60 行き倒れ
―――――三河の国・清光視点―――――
「で、尾張の情勢はどうだった?」
「二つ目の街を奪取したにゃ!あと鉱山も落としたらしいにゃ」
「ほう。いい調子じゃないか」
「あと、ミスフィート軍の兵士が全員、あの赤い流星が持ってた武器を使ってたにゃ」
「全員が刀をだと?なるほど・・・、もう尾張は手にしたも同然だな」
「あの武器って、そんにゃに凄いにゃ?」
「普通の刀ならばそこまでじゃないが、小烏丸が打った刀ならば話は別だ。まあ、小烏丸が味方についた時点でミスフィート軍の勝利は確定したようなもんだ」
「ほえ~~~」
しかし兵士全員が強化武器を所持かよ。
付与魔法使いって、1番ヤバイ存在なんじゃねえのか?
「全員が刀を持っているとなると、下手に手を出したら恐ろしい反撃をくらうことになるだろうな。例えばの話だが、今の三河とミスフィート軍が戦争になった場合、負けはしないと思うが戦力をズタズタにされるのは確実だ。下手すりゃ俺かコテツのどちらかが死ぬ。まあそんな事にならんようにはするが」
「早く同盟を組むにゃ!」
「ハハッ!まあそれは、ミスフィートが尾張を掌握してからだな」
小烏丸が聡明で話の分かる奴なのが安心材料か。
もっとも、性格が気にくわん奴だったら、ダンジョンに連れて行ってないがな。
あの一途で真っ直ぐな男が、俺達を裏切るなんてことはあるまい。
初っ端にデカい貸しを作っといたのは、間違いなく今後に生きるだろう。
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―――――鉱山を手中に収め、街へ帰還中の小烏丸―――――
鉱山に溜め込んであった鉱石や、精錬された鉄などは全て回収した。
それ以外にも使える物は回収しようと思ったが、鉱山は手放すワケじゃないので、食料以外はそのまま放置して街へ帰還することにした。あと証拠隠滅の為、死体は全て鉱山の隅っこに埋めた。
鉱石を全て回収した以上、鉱山に人員を残す必要も無いので全員で帰還だ。
「ルーサイアの街はミスフィート軍が完全に掌握したから、今は平和だぞ」
「あの恐ろしい武器に敵は驚愕したじゃろな!ワシも参加したかったわい!」
「ハハハッ!じゃあ次の戦にでも大暴れしてくれ!」
「コガラスマルさん!前方に女の人が倒れています!」
「なにッ!?」
ダッシュで駆け付けると、金髪の女がうつ伏せに倒れていた。
「おい!大丈夫か!?」
女を抱き起すと、体温を感じたので死んではいないようだ。
見た所、斬られたとかそういう感じではない。
「う、うう・・・」
目を覚ましたようだ。
「え!?ヒ、ヒィィィーーー!いや、た、助けて!」
「待て、落ち着け!君がここに倒れていたから、助け起こしただけだ」
「え?ボクが倒れて?・・・はっ!ララを迎えに行かなきゃ!」
女は立ち上がったが、ふらりとよろめいてしゃがみ込んだ。
「カハッ、ハアッハアッ」
「どこか悪いのか?」
「ハアッ、いえ、もうずっと何も食べていないので、力が・・・」
リュックを開けて、中から箱を取り出す。
「ほら、これでも食え」
さっきみんなで食ったドラゴンステーキだ。俺は重大な弁舌があったので食事どころじゃなく、後でこっそり食おうと取っといたのだ。まさかこんな所で役に立つとはな・・・。
それと、コップに聖水を注いで彼女に渡す。
「で、でも!」
「遠慮するな。人の好意は素直に受け取っておくもんだ」
「あ、ありがとう」
彼女は慌てて肉を食べ出した。
それにしても綺麗な人だな。金髪で透き通るような白い肌、・・・あれ?耳が尖ってないか?彼女はひょっとして、エルフなのでは!?
「ふあああ~、すごく美味しい!こんな美味しいお肉を食べたのは初めて!」
「そいつは良かった。まあドラゴンの肉だからな。そりゃ美味かろう」
「ド、ドラゴン!?え?これ、ドラゴンなの!?」
「そう簡単に食えるような肉じゃないからな。よく味わって食うといい」
それを聞いた彼女はゆっくりと味わいながら肉を食べ終えた。
そして一息ついてからコップの水を飲み干す。
「・・・え?」
彼女は立ち上がり、歩いたりジャンプしたりしている。
「痛くない・・・。さっきまですごく足が痛かったのに!え?なんで!?」
「それは今飲んだ水が聖水だからだよ。貴重な聖水だけど、見ていて辛そうだったからサービスだ」
「聖水??いや、そんな、見ず知らずのボクなんかのために・・・。本当にありがとうございました!」
「ところでさっき、ララを迎えに行くとかなんとか言っていたよな?」
「そうだ!ララを迎えに行かなきゃ!」
「ちょっと待った!あー、ココで少しだけ待っていてくれ」
「え?あ、はい」
鉱山組をぞろぞろ引き連れて行くワケにもいかんから、少しの間この場所で待っててもらおう。
「おーい!ドワンゴさん!野暮用が出来てしまったんで、少しだけココで待っててくれないか?」
「しょうがないのう。行って来るといい」
「ありがとう。出来るだけ早く戻る!」
「さあ、急いでララの元へ行こう。俺が護衛してやる」
「え、あ、いいのですか?」
「さあ急いで!」
「は、はい!!」
焦る彼女を追いかけて行くと、10分ほど走った先の木の上に、小さなエルフの幼女がいた。
「いた!ララーーーー!」
「うわーーーーん!!おねえちゃーーーーーん!!」
「ララ、放っといてごめんね」
良かった。なんとか無事だったようだ。
「ララ、といったな?お腹は空いてないか?」
「すいたー」
リュックを開けて、中から箱を取り出す。
「ほら、こいつを食べるといい」
さっきみんなで食ったカニの足だ。俺は重大な弁舌があったので(以下略)
ナイフで食べやすいように切ってから、ララに手渡した。
「うわぁ~~~~!おいしい!!」
「良かったね!ララ」
うんうん。カニを美味しそうに食べる幼女は、見ていてほっこりしますなあ。
喉も乾いてるだろうと、コップに聖水を注いでララに渡した。
ちょっと聖水の無駄遣いが過ぎるような気がしないでもないが、この場合しょうがないやん?可愛らしいエルフの幼女を放ってなどおけん!
幼女が食べ終わるのを見計らって、女性に話しかけた。
「で、一体何があった?」




