56 ドワーフの説得
最初はデュラハンの戦斧もミノタウロスの斧と同じ性能だったんだけども、さっきまでずっと暇を持て余していたから、その時間を使って強化を施した。
ぶっちゃけミノタウロスの斧の方でも、驚異的な強さなのは間違いない。
「ただ武器が最強でも、今のあなた方は防御力が皆無なので、その着ている服を軽く強化しよう。ああ、服は脱がなくても大丈夫だ」
ドワーフ達の服に、斬撃耐性+、衝撃耐性+、魔法耐性+を付与していく。
これで、革の鎧程度の防御力にはなっただろう。
「一つ提案がある」
「提案じゃと?」
「俺は現在ミスフィート軍に所属している。ジャバルグ軍を倒す為に立ち上がった勇敢な戦士達だ。少し前にルーサイアの街を解放し、皆は今頃パラゾンの街を攻めている最中だ。俺だけが別行動で、鉱山の解放をしに来た」
「噂の反乱軍か!?」
「正直な感想を聞かせてくれ。反乱軍はジャバルグ軍に勝てると思うか?」
「ウーム、厳しいじゃろなあ。一国を掌握してる故に奴らは数が多い」
「奴らと戦える屈強な戦士が大量に集まらないと戦にならんじゃろ」
「無理だろう」
「だが反乱軍の全員が、その戦斧並みの武器を持っていたならばどうだ?」
「・・・・・・勝てる」
「まさか、全員がこの斧を!?」
「正確には斧ではなく、刀という武器だ」
天国ではなく、付与済みの普通の鉄の刀を出して見せる。
「ほう。やけに細い剣だが凄いなこれは・・・」
「なんと見事な技術じゃ。見た目以上に恐ろしい武器じゃぞ」
「この剣を打ったのはお主なのか!?」
「いかにもこれは俺が打った武器だ。俺がいた国の主流の武器で『刀』という。斬れ味だけを追求し、辿り着いた答えがその形だ。刀の利点はその斬れ味、そして軽さだな。弱点は見ての通り、細身ゆえに折れやすいということ。しかし弱点克服の為に衝撃耐性を付与したので、そう簡単に折れることはない」
「なるほど。確かにこの重さなら細身の人間でも扱えよう。しかし見れば見るほど、本当に素晴らしい武器じゃな。これを仲間が皆所持しておるのか」
「然り。そしてミスフィート軍に、その斧を持ったドワーフ達が加わったらどうなる?」
「間違いなく勝てるじゃろう。・・・すなわち軍への誘いという事かの?」
今だ!唸れ、俺の弁舌!
「あなた方もミスフィート軍に入らないか?報酬は、今皆が手にしている戦斧でどうだろう?」
「こ、この斧が貰えるじゃと!?」
「いいのか?ワシの見たところ、この斧は一国を買えるほどの値打ち物じゃぞ?」
「失礼を承知でぶっちゃけたことを言うけど、ずっとココでこき使われていたあなた方には、安住の地など無いと思われる。だがミスフィート軍へ来れば、美味い食事を腹いっぱい食えるぞ!」
メシだけじゃ弱いか?ならば将来性をアピールだ!
「俺が用意した強力な武器によって、ミスフィート軍はこれから物凄い勢いで大きくなるだろう。しかし今はまだ羽ばたく前の雛の段階だ。新興勢力のメリットは、働き次第で出世も思いのままだということ。おそらく、ドワーフ達を呼び寄せて一つの街を作ることも可能だろう」
「な、なんと!?そのような夢物語が・・・」
「各国に散らばった同胞を、呼び寄せられるようになるのか!?」
「そのようなこと、とても信じられん」
うーむ・・・、もう一押しって所か。
「それと、尾張を統一して国が落ち着けば酒も呑み放題だ」
話をしながら人数分のコップを用意する。
「さ、酒じゃと!?」
「久しく呑んでないのう・・・」
そしてリュックから清酒を2本取り出すと、みんなの目の色が変わった。
トクトクトクトク
「さ、酒だ!!」
「うおおおおおお!酒の匂いじゃ!」
「さあ同志よ、一杯呑んでくれ。運命によって導かれた我らの出会いに、乾杯!」
乾杯!と乗って欲しかったんだが、飢えていた彼らは我慢出来ずにグビグビと酒を呑み始めた
「っぷはあああああ!こりゃあ美味い!!」
「うおおおおおお!酒だ!!いつ以来だ・・・」
「うめえぞ!!」
「はぁ~、生きてて良かったわい・・・」
「なんて美味い酒なんじゃ!」
ビンゴだ!やはりドワーフは酒好きで間違いねえ!
しかし戦闘前に酔っぱらわれても困るから、清酒2本までにしておこう。
「決めたぞ!ワシは反乱軍に入る!」
「ワシもじゃ!」
「ここを出た所で、行くあてもないしの」
「じゃの。戦で働いてドワーフの街を作ろうじゃないか!」
キターーーーーー!やはり酒が重要アイテムだったか!
本当はココで美味い料理も食わせたい所だが、匂いで敵にバレる可能性があるから今はダメだ。
「みんな軍に入ってくれると考えて良いか?」
「ウム。ワシら11人は今から反乱軍の戦士じゃ!」
「良かった。じゃあこれからよろしく頼む!」
ドワンゴと固い握手を交わす。
「ジャバルグ軍へ反旗を翻すのは明日決行として、万全を期す為にもう一つやっておきたいことがある」
「なんじゃ?」
「みんな日々の過酷な仕事で疲れが溜まっているだろう?」
「なあに、疲れなんぞ酒で吹き飛んだわい!」
「ワッハッハッハッハ!」
みんなのコップは余裕で空っぽだったので、聖水を入れていく。
「今コップに注いだのは聖水だ。飲めば怪我は治るし病気も治る。そして今まで蓄積されていた疲れまでもが全て消え去る奇跡の水だ!まあ飲んでみてくれ」
「聖水じゃと?」
「よくわからんが、これを飲めばいいんじゃな?」
そして全員が聖水を一気に飲み干した。ほんとドワーフって豪快だなー。
「・・・なっ!?本当に体の重みが消えたぞ!!」
「何なんじゃこれは!力が湧いてくるようじゃ!」
「おい、こ、腰の痛みが消えたぞ!?」
「長年患ってた足の痛みが・・・、完全に消え失せた!!」
「凄すぎじゃろ!水を一杯飲んだだけでこんな・・・」
よしッ!これで反乱の準備は完璧に整った。決行は明日だ!




