを連れて食堂に移動した。
・・・・・
「さーて、どこに設置しようかな・・・」
コンロがあれば竈が必要無くなるけど、料理を作るのにコンロ1台じゃ全然足りないのだ。けど魔道具がちゃんと動くか検証してからじゃないと、いきなり量産ってワケにゃいかんから、今回はしゃーない。
とりあえず適当な場所にコンロを置いた。
厨房からフライパンを借りて、油を敷いてからドラゴンステーキを2枚乗せる。
「ここにレバーがあるだろう?これをこう捻ると火が付くんだ」
ボッ!
「おおっ!火が出たっス!」
「んでレバーの捻り具合で火力が調節出来るのだ」
「凄いっス!これも画期的すぎるっス!」
ルーシーに説明しながらレバーを調節させてみる。
「あー、焼き物じゃなくてお湯を使った料理にすれば良かった」
「なんで?」
「レバー全開でお湯を沸かせば短時間で沸騰するんだけど、そこでレバーを少しずつ戻していくと、お湯が噴きこぼれないギリギリを攻めることが出来るのよ」
「んーーー、よくわからないからこの後見せて欲しいっス」
「そうだな。そうしよう」
「あら?何それ?」
ユリが現れた。今日の料理当番かな?
「これはコンロという竈の魔道具ですね。さっき完成したばかりなんで、ルーシーと一緒に実験中なんだ」
「魔道具!?」
ユリが興味津々でコンロを見ている。
そうこうしてるうちに肉が焼きあがったので、3人分に切って分けた。
「あ~、2人で食べる予定だったんじゃ?」
「ああ、食事をしに来たワケじゃないから、気にせず一緒に食おう!」
「ありがとう!じゃあ頂くわね」
「すっげー美味そうっス!」
肉は相変わらず美味かった!まあコンロの実験なのでこれはオマケだな。




