76 大勝利
新生ミスフィート軍になって初めての大規模な戦だったけど、ジャバルグ軍の重臣である部将ザンガルを無事倒すことが出来た。
ジャバルグ軍との戦では、普通の戦争と違って敵を捕虜にするメリットが皆無だ。とにかく敵を全て殲滅すればいいってのは、最初は大変だと思ったけど単純明快で楽なのかもしれないな。
『捕らえた武将を金で引き渡す』みたいな交渉などがあると、その交渉相手が裏切る可能性なんかを考える必要があったりと、非常に頭が痛くなりそうだし。
「皆の者、喜ぶのはまだ早いぞ!敵兵はまだ残っている。速やかに殲滅せよ!」
それを聞いた皆は攻撃を再開する。当然敵は逃走を図る。
「クソッ!邪魔だ!」
「駄目だ!完全に囲まれて逃げ場がねえ!」
「なんでアイツら、あんな細い剣のクセにつええんだよ!?」
「ザンガルの部隊になんか入らなきゃよかったッ!」
お前らを逃がすと、また次回戦うハメになるだけなんでね。逃がしゃしねえよ。
ザンガルが倒れた今、敵の戦線は完全に崩壊した。
逃げ惑うジャバルグ軍の兵士達を、後ろからだろうが容赦なくぶった斬る。
そして1時間も経った頃、立ってる敵は1人もいなくなった。
・・・・・
「我が軍の完全勝利だ!勝鬨を上げろ!」
「「えいっ、えいっ、おーーー!」」
「「えいっ、えいっ、おーーー!」」
やっと終わった・・・。
戦の最中に逃げ出した敵兵がいたかもしれないが、それはもうしょうがない。
最後の殲滅戦ならともかく、中盤の激しい斬り合いの中で、逃げ惑う敵兵を追いかけてる余裕なんて無いのだから。
「ミスフィートさん、お疲れ様」
「小烏丸もお疲れ!」
彼女とハイタッチを交わす。
「500対1500。数では負けていたのに、この戦は圧勝と言ってもいいでしょう。でも勇敢な戦士を何人も失いました」
「うむ。それが戦というモノだ」
「死んだ誰もが惜しまれるのですが、ライアンがザンガルに殺られてしまいました」
「そうか、ライアンが・・・」
「帰ったら戦死者を盛大に弔いましょう」
「もちろんだ。こんな思いをしない為にも、早くジャバルグを倒さねばな」
「ですね」
新兵には、1年くらいガッツリ鍛えてから戦を経験させてやりたかった。
しかし残念ながら、尾張を掌握するまではそんな時間を与えてやれないのだ。今は限られた時間の中で兵士を鍛え上げるしかないんだ。
たぶん次の戦いには、ジャバルグ本人が出て来ることだろう。
間違いなく一大決戦となる。
それまでの猶予はきっとほとんど無いだろう。でも勝つ為には。今以上に効率良く兵士を鍛え上げなければならない。
皆で泣きながら戦死者を一ヶ所に集めた。
敵兵からは装備品を全て剥ぎ取り、その死体は全て燃やした。
死体の処理を怠るとゾンビ化する可能性があるようで、疲れていようがこれは絶対にやらなきゃダメらしい。
収穫もあった。
敵将ザンガル、カールの装備品がミスリル製だったのだ。
ゲイルの鎧もミスリルだったろうに、ビームライフルで吹き飛ばしてしまったのは地味にショックだ。
帰ったらすぐにでもミスリルの刀を作らんとな。次の戦いを考えると、今回の恩賞は多人数になるだろうから。
「よし、そろそろいいだろう。パラゾンへ帰還する!」
「「ハッ!」」
・・・・・
パラゾンへ戻ると、大勢の民衆が出迎えてくれた。
「皆の衆、安心してくれ!此度の戦は我々の大勝利だ!敵将ザンガルを始め、敵兵は全て殲滅したぞ!」
「「うおおおおおおぉぉぉーーーー!!!」」
朗報を聞き、辺りは大歓声に包まれる。
「必ずジャバルグ軍を撃破し、尾張を平和な国にすると此処に誓おう!」
「「わあああああああああーーーー!!!」」
そして軍はパラゾンを出て、ルーサイアの街に帰還した。
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もちろんルーサイアも、ミスフィートさんによる勝利報告に沸いた。
歓喜の渦は、しばらくの間収まらなかった。
領主の館に戻ってすぐミスフィートさんの部屋に行き、2人で軽く話し合う。
「勝利の噂を聞き、尾張中から人が集まってきますよ」
「忙しくなりそうだな!」
「とにかくこっちは兵の数が足りない。今回の戦で100名以上失いましたからね。戦死者はやはり新参の兵達ばかりです。これから兵の数は爆発的に増えるでしょうが、次の戦までにどれほど鍛えることが出来るかが最重要です」
オーバーワークさせるワケにもいかんし、本当に難しいぞ。
「ドワーフ達にも、刀を作り続けてもらわないとだな」
「彼らが来てくれなかったら、俺は過労死してますね・・・」
「ハハハッ!ドワーフ達以外にも鍛冶をやらせてはいるのだが、付け焼き刃では雑用仕事しか出来んのだ。こればっかりは地道に育てるしかあるまい」
いや~、本当に危なかった。まあ、手が回らなくなったら普通の剣を使ってもらうしかないんだけど、今や刀は反乱軍のトレードマークみたいなもんだからなあ。
「今回の恩賞候補を決めるのに、カーラにも手伝ってもらいましょうか?この規模の戦になると、右陣の戦況までは把握出来ていないので」
「そのつもりだ。ただ私としては、間違いなく戦功1位2位の小烏丸とカーラをどうするかで悩んでいる」
なるほど。確かに俺とカーラを差し置いて戦功1位とか言われても、絶対変な空気になるよな。とはいえ俺らは剣も服も持っている。
となると・・・。
「自分の名前が出ているので俺から言うのもアレなんですが、今は恩賞で領地を与えるほど落ち着いた状況でもないですし、無難な所で地位でしょうか?」
「地位か・・・。尾張を統一してから皆に与えて行こうと思っていたのだが、確かにココで使うべきかもしれんな。家老でどうだ?」
「いや、それはダメです。恩賞というモノは、下から順々に与えていかないと先の目標が無くなってしまいますからね。とはいえ活躍を考えると下過ぎてもケチに思われますので、侍大将くらいでどうでしょうか?」
「なるほど。部将でも良さそうな気はするのだが、そうしようか」
「ハハッ!次の戦でも活躍して、次はもっと上を目指しますよ!」
「うむ。期待しているぞ!」
自分で自分の地位を決めるのも変な感じだけど、こんなもんじゃない?
とにかくこれで、服と刀を与えた後の大まかな流れが決まったかな。




