75 カーラの実力
一方その頃、右陣のカーラと敵左陣のカールも激戦を繰り広げていた。
「なかなかやるじゃないか!でもそろそろ決着をつけるよ」
「小生意気な女だ!だが良い女だ。敵でなけりゃ口説いていたものを!」
「残念ながらお断りよ。ジャバルグ軍に入って好き放題にやってる奴なんか生理的に無理。アタシは強くて優しい男が好きなんだ。それにハゲはちょっと・・・」
「好きでこんな頭にしてるわけじゃねえ!」
「そうなの?まあいいわ。じゃあ全力で行くよ!」
名前もちょっと似てるし、嫌いなタイプじゃないんだけどさ。
でもアタシにはもう好きな男がいるんでね!
・・・それにしても、このミスリル刀は本当に凄いわ!
今までの刀も斬れ味は抜群だったけど、連戦を続けると、相手の血や油で斬れ味がどんどん低下してしまう。なので定期的に刀の汚れを拭き取る必要があった。
しかしこの曼殊沙華は違う!
最初はなぜこんなのが付いてるのだろうと疑問に思ったんだけど、汚れ耐性+++の効果がどれほど意味があるのか、今回の戦ですごく良くわかった!
血や油、汚れが一切刃に付着しないから、斬れ味がまったく落ちないんだ。
―――アタシは絶対に、この刀を授かった期待に応えなきゃならない!
この男を倒せば味方が優勢になるんだ。一気に勝負をかける!
突如間合いを詰め、右下段からの振り上げ。
右利きが一番防御しにくい攻撃だ。
カールがすかさず剣で攻撃を防ごうとする。
ならばと瞬時に軌道を変え、刀を真上に振り上げ、返す刀で袈裟斬りを繰り出す。
しかしカールも並みの戦士ではない。
刀の長さを見切って、上半身を後ろに逸らして躱そうとする。
逃がさない!
そこから更に懐に飛び込み、カールの胸を鎧ごと斬り裂いた。
「ガハッ!」
しかし攻撃はそこで終わらない。
流れるような動作で刀を刺突。何度も繰り返し特訓した技だ!
ズッ
「ぐふっ・・・」
「アタシの勝ちだ」
それを聞いたカールがニヤリと笑い、そのまま倒れる。
「カール、あんた本当に強かったよ」
カールの死を確認し、刀を天に掲げる。
「敵将カール、カーラが討ち取ったり!!」
「「わーーーーーーー!!」」
名前が似すぎてて、なんか微妙にキマらなかったーー!!
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―――――ミスフィート視点―――――
「聞いたな!?カーラがやったぞ!」
「流石はカーラね!こっちも負けちゃいられないわ!」
本隊は当初の作戦通り、苦戦を装いながら敵を引きつけていた。
だが敵左陣が崩れた今、これ以上引き付ける必要が無くなった。
「よしッ!今が最大の好機!全員本気で行け!」
「「ハッ!」」
「攻撃力上昇!防御力上昇!魔法防御力上昇!精神力上昇!身体能力上昇!」
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―――――ジャバルグ軍・ザンガル視点―――――
「ザンガル様、伏兵です!背後を塞がれました!」
「んだとお!?クソ生意気な反乱軍めが!!」
「こうなったらもう、一点突破で撤退するしか・・・」
「ふざけた事を抜かすな!数で圧倒してるのに負けたとあっちゃ、ジャバルグ様に殺されるだけだろうが!死ぬ気で戦え!もう勝つしかねえんだよ!!」
「「ハッ!」」
なぜこの様な窮地に陥ったのだ!?
そうだ、最初の一撃だ!アレさえ無ければ絶対に勝っていた筈なのだ。
いや、まだ敗北すると決まったワケではない!反乱軍の総大将を殺せば、奴等はもうただの烏合の衆に成り果てるだろう。
よおおおしッ!あの女だけは、俺様が自らの手で殺してやる!!
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―――――小烏丸視点―――――
あーーー、こいつら邪魔だ!!守備隊多すぎだろ!!!
「クソが!ザンガルが見えてるっつーのに届かねえ!」
もうこの場所に来てから100人は斬ったハズだ。
奴と1対1にさえなれば絶対に俺が勝つ!しかし戦場では、その1対1になるってのが非常に難しい。結局、地道に敵の数を減らして行くしかないのか!?
「フンッ!」
ドガシャ!
「こがらす殿、珍しく苦戦中のようじゃな!?」
「おお、ドワンゴさん!敵の守備隊が多くて、まいってた所です、よッ!」
「ワハハハハ!敵本隊じゃ、そりゃあ守りも堅いわなッ!」
敵と戦いながら会話が出来るんだから、まあ余裕はあるんだが。
「本隊のドワーフの皆がココに来たってことは、もうすでに敵を囲んだか!」
「カーラの嬢ちゃんが敵将を討ち取ったぞい」
「おお、流石カーラだ!やるじゃないか!」
そうこうしているうちにジャバルグ軍の兵の数がみるみる減っていき、とうとうミスフィートさんとザンガルが対峙した。
俺はずっと『ライアンを殺られた復讐をしなければならない』という、自分本位な思考で戦っていたんだけど、冷静に考えてみると、最後は総大将が決めた方が軍の士気も上がるし、何より格好良い!ってことに気付くことが出来た。
戦ってのは熱くなり過ぎちゃいかんな。
客観的に全体を見通せる冷静さも維持しなきゃ、いつか判断を誤ることになる。
「部将ザンガル!キサマの命運もこれまでだ!」
「ハアッ、ハアッ、反乱軍如きがああああああ!」
「最後は私がお相手致そう。反乱軍総大将ミスフィート、いざ参る!」
「お前を殺せば俺の勝ちなんだ!ぶっ殺してやる!!」
部将クラスにミスフィートさんが負けることなど絶対に有り得ないから、そこはまったく心配していない。
ザンガルの大剣がミスフィートさんに迫る。
非常に豪快な剣だ。しかしミスフィートさんには通用しない。
ザンガルが剣を振り回すが、彼女は余裕を持って躱している。
ちなみにミスフィートさんは、刀を抜いてすらいない。
「この野郎!剣も抜かずに舐めやがって!!」
舐めちゃいないんだよなー。タイミングを計っているだけだ。
怒りが収まらないザンガルが大剣を振り上げる。
―――ミスフィートさんが抜刀術の構えを取った。
ギンッ
「ハッ、ガ・・・」
もう俺の抜刀術と遜色のない神速とも言える一撃で、ザンガルの体が鎧ごと真っ二つに分かれた。
ドサッ
それを見ていた敵も味方も、全てが静まり返る。
「敵将ザンガル、反乱軍総大将ミスフィートが討ち取ったり!」
「「わあああああああああああああ!!」」
終わったな。
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